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誰も知らない神の前章  作者: 駿河留守
魔女の産声
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師官学校②

「今日は魔術を絡めた戦闘実習を行います。聞いていると思いますが、今起こっている世界大戦の戦火が我が国にも迫っています。そこで少しでもこの国を防衛するためにあなたたちにも魔術を屈指して国を守るための―――」

 長身で中肉の担任の野宮先生が説明を30人程度のクラスメイトが座って聞いている。私たち4人はいつも固まって動いているのでこういう時でもいっしょにいる。

 今いるのは学校がもっている敷地内の森だ。少し歩いていくと日本海を眺めることが出来る。砂浜があって部外者の入ることのない学校の敷地なのでゴミが一切なくてきれいな海だ。そこで夏になれば寮生活を送る学生たちの海水浴場となる。そんな森で今日は野宮先生が言う魔術戦闘実習だ。

「これだとマジで戦争があたしらのところまで来るっぽいじゃない」

「まぁ、お隣の国まで来ているんで緊張感が先に海を渡ってきてもおかしくないですよ」

 でも、なんか対応が早いというか急かさされているというか、なんか違和感を感じる。

「皆もカリキュラムで学んでいると思うが魔術師には使える属性魔術に限りがある。それを考えたチームを構成してもらいたい。すでに通知を行っているだろう」

 その通知は数日前に寮に送られてきた。構成人数は7~8人となっている。いっしょになるメンバーの名前と使える属性魔術とランクが明記された名簿をもらっている。

「確かあたしとアキは同じチームだったわよね」

「はい」

 私のメインの属性魔術は雷で他に使える属性魔術は火。これは最近ようやくうまくコントロールできるようになった。それに対して恵美さんは水属性をメインとした魔術師だ。これで私がもつ属性で唯一苦手とする土属性にも対応できるというわけだ。

 他にもこの人はこの属性魔術が得でそれと対になる魔術といっしょにするとか、コンビネーションがいいこのふたりは同じチームにするとかいろいろ考慮されている。その結果、

「翔平と脩也は別のチームよね」

「そうだな。まぁ、殺し合いをするわけじゃねーから大丈夫じゃね?」

「それもそうだ。それに今日はチーム内での魔術の連携実習であって魔術でお互いを攻撃する実習ではないと先生が言っていただろ。何を聞いていたんだ」

「細かい奴だな」

「事故につながる」

 それ以上言い返せなくなって仏頂面になる翔平さんを私と恵美さんがくすくすと笑う。

 なんか戦争がすぐそこまで来ているって言うのに平和だな~って思う。

 野宮先生の説明が終わってそれぞれ指定された場所まで移動する。

「よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」

 チームのリーダーの長身の男の子が返事をする。同じチームメンバーにとりあえず挨拶をする。全員が寮で生活を送っているので顔見知りだ。だから、全員がそれぞれの持っている能力の限界値を知っている。

「美嶋さんといっしょか。この実習はさぼってても何も言われそうにないな~」

 同じチームの小柄な男の子のひとりがそんなことをつぶやく。

「聞こえてるぞ~」

 野宮先生に聞かれて場が和む。

 この当時の私は属性魔術をあまり得意とは言い難かった。特に覚えたばかりの火属性魔術は扱いに慣れていなくてこういう場では使うのは難しい。逆に私の強みは学科で学んだ魔術の知識と使えるバリエーション豊富な無属性魔術の量だ。その評価は周りからも高く信頼されている。

「そういえば、アキってこの前野宮に新しい無属性魔術貰ってなかった?」

「ああ、光属性の反鏡魔術ですね」

「なんだ?それ?」

 ひとりの男の子が尋ねる。するとリーダーの男の子が私の代わりに説明してくれる。

「無属性光属性の上級魔術のひとつ。確か結界の類だったよな」

「はい。光属性は攻撃力を持たない物なんですけど、この反鏡魔術は攻撃を防ぎつつ攻撃を跳ね返す鏡のような結界のことです」

 ただ、陣のレベルが高く魔力の消費が激しいせいか利便性からしてまだまだ課題が多く残る試作魔術だ。

「なんでそんなに知ってんの?」

「この間、カリキュラムでチラッと出てきたわよ」

「え?」

 恵美さんの指摘にキョトンとして再び笑いが起きる。

「まぁ、午前中は属性魔術の特性を生かした連携実習だ。無属性魔術は午後になってからだ。その時はその反鏡魔術を見せてほしいな」

「はい。大丈夫ですよ」

 笑顔で答える。

「じゃあ、始めようか」

 リーダーが30センチ程度のスティックを取り出す。小さい男の子は手のひらサイズの十字架を取り出す。恵美ちゃんはフェンシングに使う剣。そして、私は杖を収納魔術を使って取り出す。

「第3チーム!連携属性魔術実習行きます!」

 その掛け声と共にみんなそれぞれ魔術を発動する。

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