飲み込んでみた
「ねえ、もう王都観光も飽きたよ。そろそろどこかのダンジョンへ行こうよ」
アリサが宰相に提案した孤児院や病院に関しては今まで教会が携わっていた事からどうやら上手く話が進まないようだった。
要するに教会が金は出せ、だが口は出すな権利と主導権は教会にあると横槍を入れているらしい。
それはこの国だけの話では無くこの大陸にある他の国も同じだった。
アリサはルリの提案で宰相からの返事待ちというか、進捗状況の確認という名目で王都にもう何日も滞在していた。
その間に国から新王へのドラゴン素材の祝いの献上と学校給食への多大な寄付の報償という名目で王都に使用人付きの豪華な屋敷が用意されたのには驚いた。
他にも色々提案されたらしいがそれらはすべてシオンが断ったらしい。
(そりゃそうだ。渡した以上の金額が使われていると思える屋敷だよ)
アリサ的には屋敷も普通に断っても良かったのではと思ったが、これが意外に居心地が良くてつい目的も忘れのんびりと寛いでしまっていた。
しかしのんびりしていたと言っても能力グミを複製しステータスはすでにカンストさせたし、回復魔法の熟練度はもう全部が★5になっている。
なのでアリサとしてはすべてのジョブレベルもMAXにして後は忍者に専念したいと思っていた。
その為にも是非ダンジョンへ行きたいと強く思い始めていたのだ。
「これだけ広い王都ですよ。まだ探索していない場所も多いでしょう」
「でもルリも出かける事が多いから私は屋敷に籠もってばかりだよ。一人で出歩いてもいいの?」
実際に王都に来てからのルリはシオンより出かける事が多くなり、三人揃って王都を散策したのは数える程度だった。
「ふん、一人でしようとするから無理があるのだ。私のように眷属を使い頭を叩いてしまえ」
「私には眷属なんていません」
「アイツらは眷属みたいなものだろう。信じられる者の何人かもいないのか」
「それは・・・」
またルリとシオンでアリサには分からない話を始めていた。
「ルリが何をしているのか話したくないなら聞かないよ。でも私にも何か手伝える事があるなら協力させてよ」
「アリサはもう十分に協力してくれています。問題の多くは教会にあるのです」
「はぁ・・・・・・」
やはり詳しくは話して貰えないのだとアリサは思わず溜息をつく。
「屋敷の者と出かけるのなら私は許しましょう」
「俺の付き添いでは満足はできないだろうしな」
「えぇぇ、やだよ。お嬢様お嬢様ってうるさいじゃん」
屋敷の者たちにはアリサが女である事はバレていて、何故かお嬢様と呼ばれ傅かれていた。
なのでアリサは屋敷内では極力部屋に籠もり大人しくしている。
だが、まぁ、料理は美味しいしグットなタイミングでお茶やお菓子が提供されるし、身の回りの世話やお風呂など甲斐甲斐しくされるのも馴れてしまうと案外気分が良かった。
前世でも転生してからも今まで経験した事の無いお姫様扱いは、始めはくすぐったかったが今ではすっかり馴れた。
確かに馴れたけれど、このまま続けたいかと聞かれるとそれは話が別だった。
「分かりました。では私も決断いたします。アリサ、私と一緒に聖教国へ行っていただけますか?」
「何その急な展開」
「ふふ、面白そうだな」
ルリの今までに無い真剣な眼差しに気圧されアリサはつい本音が言えなくなっていた。
(だから私はダンジョンに行きたいんだってば!)
久しぶりにチェックして自分のあまりの拙さに目眩がしています。
少しずつでももっと読みやすくなるように直すつもりでいますが、まずタイトルと主人公の名前を変えました。
始めから長くお付き合いいただいた方にはご迷惑をかけ本当に申し訳ありません。