最終日
⭐︎
翌日。王子殿下をご案内最終日。
今日はアーサーのお別れ会。すっごく嫌だ。離れたくない……。
「ねぇ、ナンナ。いつもありがとう」
「!!フ、フローレンス様……。はい。こちらこそ、ありがとうございます」
ワンショルダーの白いドレスだ。とても上品。髪の毛もサイドに流している。
「はぁ、今日帰っちゃうのよ。寂しいわ……」
涙ぐむ。泣いちゃダメなのに……。お化粧してるのに……。
「ぐすん……」
コンコン
「はい、どちら様でしょうか?」アンナがドアの前に立つ。
「アーサーです。フローレンス様に会いに来ました」
「まぁ、どうぞこちらへ」アンナはすぐにドアを開けると招き入れた。
「アーサー、会いたかった。やだ、もっと涙が……」
「フローレンス……返事を聞きにきたよ? 教えて?」
いつの間にかいなくなるアンナとナンナ。
「ねぇ、返事を言う前に約束して欲しいことが一つだけあるの」
「ん?どんなこと?」
「12歳になったら学校に入るでしょ?……アーサーには、こっちの学校に留学して欲しいの……。1年経ったら私も一緒に入るし……」
「まだ先の話だね。留学か、父上に聞かないと」
「いいぞ! 留学は考えていたところだ」
2人で入り口を見ると、アーサーパパ(オスカー王)が立っていた。
アーサーを迎えに来たのね。
「え、でもいいんですか……?アーサーがこちらの学園に来るんですよ?」
「うん、こちらに留学は考えていたんだよ。よし、挨拶ついでに早速レオ殿に言ってこよう。その時また世話になるからね! じゃ、また後で!」
こっちに留学……。こんなあっさり決まるなんて!
嬉しい。もうこれで不安がることはないわ。
「アーサー。私、あなたと結婚するわ!」
「あぁ!ありがとう!わかっていたけど、ドキドキしたよ!」
「こっちに留学してくれるなら、もう何も心配することないもの。アーサーよろしくね」
「もし留学できなかったら断るつもりだったの?」
「断らないけど、何か考えないといけなかったわ」
「ん〜なんだろう?理由を聞かせて?」
「そのうちね、ふふふ」
それから、侍従がなぜアーサーを殺そうとしたのかがわかった。
アーサーの侍従をしていた時から王妃に傾倒していたらしく、捕まったのもアーサーのせいと逆恨みしていたらしい。その日が最後の視察だったので焦って凶行に及んだようだ。
最終日のお別れ会は婚約発表の場に変わり、皆に祝福された。
そしてアーサーが帰る時刻が訪れる。
「うぅ、やっぱり寂しいわ……」
「転移魔法陣で遊びにくるから、フローレンス、泣かないで?」
「絶対よ?絶対!」
涙でぐしょぐしょの顔なのに、それを愛しそうに撫でて彼は国に帰って行った。
⭐︎⭐︎⭐︎
あの日から月日が過ぎ、私が16歳になるのを待って2人は結婚した。
結局競争はどちらが勝ったか?ってなったんだけど、どっちも大好きなので引き分けになったわ。まぁ、そうよねー。
アーサーは毎日、転移魔法陣で遊びに来てくれたし、こちらの学校に留学もしてくれた。
王太子妃教育が始まると私も転移魔法陣でシュナウザー国に行ったりした。
思えばあの7日間がなければこんな結末になっていただろうか?
アーサーのような素敵な人と結婚できるなんて。
結婚する前に、前世の記憶があることを告白したけど、問題なく受け入れてくれた。
ただ、私がイケメン好きなのがバレて、アーサーが周りをすごく警戒するようになってしまったことが誤算かも。
好きになるのはアーサーだけなのにね。
もう一つ、アーサーはずっと私の瞳を見たことがあるような気がしていたらしい。
その疑問もアーサーパパ(オスカー王)が解決してくれた。
「フローレンスの目を見てると亡くなった妃を思い出す……」
アーサーが生まれて3ヶ月ぐらいで亡くなったお義母様。そのグリーンの瞳をアーサーは覚えていたのだった。
そうか、きっとお義母様も応援してくれてたのねと、納得してしまった。
そういえば、シュナウザー国にお嫁にきた時、妙な噂を耳にしたわ。
アーサーが留学してプルメリア国にいた頃、シュナウザーの学園では時々叫び声がしたとか。
「王子様ってどこよーーー! 悪役令嬢はーーー? どーーこーーーー!!」
って、言っていたらしい……。
ん〜ヒロインの夢を打ち壊したから、私ってやっぱり悪役令嬢ってことになる?
お・し・ま・い。
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