待ち合わせをしてみた
「ルリはまだやる事があるんでしょう?」
アリサは預かっている金銀財宝や武器防具の類いをルリに渡す為にマジックバックの複製をしていた。
金銀財宝を他の大陸や他の国へ持って行き、ドラゴン素材のようにオークションに出したり売りに出すことにしたからだ。
武器防具の類いは宗教印が施されているので、印を消すか作り替え、もしくは素材に戻す事になりそうなので安く買いたたかれる事になるだろう。
それでも売ると決めたのは少しでもお金になるし資源の節約を考えての判断だった。いわゆるSDGsってヤツだと思う。
そしてその資金を元にルリに選ばれた人々で復興の他に新たに社会貢献や布教活動をしていくらしい。
「そうですね。アリサには迷惑をおかけします」
「別に迷惑な事なんて何もないよ。ルリの守護するこの大陸が平和になるのがルリにとって一番の問題だろうし、寧ろ今まで知らなかったとはいえ付き合わせて引っ張り回していたみたいで申し訳ないと思ってる」
「そんな事は・・・」
アリサはこの世界に冒険を楽しむ為に転移してきたようなものだ。別に世直しをするつもりなどさらさらなかった。
結果として自分が守護する大陸に問題を抱えていたルリとシオンが一緒に冒険をする仲間になり、二人が抱えていた問題を解決する手助けを少しばかりしただけだ。
そもそもアリサはこの世界に来てから冒険を楽しむというより、自分のステータスをカンストさせる為にダンジョンに潜る事しかしていない気がする。
「それよりさ、ジョブレベルを上げたいんだよね。どこか適当なダンジョンを知らない?」
「それでしたらもうすぐシオンが戻ります。その後にしてはいかがです?」
「シオンの用事はもう済むんだね」
「今は別大陸にまで遠征していますが、それももう済みます。あと少し待っていただければ問題なく合流できるはずです」
「そっか、じゃあそうするよ」
今のアリサの目標は一日も早くジョブを忍者にする事だ。
上級ジョブだけあってなかなかレベルが上がらないバトルマスターと賢者のレベル上げを早く終わらせてしまいたい。
その為には多分少々強い敵に挑まないといけないだろうと思っていた。
ステータスをカンストさせていてドラゴンもほぼ一撃で倒せる今のアリサに怖い敵などいないとは思うが、地下大迷宮を一人で攻略するのは意外に疲れた。それに少し寂しく何気に不安だった。
この世界に来るまではソロで何も問題なかったのに不思議な話だ。
「問題はシオンと合流するまでどうするかね。私が一緒にいてもいいのだけど・・・」
「大丈夫よ。ルリは忙しいんでしょう?」
多分今が一番忙しい時なのだろう事はアリサにも分かる。それでもこうしてアリサのお風呂に入りたいという要望に無理して応えてくれたのだ。本当に感謝しかない。なのでこれ以上無理を言う気はなかった。
「シオンが迎えに来るまであの地下大迷宮で大人しくしてるよ。あそこならシオンも私を探しやすいだろうしね」
「アリサがどこにいてもシオンも私もすぐに分かるわよ」
「そうだろうけどなんとなくよ。どこにいるか聞かれた時に地下大迷宮って言葉ですぐに説明できるし、シオンだって迷う暇なくまっすぐ迎えに来られるでしょう」
「きっとそうね」
アリサは無性にシオンに会いたい気分だった。
きっとルリとこうして久しぶりに会って話した事で、シオンの無事な姿を確認したくなったのだと思う。
シオンに何事もないとは分かっているし信じているが、ちゃんと会って自分の目で確かめ声を聞きたいと思ったのだ。
「じゃあシオンに地下大迷宮で待ってるって伝えてね」
アリサはルリに元の聖都近くまで送って貰うと別れ際にシオンへの言づてを頼んだ。
多分シオンにも念話は通じるだろうがちょっと照れくさかったのでルリに言付ける。
「分かったわ」
「早くまた三人で冒険がしたいね」
「ええ、そうね」
無邪気に話すアリサとは裏腹に、どこか元気のない返事を返すルリだった。