マンダリオン
マルスタタウン。
ロキたちが本拠地を築いている街である。
アメリカを思わせる街並みがあり、ロキ・アヌビスはホワイトハウスを思わせる豪邸にいた。
アヌビスの消失魔術により記憶から完全消去された消失魔術である"不死の焔"を蘇らせたロキはそこを出て、遂に行動を開始した。
南国を思わせるハイカラな花があちらこちらに咲き、それに似合った少し床が浮いた高床式の家が並びオーシャンビューが楽しめる街"マンダリオン"が視界の端に入った。
タクトたちは喋り疲れ喉に癒しを求め少し早足になりマンダリオンに向かった。
「おぉ、今度は壊れてねぇぞ」
タクトは街の外形があることに喜びの声が漏れる。
ローバルタウンのことで少々気になっていた街崩壊が無いことに安心した。
ーーWELCOME!!ーー
そう書かれた門のようなものが街の入口にあり今が戦争中でなければ遊んでしまいそうな娯楽施設の塊がそこにあった。
カジノ、海水浴場、海が近いことからそれを活かした水族園。
タクトはその衝動を抑えながら3人が一休みできる宿泊施設を探した。
手持ち金はそこそこあるがこれからのことも考え高級ホテルなどに泊まることは避けたい、と考えるタクトをよそに桜は目の色を変えて高級ホテルが連なるマンダリオン第三地区を食い入るように眺めていた。
「桜、あそこに泊まりたいのか?」
「え…、あ、えっとー……うん」
少し濁しながら答える様子に短くため息をついた。
「しゃーないな」
手持ち金を再度確認してから第三地区を目指して歩きだした。
「一部屋、3名様ですね?」
「はい」
受付の男の声にやたら気分を重くするタクト。
「えっと、合計4万5000金ですね」
「よ、4万!?」
「はい、お一人様1万5000金となっておりますので」
今まで泊まってきた宿泊施設の中でも最高級に高い金額を泣く泣く払ったタクトを横に桜はチロっと舌を出し少し悪びれた様子を見せた。
案内された部屋に入るや否や、巨大なベッドが3つ目に入った。
疲れに疲れが溜まっていたタクトはそのままベッドの上にダイブした。
「おぉ……」
思わず声を漏らした。
ふかふかというのはもちろん、乗るだけですべてを包み込むような抱擁感に襲われ、マクラは程よい感じの反発力があり寝ることにおいてはほぼ完璧な感じだ。
「流石、高いだけあるわ」
タクトはその心地良さにつぶやき丸一日半ほぼ不眠だった疲れが遅いそのまま深い眠りに落ちた。
桜とエドワードも同じく深い眠りに落ちた。
1部の悪魔軍が神界へ行くためのゲートがある"ホットストリート"に辿りついた。
ゲートに入れば誰でも神界へ行けることになっているがもちろんのことながら見張りはいる。
今は状況が状況のため見張りの量も増えている。
そこへ悪魔の一部隊が辿りつき、戦闘が始まった。
後に"ミッドナイトウォー"と呼ばれたその戦いが幕を開けた。
「氏ら悪魔第2部隊と第11部隊連合軍でアール!」
まるでパンダのような模様をしているが、大きな違いは色だ。パンダが白黒であるのに対しこの悪魔は青黒なのだ。
体はこれまたパンダの体型をしている。
「き、きさまら悪魔がこのような場所に来るでない! 帰れ!」
声を震わせながら槍を持った見張りの1人が叫んだ。
刹那、その体型からは考えられない程速さでその男に近づき頭を握った。
ミシミシと頭が軋む音がする。
「このまま頭割るぞ?」
とてつもない握力に殺気のある声が同じ悪魔である鬼たちも背筋を凍らせた。
「ひぇ…っ……」
恐怖で言葉をしっかり発せない男がさらに力を強める。
「そろそろやめておけ、アガレプト」
3つの犬の顔をもつ悪魔に制止され渋々握っていた頭を離した。
「イイトコだったのにな」
「これ以上は死体が酷くなる」
「ケルベロスさん、それが悪魔の言う事っすか」
立場上ケルベロスのが上なのかアガレプトはケルベロスの言う事には従っている。
「でも、始めていいのでしょ?」
「しょうがないね」
その一言が引き金となりゲートの見張りと悪魔連合軍が全面衝突した。