VS 親衛隊 Ⅴ
桜が倒すべきだった残り4人に、ノルマを達成したエドワードが対峙していた。
スポーツ刈りのスポーツ少年を思わせる少年に、くのいちの格好をした少女。
左眼を眼帯で隠し、唇にピアスをしている金髪で短髪の男。
そして、両の目が前髪で隠れた不気味オーラ全開の男。
それぞれが、それぞれに巧みな攻撃をしてくる。
『どうする…』
エドワードは、この状況に心の中で呟いた。
「ここは天才と謳われる、俺様に任せろやっ!」
まぁまぁ、と言わんばかりの手振りをし、金髪の男が高らかに宣言した。
「勝手にしろ」
不気味オーラ全開の男が、気だるそうに答えた。
「じゃ、下がってろ」
と、言うや否や少し離れたところに倒れている桜の元に、高速で移動した。
手には、小学校低学年の子どもほどの大きさのハンマーを持っているのにだ。
そして、桜の体を挟むように立ち、ハンマーを振り上げた。
『くっそ!! 折角、桜に被害が出ないように、コイツらを桜から離したのにっ!
これじゃ、全く持って無意味じゃねぇーか』
心の中で喚いた。
そんな時、男は、ニヤッとしてエドワードに告げた。
「今からコイツの脳天叩き潰してやるよ」
その下では、桜がビクビクと震えている。
『どうすれば…。どうすればいい……』
考えている間にも男は、ハンマーをさらに高く持ち上げる。
『こうなったら、あれに賭けるしか』
心で決意し、白銀の剣を強く握り、地面に強く突き刺した。
そして、賭けとなるその言葉を発した。
「影響技 氷床 道」
刺さった剣から氷が生える。
そして、たちまち桜を襲おうとしている男までの一本の道が完成した。
男は驚きを隠せないままエドワードを見た。
エドワードは、そんな視線を無視して、刺さった剣を抜き、氷の道の上に乗った。
それは、アイススケートをするかのように進み、男との距離を縮めた。
男は呆然としている。
そして、残りの3人からは白い目で見られている。
残り距離が20メートルをきった頃、男は慌てて、構えもままならないままハンマーを振りおろした。
刹那、時を止める魔法でも使ったようにエドワードは、ピタリとも動かなくてなった。
ドンっ!!
エドワードの創り出した氷の道の一部が粉砕する。
砂ぼこりと一緒に、氷の欠片が真冬の太陽の光を反射し、キラキラと光っている。
その中に、赤い何かが混ざっているようなものもあった。
エドワードは、悲しみが込み上げてきて、瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
その時だった。
「げほっ……。……ぅっ…」
微かに、でも確かに消え入りそうな声が聞こえた。
「……桜っ!!」
エドワードは、焦るように、何かにすがるように、その名を轟かせた。
そして、氷の道の上で立ちすくんでいたエドワードは、スピードスケートでもするように残りの20メートルを疾走した。
一瞬。
桜の元にたどり着くまでの時間はそれだった。
倒れた桜かは、消え入りそうな吐息が漏れている。
「大丈夫か!?」
エドワードは叫ぶように訊いた。
「……」
しかし、返事は無い。
「おいっ!!」
呼びかけながら、肩を揺らそうと桜の肩に手を載せた。
ぴちゃっと、何か液体状のものがエドワードの手を濡らした。
『何だ…。手が濡れたぞ?』
エドワードは、不思議に思い濡れたと感じる手を自分の顔の前まで持ってきた。
まだ収まらない砂ぼこりの中、エドワードは息を呑んだ。
その液体を正体が、水のように透明なものでなく、紅色で、紛れもなく桜の肩から流れ出る"血"だったのだ。