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アーサー視点 ①

アーサー視点、長いです。内容も重複するところが多々あります。

 

 ⭐︎⭐︎⭐︎


 ー アーサー視点 ー


 僕はアーサー・ウィル・ヴィリアーズ。シュナウザー国の第1王子だ。

 まだ8歳だけど、婚約者を決めないといけないらしい。結婚は16歳になるまでできないけれど、婚約はいくつからでもしていいとか。婚約したら王太子妃教育とかもしないといけないらしく、早めに見つけて育てるらしい。


 僕の本当のお母様は僕を産んですぐに亡くなってしまった。父は母を愛していたから再婚もしなかったんだけど、最近、外交的にパートナーがいないと格好がつかないと周りに言われ、親戚から名前だけの王妃様を置くことにしたらしい。


 名前だけのはずなのに、やたらと僕にかまいたがる。


「アーサー様、私、子供が大好きなのです。時々添い寝してもよろしいですか?」

「アーサー様、婚約者候補を選別されるんですか?私もお手伝いをいたしますわ」

「アーサー様、お着替えを手伝わせてくださいませ? まぁ、可愛らしいお尻」


 ……なんだろう、身の危険を感じる時がある。この人、22歳とか言ってたよな。

 まだ結婚できる年齢なのに、わざわざお飾りのお妃を選んだ理由がわからない。

 それとも、お妃という立場に憧れたのだろうか……。


 明日、隣のプルメリア国に旅立つ。日程では1週間かかって到着、その後。1週間かけて国を視察する予定だ。そこの第2王女が僕の婚約者候補らしい。はっきり言って僕は女の子って苦手だ。声はキンキン高くてうるさいし、香水臭いし、僕が何か言うと「きゃ〜、その通りですわ!!さすが殿下です!」と判を押したように言う。ちゃんと自分で考えて話しているのか不思議に思う。でも、父が言っていた。


「プルメリアの第2王女はお前の1つ下だがとても賢いらしいぞ? 最近彼の国では海から塩の精製方法を見つけたらしくてね。その第2王女の発案らしいよ?」


 そういう人なら話すと楽しいのかもしれない。少し楽しみになってきたかな。


 あと1日でプルメリア国の宮廷に着くという前の晩。野営をしていたら「添い寝しましょう?」と、シーツに入ってきた王妃。さわさわと手が動き回る。気になって眠れやしない。「申し訳ないのですが、手が煩くて眠れないのです。やめていただけますか?」と言ってみる。「そうなの?そのうち気持ち良くなるわ……ね?」ゾッとした。バッと立ち上がり、眠く無いからと馬車から降りる。焚き火の周りには何人かお茶を飲みながら起きていたから混ぜてもらう。翌朝、暗いうちから出発した。向こうには早めに到着してしまうが、謝ろう。


 早朝にもかかわらず、城の人たちは快く迎えてくれた。


「初めまして、シュナウザー国第1王子アーサー・ウィル・ヴィリアーズです。よろしくお願いします」

「プルメリア国へようこそ。国王のレオ・リア・アースキンです。お疲れでしょう。まずはお部屋に案内させましょう。ジョセフ」

「っは! アーサー殿下、こちらでございます」

 

 執事に案内され部屋に着くと

「自分の家と思ってお過ごしください。何か必要なものがあれば使用人に言っていただければご用意します。ごゆっくりどうぞ」

 と、言って退室して行った。


 疲れた……。僕は王子なのに、なぜこんな目にあうんだろう……。勉強も頑張っているし、剣も教わっている。毎日頑張っているのに、毎日頑張っているのに! どうしたらいいんだ? 王妃は子供好きなだけ? 本当に? ……わからない。

 でも、でも、気持ち悪いんだ!


 侍従に部屋には誰も入れるなと言い、少し眠る事にした。


 さわさわ、さわさわ……。

「!!」 振り向くと、王妃がいた。


 誰も入れるなと言ったのに!


