残り時間0分00秒
3人の足音と吐息は街が近づくに連れて激しくなった。
「はぁ、はぁ、も、もうすぐだ」
タクトは街に入り、中央に存在する黒い時空の歪みのようなモノを確認して、言葉を発した。
「じ、時間……は?」
疲れ、掠れた声で桜は訊く。
「え、えっと。残り21秒だわ」
満緒は時間を目の隅で確認して言う。
「くっそ、間に合え!」
タクトは祈るように叫んだ。
残り時間はその間も刻一刻と減っていく。
最後の力を振り絞るかのようにして駆ける。
3人の中で1番に転移ゲートの前にたどり着いたタクトは時間を確認する。
「残り13秒! 早く!!」
少し後ろを走っている桜と満緒に叫ぶ。
はぁはぁ、と息を吐く桜は満緒より一足先にゲートの前に着いた。
「桜、先は入れ。おれは満緒も待つから」
「えっ……」
「大丈夫だ。おれは絶対死なないから」
そう言っても心配そうにする桜の背中を押し、無理矢理にゲートの中に入れた。
そうしている内に満緒も到着する。
「さぁ、入れ」
「ふっ。優しいのね」
満緒は横目でそう言い、ゲートに入った。
タクトはそれを確認してからゲートに入ろうとした刹那、ピピっと時間終了の合図を知らせる音が多機能性レベリング測定器から鳴り響いた。
そして有無言わさない速さで天から巨大な隕石のような物が降り注いできた。
驚きながら、タクトもゲートの中に飛び入った。
ーー数分前のマンダリオンーー
豪華な景観の中に、人は誰1人といない。
「こんなにも人がいないと不気味だね」
金髪の男は少し笑みを浮かべながら呟く。
「さ~て、転移ゲートはどこかな~?」
辺りを見渡しながら男は独り言をいう。
「おっ、あった!」
ちょうど中央の高級ホテルの前に禍々しく歪む黒いものが渦巻いていた。
男はそっとそこに近づき、それに入らないようにしながら少しだけ触れる。
「消失魔術 媒体転送・始」
瞬間、そのゲートは跡形もなく消え去り、男の手に黒い丸いものが現れた。
「永久転送結晶!」
設定された同じ場所に永久的に転移出来るアイテムを用い、男はマンダリオンから姿を消した。
「ただいま」
とある街のはずれにある家の前に転移して男は家の中に入り、そう言った。
それから指を鳴らし「媒体転送・終」と、唱えた。
刹那、黒く禍々しい時空の歪みのような転移ゲートが現れた。
「時間が無い。皆、入れ」
男がそう言うや、家の中にいた総勢20人近くの人がその中に入っていった。