最難関ダンジョンに挑んでみた
その日アリサは念願の忍者にジョブチェンジした。
「やったね!」
シオンと合流してからこのルリの守護する大陸にあるダンジョンを次々と踏破していった。
難易度関係なく近場にあるダンジョンへと次々と移動していたので、目新しさや興味から集中が途切れる事なくレベルが上がる速度など然程気にせずにいられた。
お陰であっという間だったような気さえする。
「アリサの目標達成ももうすぐという事だな」
「まあね。もっともその後は魔法の熟練度上げが待ってるけどね」
魔法の熟練度も★MAXになっているものも多数あるが、賢者になってから覚えた魔法や魔道士の扱う魔法のいくつかはまだ★三つのものも多い。なのですべてをカンストさせるのにはもう少々時間がかかるだろう。
「それでその後はどうするのだ?」
「その後って?」
シオンの守護する大陸の問題はほとんど片づいたらしい。アリサが提案したように孤児院も病院も国が責任を持って管理するようになった。
そして学校給食の普及に合わせ基本学術を学ぶ学校の他商人を育てる学校、魔法を習う学校、剣術や体術を習う学校など学校が細分化され教育を受ける者が多くなっているそうだ。
教育が進むのは良い事だと思いながら話を聞いていたアリサは、少しでも自分が関わった問題が解決し良い方向に向かっていると知り嬉しかった。
そして今念願の忍者にジョブチェンジし、レベルやジョブレベルなどのステータスをカンストさせた後はどうするのかと聞かれ少し戸惑い答えに詰まっていた。
先の事などあまり考えた事もなかった。
前の世界がファミコンRPGの世界だと知り一人で冒険を始めてからずっと、アリサはどこかゲームの世界をリアルで楽しんでいるという気分が抜けていない。
それはこの世界に来てルリとシオンが仲間になっても変わってなかった。
「まあ、無理に今決める必要もないか」
アリサはシオンのその言葉がとても心に残った。
(私はこの後何をしたいのだろう? 何ができるのだろう?)
そんな疑問を時々思い出しながらもダンジョン踏破を続け、いよいよこの世界最難関といわれているダンジョンへと挑む事になった。
「最後のダンジョンは私も一緒に付き合うわ」
神の化身としてあちこちに出向き聖女のごとき活躍を続けるルリが珍しく合流してきた。
正直アリサはもうルリと冒険するのを諦めていた。
それくらいにルリはこの世界の人々から求められていたのだ。
「大丈夫なの?」
「アリサの冒険のお伴をするのが私の役目だったのよ」
「でも元々の役割を果たし始めているのでしょう?」
「今は元々以上の役割を求められている感じね。でもこのくらいの融通はさせて貰うわ。アリサは余計な心配しないで」
「そうだ。我らからアリサの伴になる事を望んだのだ。最後まで付き合うぞ」
(最後まで?)
アリサはその最後がいつになるのかと考えずにはいられなかった。
しかしそんな事を考えているなどおくびにも出さずに最難関ダンジョンの攻略を始める。
そこはやはり地下にあり、まるでシオンが荒らし回ったかのような崩壊された街並みが続くダンジョンだった。
所々に炎が上がり、崩れた建物の影から魔物が飛び出してきたり、上空を煩く飛び回る魔物も多かった。
最難関と言われるだけあって魔物もそれなりに強く、多方向に注意を向けなければならず、そう簡単に気の抜けないフィールドだった。
彼方には魔王城のようにおどろおどろしくそびえる城が見える。きっとあそこが最深部、このダンジョンのボスがいる場所だろう。
アリサはルリとシオンと顔を見合わせると迷わずに悪魔城に向かって走り出していた。