 慌てて起き上がり外に出る。

(このところやたらベッドに入ってくる……気持ち悪い)

 すると、執事のジョセフがちょうど階を上がってきたところだった。

「あぁ、これは。今からお呼びに行くところでした。昼食の準備が整いました。どうぞダイニングルームにお越しください」

「あ、ありがとう。ついて行けばよろしいですか?」

「はい。こちらでございます」

 ダイニングルームにはまだ誰も来ていなかったが、促されるまま席についた。


 次々に到着する王族達。こちらの王妃もやってきた。

(……困った。この状態が続くのか? これから1週間どうしよう……)


 すると、執事のジョセフ殿の声がした

「こちらでございます。ささ、ご挨拶を」


「遅くなり申し訳ございません。アースキン王家次女フローレンスです。お初にお目にかかります」


 女の子がカーテシーをして挨拶をしている。

 あの子が婚約者候補? 挨拶しないと……僕はすぐに立ち上がり近づく。

「いいえ、僕が早く来すぎてしまったのです。申し訳ありませんでした。僕はシュナウザー国第1王子アーサー・ウィル・ヴィリアーズと言います。どうか、顔を上げて?」


 きょとんとした感じに見上げてくる顔。


「は、はい。ありがとうございます」


 赤いふわふわの髪の毛がゆるく結ばれている。瞳はグリーン。精巧に作られた人形のように可愛らしく、美しかった。


 ドキンと胸が鳴った。……顔が熱い。

 落ち着け、どうしちゃったんだ僕。

 彼女から、花の香りがした。落ち着く優しい香り。それに、初めて会ったのに、なぜかあの瞳を見たことがあるような気がした……彼女に、僕はどう思われたかなぁ。


「フローレンス様はこちらの席です」

 彼女が席に着くと和やかに昼食会は始まった。

 そうだ、女性にはドレスを褒めないと、と僕は気づき、慌てて褒めた。

「今日のドレスはすごく似合っていますね」

「ありがとうございます」と、彼女はお礼を言うと、斜め後ろの侍女とニッコリと微笑みあっている。……笑顔が可愛らしい……。


 食事中の話では、滞在中の1週間、僕の案内役はフローレンスがしてくれることになった。


 チラッと我が国の王妃を見ると、険しい顔で黙々と食事をしている。

(よかった、日中だけでも王妃と離れられる……侍従も僕の言うことを聞かないし、どうするか……)


 その晩考えた。シーツをぐるぐる巻きにしてミノムシのようになって眠った。

 触っているようだが、何重にもシーツを巻いているから大丈夫だった。


 でも、もうできない。ものすごく暑かった……。朝イチで水をがぶ飲みしていると王妃がそばにきて囁いた。「お着替え、手伝いますよ?」と。

 もう限界だった。部屋から押し出し、1人で着替える。侍従も呼ばない。


「うぅ、なんなんだあの女。気持ちが悪すぎる」


 もう王妃なんて呼ばない。約束の時間まで早いけど、もうホールへ行ってよう。


「お待たせいたしました。」

「いえ、約束の時間より早くついたのはこちらです。……お気遣いさせてしまい申し訳ありません」

 ……彼女が首を傾げている。連日の寝不足気味なのが出てしまったかな……。


 それから、お互い名前で呼び合うことを確認しあった。


 同じ図書室でも国が違えば本も違ってくると彼女は言った。新しい発見があると。

「ええ、なるほど。新しい発見ですか。ぜひ見つけたいです」

 新しい発見か。考えても見なかった、あの女のせいで、心が疲れていて余裕がなくなっていたからだ。

 広い宮廷を2人で歩く。不思議だ、彼女と話していると気持ちが楽だ。


「たくさん歩いてしまいましたね。こちらですわ」

 衛兵が大きな扉を開けてくれる。

 とてもひろい図書室が見える。


「わぁ〜たくさんありますね。確かに、我が国の図書室と同じぐらいです」

「この国は海が側なので海洋に関する書物が豊富なんですよ?」

「それは、どのあたりにありますか?」

「はい、その柱から右全部です」

「こ、こんなに? 見ていいですか?」

「もちろんです。こちらのテーブルに読みたい本を持ってきて一緒に読みましょう」

 僕は海洋関係の本を数冊持ってくると席についた。彼女はお菓子作りの本。

 お菓子か、今度何か作ってもらえないかお願いしてみようかな、迷惑かな?

