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霊は、ここに。

作者: 辰巳 結愛

ホラー初挑戦です。

 夏休み終了直前の一週間。

 俺たちは友人の……正確にはその家族の……持つ別荘に、「合宿」と言う名目で、仲の良い友人数名で遊びにきていた。


「いやあ、海、近いなー」

「流石にプライベートビーチじゃないんだけどな」

「そこまで金持ちだったら、正直ひく」


 昼前について、バルコニーから見える海に一通り感動して。

 荷物の整理も一通り終えて。


「じゃ、この一週間の食料買出しに行くぞー」


 とりあえず、自炊用食料の買出しに、俺達は出かけた。

 まあ、買出しのメインはアルコールなんだが……




「あなたは、霊を信じますか?」


 危なっかしいながらも一応晩飯の仕度が終わり。

 一人がつけたTVから、いきなりそんな質問が発せられた。


「なに? 心霊特集?」

「うわー、そろそろ秋だって言うのに?」

「季節外れもいいとこだよなー」


 番組の問いとは、まったく無関係な回答を返し、友人たちは食事をとり始めた。


 見えないものは、信じない。

 それが人間てもんだろ?


 そう思いながら、俺も自分の席に着く。


「あなたは、霊を救えますか?」


「うわ何、次の質問?」

「信じてねえもんは、救えねえよなあ」


 救えるか、だと?

 ……笑わせてくれる。

 霊にとって何が救いなのかは、その霊にしかわからない事なのに。


「つまんねーし……チャンネル変えちまおうぜ」


 友人のうちの一人が言って、怪しげな占い師風の女は俺たちの目の前から消えた。



 夜も更けはじめた頃が、酒盛り開始。

 誰が決めたわけでもないが、暗黙の了解と言うやつだ。

 早速昼間買ってきたビールやらチュウハイやらを空けていく。


 どん。


 何かが、扉にぶつかるような音がした。ぶつかる、と言うよりは叩く、かもしれない。

 ……苦情かな……?

 こいつら、うるさくしてるし。


 どんどんどん。どんどん!


 扉を叩く音が激しくなる。

 なのに呑んでる友人たちはその音を無視して呑み続けている。


 ドンドン! ガンガンガン!


 音に、凶暴性が増した。

 だけどやっぱり友人たちはそれを無視。

 まるで聞こえていないかのように。


 ……ああ、そうか。

 本当に彼らには聞こえてないんだ。

 だったら、相手にしない方がいい。

 聞こえているのは俺だけだし。


 無視を続けていると、いつしか音が鳴り止んだ。

 その代わり、バルコニーの外に、見知らぬ男が立っていた。


 サーファーだと思う。

 サーフボードを持っている。

 でも、顔の半分が潰れている。

 生きている人間のはずが、ない。


 彼はうらやましそうに中を見ている。

 友人たちは気づく様子も無く、次々とアルコールを空けていく。


 彼に気づいているのは、俺だけだ。


「……入れてなんて、やらねぇよ」


 窓越しに言ってやると、男は渋々といった風に海へと帰っていった。


「ん? 誰か何か言ったか?」

「いや。何も」

「酔いのせいで幻聴でも聞こえたんじゃねーのぉ?」

「うわ、手厳しい」


 俺が言った事は、どうやら気づかれずにすみそうだ。




「呆気ない一週間だったなー」

「早かったと言え、早かったと」


 帰り支度をしている彼らは知らない。

 この一週間に起こった、霊障ってやつを。

 あのサーファー以外にも、かなりたくさんの人間がこの海で死んでいたらしい。

 最終夜にはベランダにぎっしり詰まってたし。

 でも、俺が入れてやらなかった。

 楽しい合宿を、邪魔されたくなかったから。


「……アイツも、来れれば良かったのにな」

「…………ああ、そうだな」


 ……おいおいおい。しんみりするなよ。

 大体さ、お前ら鈍すぎるんだよ。


「この合宿、一番楽しみにしてたのにな」

「前日に事故って死んじまうなんてな」


 少しも霊感が無いんだもんな。

 だから、俺がここにいるって気づけない。


 バイクを運転してる最中に事故って、死亡。

 それが俺の死に様。

 今ここにいる「俺」は、いわば霊だ。


 でもな、お前らが合宿やってくれたおかげで、俺、結構救われたぜ?

 それこそ、「霊を救えた」わけだ。

 だからさ……


「最後まで、楽しんでくれよ?」


 そういうと、俺の意識はゆっくりと、朧のように霞んで消えた……

 ホラー初挑戦。そして惨敗。

 少しだけですが作者(とその友人)の実体験も混じっています。

 尻切れトンボですね。そして何より怖くない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。読後が良いなと思いました。ホラー作品ですが、人間味があり柔らかい表現のためか読みやすかったです。  一緒にいる友人達に感謝しながら一人で成仏していくのは珍しい視点だと思いました。…
[一言] 最後のドンデン返しも、ストーリー性もいい話でよかったです。ホラーではないかな…?
[一言] 全体的に面白かったと思いますよ〜。 特に、文中に出て来る「俺」はただ単に、霊感の強い人だと思ってたんですけど・・・騙されました(苦笑)
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