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そして、9月の下旬になった。そろそろ名古屋に帰らなければならない日が近づいてきた。毎日のように万博に行くのも終わりが近づいてきた。いろんな所に巡ったけれど、巡れていない場所もある。なかなか予約が取れない場所も多少ある。だけど、行きたい場所は抑える事ができて、満足している。
武夫もまた満足している。ゴールデンウィークも含めて、いろんなところに巡れたし、行きたかった予約パビリオンに行く事も出来た。本当に素晴らしい夏休みだったな。それに、玲子に会えて本当に嬉しかった。大阪・関西万博は、世界が1つになれる場所だが、それだけではなく、こんな縁も生まれてしまうとは。本当に素晴らしいイベントだな。
だが、今日はちょっと武夫の様子がおかしい。少し寂しそうだ。どうしたんだろう。玲子は疑問に思った。
「どないしたん?」
「今日で東京に帰らなければならないんだ」
それを聞いて、玲子は驚いた。そういえば、自分もそろそろ名古屋に帰らなければならない。それは、大阪・関西万博に行く日々の終わりを意味する。楽しかったけれど、そろそろ終わりだな。悔いのないように巡っていこう。
「ほんま?」
「残念だけど、大学があるからね」
そういえば自分もそうだ。大阪・関西万博での思い出を胸に、また大学生活を頑張っていかなければならない。いろいろ大変だけど、将来のために頑張っていかないと。
「そうなんだ。残念だね」
「うん」
ふと、武夫は思った。今日は最後の思い出に、またいろんな場所を巡ろうかな? そして、最高の思い出を作ろう。
「最後の思い出に、また一緒に巡らないか?」
「うん」
そして、2人はまた様々なパビリオンを巡り始めた。どれもこれもとても素晴らしいな。だけど、それ以上に一緒にいられるのが最高のパビリオンのように見える。この出会いこそが、万博の醍醐味なんだろうか?
次に行ったのが、ドイツ館だ。2人とも、行列が長くて、制限がかけられていて、なかなか行けなかった場所だ。ようやく入る事ができて、本当によかった。中に入ると、丸っこくてかわいいキャラクターを手渡された。『サーキュラーちゃん』というらしい。2人とも一目惚れをした。ある場所に頭を近づけると、なんとサーキュラーちゃんがしゃべるのだ。2人とも驚いた。まさか喋るとは思っていなかった。それだけで本当に感動だ。こんな驚きがあるとは。
「これ素晴らしいね」
「うん」
出てきた時には、すっかりサーキュラーちゃんのとりこになった。まさかこのゆるキャラが人気投票で第1位になるとは、2人は予想できなかった。
2人は次に、大屋根リングを1周しようと思った。いろいろあったけれど、2人でいるのは今日で終わりだ。これからはそれぞれの道を歩いていく。寂しいけれど、自分たちが成長するためには大切な事だ。だけど、この友情はこれで終わりにしたくないな。
「大屋根リングを1周しよう!」
「うん!」
2人は大屋根リングを1周して、大阪・関西万博を見渡した。様々な人々が歩いている。彼らの中には、外国人観光客もいる。そしてその中には、様々な国や企業のパビリオンがある。そう考えると、この大屋根リングが大きな地球のように見えてくる。
「いい眺めだね」
「ああ」
2人はそれらに見とれている。とてもいい風景だな。だけど、あと1か月足らずでこれは終わってしまう。そう思うと、寂しくなるな。だけど、この思い出はいつまでも残る。大屋根リングは残されると言われている。そして、いくつかのパビリオンの一部はどこかに移設されるそうだ。そう考えると、この万博の思い出はいつまでも続いていくように見える。
「この万博で、君に会えてよかったよ」
「私も。まさかあなたと会えるなんて」
玲子は嬉しそうだ。まさか大阪・関西万博でこんなめぐり逢いがあるとは。
「嬉しかった?」
「うん」
武夫は玲子の手を握りしめた。どうしたんだろう。玲子は驚いた。
「万博って、世界が1つになれる場所だけど、僕たちとも1つになれた気がする」
「本当だね」
確かにそうだ。万博って、世界が1つになれる場所だ。ここには国境なんてない。そして、みんなが思いやりを持つ世界になれば、この世界は平和になれるんじゃないかと思った。
「来てよかったと思ってるよ」
「うん!」
武夫は寂しそうだ。この風景を見るのは、今日で終わりだ。だけど、この恋は続いていくように見える。
「もっとやってほしかったと思うけど、それにも終わりがあるんだよな」
「だけど、その思い出はいつまでも続いていくと思うよ」
「そうだね」
2人とも嬉しそうだ。2人は明日から離ればなれだけど、これからも遠距離恋愛を続けていこう。そして、いつの日か一緒になろう。できれば、結婚できたらいいな。
「そして、僕たちの友情も、これからも続くよ」
「いい事言うじゃん!」
玲子は笑顔だ。いろいろあったけれど、これからもいい関係でいよう。
「東京に行っちゃうけど、また会おうね」
「もちろん!」
そして、一緒に大阪・関西万博を巡る日々は終わった。だけど、2人の絆は、友情は、恋はこれからも続いていくだろう。この地球の続きのように。




