証拠を手に入れろ
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あれから50分ぐらいしか経っていないけど。
「うまく行ったかしら……」
本を開いているけど頭に全く内容が入ってこない。
さすがにまだ撮れていないか……。
コンコン
「はい、どなた?」
「アーサーです」
私は扉を開けると、すぐにアーサーを中に入れた。
「どう? うまくいった?」
「うん、撮れたと思う……。絶対に嫌いにならないでね?」
ならないったら! ……こんなにかっこいいのに。
しばらく2人だけにしてもらい、映像を確認する。
「『記録再生』」
ブウンと音がし、空間に映像が浮かび上がる。
……。
王妃の手が股間に伸びたところで映像をとめた。
「アーサー様、これは、私の父と、アーサー様のお父様も交えて話した方が良さそうです」
「や、やはり、そうですよね……」
「えぇ、甘く考えていました。あの顔は子供を可愛がる顔では無いです。恍惚としてアーサー様を見ていましたね。ゾッとしました」
しかも、あの短時間で取れたってことは王妃様は隙あればいつでもってことじゃぁ?
「わかりました。父を呼びます。手紙を書きたいのですが? あと、1人移動用の魔法陣の設置もしたいのですが」
「えぇ、どうぞこちらへ。ここで手紙を書いていいですよ? 魔法陣は父に確認しますね」
アーサー様を机に向かわせ、アンナに父と兄を呼んでもらう。
父と兄はすぐにきてくれた。簡単に事情を話すと、録画した映像を見せる。
2人には映像の一部始終を見てもらった。
やはり、私はたまらず途中から目を伏せた。
アーサー様も下を向いたままだった。やっぱり恥ずかしいよね。ごめんね。
「アーサー殿下、よくお一人で耐えましたね。そしてフローレンス、いい判断だ。あとは我々大人が解決するから。殿下は今晩からマックスの部屋に泊まるといいよ。それと魔法陣だがシュナウザー国は友好国だし、今回は問題が問題だけに移動できる人間を限定して許可しよう。手紙が届いたらすぐに来てもらえるようにお父上に頼むといいよ」
よかった。そうよね、もし魔法陣を利用して攻め込まれたら大変だもの。
「あぁ、俺は寝相が悪いがベッドは広い。5人で寝ても余裕があるくらいだ。だから遠慮はいらない」
ポンと肩に手をやる兄、優しく微笑む父。……5人も泊めたことあるのかしら。
ホッとした顔のアーサー様。
「よかったわ。はいこれ。今日はこれ読みながらゆっくり眠れるわよ」
「あ、『深海の魚』だ。ありがとう。フローレンス、君に会えてよかった。」
その夜の晩餐の席は静かだった。心なしか、シュナウザー国のマリー王妃の機嫌が悪かった気がした。