 2人で本を読み始める。まったりとした時間が流れていく……たまにはこういうのもいいかもしれない。

 しばらく2人で本を読んでいると。

「お茶のご用意がございます。どうぞ、少し休憩を」

 と、執事のジョセフ殿が声をかけてくれた。


「もうそんな時間?わかったわ。ありがとう。アーサー様、一休みしませんか?」

「うん、夢中になってて時間を忘れてしまったよ。お茶をいただきましょう」

 2人で立ち上がり、テーブルを移動する。テーブルの上には軽食もあった。


「まぁ、サンドイッチもあるわ。嬉しい。まだ本を読んでいいのね?」

「はい、本日は好きなだけ読んでいいそうですよ?」

 と、執事のジョセフ殿が告げる。

「嬉しいわ! ね、アーサー様、もし読み終わらなかったら何冊かお部屋に持って行ってもいいわよ?」

「ありがとう、そうしようかな。この『深海の魚』っていう本が面白くて、まだ、読み終わりそうに無かったんだ。部屋でも………読めたらいいのに」

「? 部屋で読めないのですか?」


 自分でもだんだん表情が暗くなるのがわかる。

 つい、言ってしまった。


「……あとで、聞いてほしいことがあるんだ。僕の気のせいかもしれないし」


 彼女の顔色が変わった。


「今聞くわ。ジョセフ人払いを」


 2人きりになる。もちろん護衛はいるけど、大きい声じゃないと聞こえない距離にいる。


「アーサー様、これで話してくださいますか?」

「うん。実は……」


 僕はこれまでのことを話した。

 今のマリー王妃は実の母親では無く、後妻と言うこと。

 婚約者候補選びにこうやって遠出をすることになると、王様を言いくるめ、自分だけがついて来れるようにしたこと。

 添い寝したがったり、身体中触ってくること、着替えを手伝いたがったりと、特にこの旅行にきてから、王妃の行動が悪化したこと。

 そして、今朝も支度をしている最中に、着替えを手伝おうとする。

 慌てて部屋から追い出し、1人で着替えて出てきたから約束の時間より早くホールについてしまったこと。を話した。


「もし、それが邪な気持ちからの行動なら……虐待だわ」

「触るだけだからね……。ただ、それがすごく気持ち悪いんだ。僕の気のせいと言われたらそれまでだし」

「一度、ちゃんと言ってみた? 血は繋がって無いから、こういうことはやめてほしいって」

「うん、言ったよ? でも、母親が触るのは当たり前でしょ?って聞いてくれない」

「ん〜相手が嫌がるのに構わず触ってくるって時点でアウトだけど。王妃様だし、どうしましょうね」

「僕の部屋に平気に出入りしてくるから、どうしたらいいのか。……昨日初めてあった君にこんなこと相談して、ごめんね」

「ううん。話してくれてよかったわ。それに、この旅行に来てから酷くなったのでしょ? 誰にも相談できない状況だもの。勇気を出して言ってくれてよかったわ。触るって、ベタベタ触る感じ?」

