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おひとり様で行くファミコンRPG世界冒険録  作者: 橘可憐
2 ー 3 クレアエ聖教国
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行動してみた


アリサは一刻も早くお風呂に入りたい一心で、疾風のごとき速さで街道沿いにあるだろう街を目指し移動を開始した。


そして程なくして到着した街で驚く光景を目の当たりにする。

街から溢れんばかりの人々。元からの住民と被災してきた者たちとが今にも争いを起こさんばかりにギスギスとして言い合い対立する様子。


聖都から避難してきた者たちは信者が多かったせいか、今の現状を嘆き改善を願い神に祈りを捧げるばかり。誰かが何かをしてくれるのを待ち、与えられるのを当然としている。


元々の住民は始めはそれを善意から受け入れていたのだろうが、避難民にあれこれと提供する内に自分たちの生活や仕事までも脅かされ始め危機感を抱いているようだ。

いつまでもお客様でいる避難民たちにかまっていては共倒れになってしまうと。


食材や日用品と言った物資の提供はあったはずなのに、それだけではない問題が山積みにされていたようだ。


「これじゃぁお風呂を借りられるとこなんて探せないわね・・・」


アリサは溜息をつくとともに大変な事を思い出した。

そう、聖都のダンジョンから出てきた人々にここに避難しろみたいな事を言ってしまったのだ。


今あの人たちがまたこの街に押し寄せたらさらに問題を悪化させ、いらない争いを生む事になるだろう。

アリサは途端に顔を青くし、元来た道を慌てて引き返す。


(どうにかしなくちゃ・・・)


地下大迷宮ダンジョンに避難していた人たちは、少なくとも自分たちだけで助け合いどうにかしていた。

だとしたら物資を提供さえすれば、自分たちでどうにかしていけるのではないかとアリサは考えた。


なんにしてもアリサにできる事と言えば、インベントリに山のようにあるアイテムを提供するくらいだ。

アリサにはみんなを先導し何かをなすようなリーダーシップを持ち合わせてはいないし、大勢に影響力のあるような発信をできるほどの人格者でもない。


アリサは街道を歩く人を見つけ、街は人で溢れかえり行っても受け入れて貰えそうもないと説明する。

そして聖都のあった場所まで戻ると、素材と化していた石材や木材などをインベントリから取り出していく。


他にも当然のように収納されていた鍋や包丁や桶といった日用品に衣類に食材。そして売る機会を逃していた肉などの食材になりそうなドロップ品などなど。


今にも争いが起こりそうな街に向かうなら、再開発が始まるまでこのままダンジョン内に避難していた方がいいだろうと思ったのだ。


それにここに十分と思える資材を出したので、もし建築に詳しい人でもいればちょっとした仮設住宅を建設するのも可能だろう。

あとはここで暮らしていた人たちが自分たちでどうにかするしかないのだと、アリサは自分の無力感に溜息をつきながら他にできる事を考える。


「ルリ、お願い返事をして!」


『どうかした? アリサ』


「聖都のあった場所に資材を置いたわ。早急に再開発を始められるように手はずを整えてよ。あと他に更地になった街の場所を教えて。同じように資材や物資を提供しに行くわ」


「場所を説明してもアリサには分かりづらいでしょう。私が案内します。少々お待ちください。今迎えに参ります」


ルリはアリサが詳しい話をしなくてもその緊急性を感じ取ったようだった。


そしてアリサはルリに言われたとおりにその場でしばらく待っていると、空の彼方から凄い勢いで飛んでくる気配を感じる。青い羽根を持つ聖獣姿のままのルリだった。


ルリはアリサの目の前に降り立つと、アリサをその背中に乗せ悠々と飛び立った。

その様子を見ていた人々が祈るようにしていた事をアリサは気づきもせずに。


そうしてルリに案内された場所に次々と資材や物資をアリサがインベントリから提供していくたびに、ルリは人々にみな自分ができる事で再開発を助けるようにと告げて回る。

それを神の化身が神の御心を告げて回っているのだと人々は自分たちを戒めた。


そして神の化身の背に乗る少女は、その手から必要な物資を出してみせる神の御業を持っている奇跡の人だと崇め始める。

しかしそんな事などつゆとも知らず、アリサはインベントリに収まった資材や物資が全部捌けた事を喜び、金銀財宝や武器防具の類いはどうしたらいいのかとルリと話し合うのだった。



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