混乱してみた
アリサとシオンが地下大迷宮を攻略している間にとうとう宗教戦争が始まってしまった。
ルリが聖獣の姿になり争いを止めるように説得を試みるも、どちらの勢力も自分たちの為に顕現してくれたと喜びさらに勢いづかせる事になった。
しかしそれがあってダンジョンの出入りが自由になったアリサとシオンはデジョンを活用し、地上とダンジョン内を頻繁に行き来して宿でゆっくり休む事もできるようになった。
戦争中と言っても争いは別の場所で起こっているらしく、街の中にはまだ被害も何もないのに宿泊代金はやたらと高くなっていた。
「戦争が始まっちゃったからもう踏破を急ぐ必要も無くなったって事だよね」
「こうなってはこの地でアリサにできる事はないだろうな」
「ルリはどうしてるんだろう。無理をしてなければいいけど」
アリサはあれ以来連絡のないルリを心配していた。
「私のように腐敗を消し去れば話は早いのにな」
「それは根本的な解決にはなりません。新たな淀みを生み腐敗を生むだけです」
「ルリ!」
何日かぶりで見たルリの顔にはやはり笑顔はなかったが、こうして姿を見せてくれた事でアリサは少しばかり安心した。
「神の天罰でも落としたらどうだ? 恐怖は抑制力にもなり得るぞ」
「そうして実害を被るのはいつでも何も考えず従うだけの民ですよ。壊すのは簡単ですが再建には時間とお金が必要です。何も持たない多くの民たちを指導者を改心させずに救えると?」
「国ごと壊し宗教に関係ない新たな指導者を据えればいい。宗教で国を導こうとする事に無理がある。支えにするのはいいがすべてにするのがそもそもの間違いだ」
「それでは私の存在意義が・・・」
「ルリを否定してはいない。だがすでにその存在も意義も無視されているだろう?」
「しかし私は神の化身です。壊す事はできるとしても癒やすのが私の役目なのです」
アリサにはルリとシオンの話に口を挟めなかった。
詳しくは何も知らないし何を話しているのかも全部を理解できないでいる。
しかしルリがとても思い悩み苦しんでいるのだけは分かった。
「私にできる事がないとしてもルリとシオンで協力する事はできないの?」
「それは・・・」
「ルリが壊せないのなら私がすべて壊してやろう。ルリは必要な者たちを癒やして回ればいい」
壊す決断のできないルリにシオンが迫る。
「・・・・・・」
「再建費用を心配してるなら魔物の高額素材をいろんな国で売ればいいのよね? ドラゴン素材をルアルコーで売ったみたいに」
ルアルコー国のあった大陸ではドラゴン素材もそろそろ珍しくはなくなっているだろう。
それでも別の大陸ならまだまだ高値で売れるはずとアリサは考える。
シオンがドラゴンの巣はまだあると言っていたのを思い出し、ドラゴン素材での費用捻出ならアリサでも協力できると意気込んだのだ。
「ああそうだな。それに無駄に溜め込んでいる奴らも多そうだしな」
「認めたくはありませんが・・・」
「戦争などしている場合ではないとしっかりと思い知らせてやるから安心しろ」
「・・・ええ、私も漸く決心できました。新たな神を誕生させる気で臨みます」
「ああ、そうするがいい」
ニヤリと腹黒そうな笑みを浮かべるシオンに表情がスッキリとして見えるルリにアリサは少し困惑する。
(あ、あれぇ・・・。神様って私をこの世界へ転移させた人だよね? 新たな神ってそんなに簡単に神様を変える事ができるの? それとも日本みたいに大勢の神様がいるとか? でもあの神様はそんなどこにでもいる神様って感じじゃなかったよ。それにルリもシオンもたまに念話をしてたじゃない。っていうかルリもシオンも仕える神様を変える話をしてる事になるんだよね? それって謀反じゃないの? 天罰が下ったりしない?)
二人の話にまったくついて行けないアリサの脳内はすでに混乱気味だった。