「うん、もう、気持ち悪いぐらいに。……そ、それに股間まで……」

 フローレンスは小さく「ヒッ」と言って口を両手で覆った。


「……そうだわ! 今日からお兄様の部屋に泊まるといいかも!」

「あ、そうなると君の兄上にも話さないといけないけど……恥晒しな事と思われるかな?」


「いいえ。恥なのは子供を虐待している大人よ。あなたは胸を張っていていいのよ」


 彼女はまっすぐに僕の目を見て言った。


 あぁ、そうか、胸を張っていいのか……迷わず話せばよかったのか。

 彼女はわかってくれる……。彼女なら……。

 涙が溢れてしまった。


「うん、本当はどうしようか困っていて……でも、誰にも話せなくて……君ならちゃんと聞いてくれる気がしたんだ。ありがとう」


 フローレンスは何かを決意したかのように手を握りしめるとこう言った。


「あと、提案なんだけど……証拠がほしいわ。」

「証拠?どうやったらいいの?」

「本当は映像がほしいわね。触られている決定的なところ」

「うぅ……。2人きりになるって事?できるけど、どうやって映像なんて記録できるの?」

「ふふふ、あるのよ。兄が魔法で作ってくれたの。魔石に画像を記録できるの」

「わかった。僕やるよ。き、気持ち悪いけど……」

「画像が撮れさえすれば、兄の部屋に泊まって大丈夫だから」

「うん……やってみる」


 ⭐︎


 それから僕たちはフローレンスの部屋に戻った。映像が記録できるという、真っ黒のキューブ状をしていて真ん中に赤い魔石がはめ込んである石を僕に渡す。

「いい?この赤い石を撮影対象に向けてね。記録スタートは石に向かって『記録開始』というだけよ。終わりは『記録終了』って言うの」

「わかった。あの、もしも画像がうまく撮れて、それを見ても……僕のことを嫌いにならないでいてくれる?」

「まさか! 絶対に無いわ! 約束よ!」


 あんなことされている僕の姿。本当は恥ずかしくて見せたく無いんだ。


「わかった。撮り終えたらまっすぐここに来ていい?」

「もちろんよ。待っているわね」


 ⭐︎


 僕はキューブの魔石を手に部屋に戻った。部屋の隅にこちらを向けて置きベッドに入る。


 待っていたかのように開くドア。(ノックもしないのか)

 ベッドに入ってきた。僕のシャツのボタンを外していく王妃。

 4つほどボタンを外すとスルリと手を入れてくる。そして撫で回す。

(き、気持ち悪い……だが、もう少し我慢だ)

「どうしたの?今日はいい子ね……。気持ちよくなって来ちゃった?」

 両手でぎゅうぎゅう抱きしめてきた。背中に胸が当たる。興奮しているのか?息が荒い。

「あぁ、かわいい……早く私のものになって……かわいい〜」

 そして股間に手を伸ばして来た。僕のも触られれば反応する。

「あぁ、なんてかわいいの、反応しているわ。あぁ、見たいわ〜」


(もう無理だ!!)


 シーツをバッとひるがえし、王妃の顔にかけて、キューブを掴むと部屋から飛び出した。


 廊下を歩きながら服を整える。涙も拭う。


 フローレンスの部屋の戻り、画像を見せる。

 その後、父宛に手紙を書き、フローレンスの父と兄にも画像を見せた。


「アーサー殿下、よくお一人で耐えましたね。そしてフローレンス、いい判断だ。あとは我々大人が解決するから。殿下は今晩からマックスの部屋に泊まるといいよ。それと魔法陣だがシュナウザー国は友好国だし、今回は問題が問題だけに移動できる人間を限定して許可しよう。手紙が届いたらすぐに来てもらえるようにお父上に頼むといいよ」

 もちろん、魔法陣を悪い事になんか使わないです。


「あぁ、俺は寝相が悪いがベッドは広い。5人で寝ても余裕があるくらいだ。だから遠慮はいらない」


 ポンと僕の肩に手をやるマックス様、優しく微笑んでくれるレオ様。

 本当に、この国でよかった。自国の恥を晒してしまったけど、この国の人たちなら大丈夫な気がする。


「よかったわ。はいこれ。今日はこれ読みながらゆっくり眠れるわよ」

「あ、『深海の魚』だ。ありがとう。フローレンス、君に会えてよかった。」


 本当に、心から思った言葉だった。






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