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2日目

 

 ⭐︎


 翌日。王子殿下をご案内2日目。


 本日はアーサー様と海に行く予定。友達のルカを紹介できるわ。


「……ねぇ?ナンナ。今日は海に行くのよ?ヒラヒラが多くない?それに後ろボタンで手が届かないわ」


 今日のドレスはパンツスタイルだ。一見ドレスに見えるが、風が吹いても平気なように中はパンツスタイルにレースがふんだんについている。


「はい。フローレンス様は海を見ると発作的にドレスを脱ぎ捨てるのであえて手の届かない場所にボタンがあるドレスにいたしました」


「いくらなんでもアーサー様がいらっしゃるのに脱がないわよ」


「「まぁ、名前呼びですか!?」」


 アンナとナンナがハモる。


「そ、そんなに驚くこと? まぁ、確かに昨日1日でかなり仲良くはなったけど」


「「こうしてはいられないわ」」


 それからまた小一時間色々いじられ、海に足ぐらいは入れるだろうからとペディキュアまでされた。靴はサンダルタイプで足の指先が見える。ピンクの爪がかわいい。


 ホールに着くと、誰もいなかった。まだ時間はある。本でも読んでいましょう。


「お待たせしました。ごめんね、今日は遅くなっちゃった」

「アーサー様、おはようございます。遅くありません、時間通りですよ?」

「うん。でも待たせちゃったから。ふふ。さぁ、行こう」


 アーサー様が私の手を握り歩き出す。


「うふふ。ええ、行きましょう」


 今日は少しだけ馬車に乗る。

 馬車の中ではアーサー様と隣同士で座る。少しドキドキするわ。


「アーサー様、今日は友人に合わせたいのです」

「友人ですか? 海に?」

「えぇ、ルカっていうんです」

「! ええ? まさか。ルカっていうことはイルカですか?」

「ん〜そんなところかしら? わかりやすい名前ですよね。うふふ」

「楽しみだなー。イルカってとても賢いと聞いたことがあります」

「はい。合図をするとすぐに来てくれるんですよ」


 アーサー様ったら目がキラキラしてる。男の子ってこういうの好きよね。


「到着いたしました。どうぞお足元にお気をつけてお降りください」

 執事のジョセフが扉を開けてくれる。アーサー様が先に降り、私の手を引いてくれた。


 御付きの人たちは全員他の馬車でついて来ている。

 浜辺を歩きながらアーサー様に説明する。

「アーサー様、海は初めてですか?」

「はい、大きいですね。素晴らしい眺めだ、それに風が気持ちいい」


 でしょ〜?海って気持ちいいわよね。見ているだけでも気分が上がるわ!


「そこの桟橋でルカを呼ぶわ。いつもは海の中だから、来てくれればいいんだけど」


 それに、他の人に紹介するのも初めて。


 私はポケットに入れておいた2枚貝を取り出す。ホタテ貝を少し丸くした感じの、溝がいっぱい付いている貝だ。

「この貝の背中を擦り合わせると」

 ギギギギギ……と、カエルのようななんとも言えない音がする。

「これを水の中でやると、ルカが来てくれるのよ?」

「へぇ〜。貝? こんな音がするんだね」

「やってみるわね。アーサー様はここにいて?もしルカが来たら水で濡れちゃうかもしれないから、来たら呼ぶわね?」

 後ろのナンナとアンナは苦虫を噛み潰したような顔をした。……濡れるとは言ってないわ、かもしれないって言っただけなのに。


 アーサー様を砂浜に残し、浜辺から続く桟橋の先に行くと、両手を水に入れて貝を擦り合わせた。


 ギギギギギ……海中を響く音。


 すると……。


 水面からヌッと現れる、長さ2mほどある角。


 それを見て、とっさに構える兵士たち。


「え? ちょ! 待って! ルカよ? 戦う必要は無いわ!」


「……ルカ? 魔獣では無く?」「いや、角があるぞ?」ざわめく兵士たち。


「もう! 魔獣じゃないわ! イッカクよ? 大人しいわ!」


 ただ、異世界なので前ビレの筋肉が発達していて、今も桟橋に両前ビレをひっかけ顔を出している。顔は可愛いけど、確かに角は危険に見えるわね。


「久しぶりねルカ。いい子にしてた?」

「キュキュイ!」

 可愛いい! 頭がツルツルして気持ちいいわ。

「僕も触って大丈夫?」

 アーサー様が私の後ろにそ〜と近づき聞いてくる。

「えぇ、もちろんよ? 大人しいの。ね?ルカ」

 場所を変わり、アーサー様がルカに触れる。

「わぁ、え?ツルツルしているね。目が優しいんだね」

「キュキュイ! キュッ!」

「初めまして、アーサーと言います。ルカ、よろしくね」

「本当はイルカじゃないけど、出会った時にイッカクってすぐ出なくて……イルカ?って言ったら覚えちゃったの……でもでも、性格はイルカみたいでしょ?お利口だし」

「あはは、フローレンス様。みんな角に驚いただけだよ?勝手にイルカって思ったのはこちらだし。大丈夫だよ?」


 ホッ。よかった〜剣を抜かれた時は焦ったけど、もう大丈夫ね。


 周りを見渡すとみんな初めてみるルカの姿に興味津々な雰囲気。


「すごいね、フローレンス様。昨日見た本にも出ていなかったよ? イッカクって名前知ってたの?」

「ん〜、子供の頃おとぎ話で出てきたのかも?? 本にも載ってなかったの?」

「うん、きっと珍しいんだね。すごいな〜」


 ちょっと嘘を言っちゃった。生前テレビで見たなんて言えないもの。

 すごいのはルカなんだけど、なんだか自分が褒められた気になっちゃうわ。


「ルカ、またくるわね。バイバイ!」「キュイ!」


 確かに、イッカクって生前でも珍しかったかも? あまり人に紹介しない方がいいかもしれないわ。

 ルカと別れ、一旦馬車に戻る。次は港町ね。




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