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おひとり様で行くファミコンRPG世界冒険録  作者: 橘可憐
2 ー 2ルアルコー国
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画策してみた

ピスリッツと言うその街は、大きな馬車もすれ違える大通り沿いはレンガ造りで統一された建物が華やかに並び、商店や飲食店に宿屋などと主要施設が集まっていた。

そして通りを少し外れると途端に石造りだろう建物が密集し、細い路地が迷路の様になっていて人口密度の高さが伺えるそんな街だった。


街に入り大通りをしばらく歩くと盗賊達から助けた商人が私達を待ち構える様にして店先に立っていた。


「お待ちしておりました、是非お礼をさせてください」


私達の姿を確認すると慌てた様にシオンに駆け寄り、店へと招き入れようと案内して来る。

見ると大きな3階建ての立派な建物で、かなり手広く商品を扱い他国とも商いをする問屋だと説明された。


これはいよいよ水〇黄門か? お主も悪よのぉ~と勝手な妄想を脳内展開させていると、シオンは当然の様にズンズンと店内へと入って行く。


(シオン、この人を信用して良いの?)


(問題ない、それにおまえにもきっと利点があるぞ)


念話で確かめながら商品が並ぶ店内を慌てて後を付いて行くと、6畳程の広さの応接室らしい部屋へと通された。


部屋の中央には見るからに高級そうなテーブルとソファーそして壁沿いには飾り棚があり、多分ここで扱う商品であろう物が色々と並んでいて魔物素材が多い様だった。


私達は店主に促され3人掛けのソファーにシオンを中心に座ると、即座に飲み物が運ばれてきて目の前に置かれる。


「改めて自己紹介をさせて頂きます、私はこの商会で他国や他地域との交易を担当しておりますオッカムと申します。あの時助けて頂きこうして大事な命と積荷を守る事ができ本当に感謝しております」


深々と頭を下げるオッカムはここの主人では無かった様だが、その言葉と態度には誠実さが伝わって来た。


「私はシオンと言う、当然の事をしたまでだ」


胸の前で両腕を組みやたらと偉そうな態度のシオンに私はドン引きしながらルリの後にリオンと同じく名乗り挨拶をした。


「これは気が付きませんで、どうぞお召し上がりください」


オッカムさんに促され目の前に置かれたカップに口を付けると、とても薫り高い琥珀色の紅茶が身体も心も潤して行く様だった。

あまり紅茶に造詣が深くは無い私にもさぞかしお高いだろう事が理解できた。


私達が紅茶を楽しんでいるのを確認してかオッカムさんが話を続ける。


「早速ですが私共と致しましてはどの様なお礼が宜しいか考えあぐねていまして、是非遠慮なくご提示いただければと考えております」


「賢明な判断だ、こちらとしては素材の買取とドラゴン素材で武器防具を作れる鍛冶師を紹介して欲しい」


事前に話し合ってもいないのにスラスラと話を展開させるシオンに驚き、そして私にも利点があると言っていたのはこの事かと納得した。


「ドラゴン素材をお持ちなのですか?」


オッカムさんが半ば腰を浮かしテーブルに手を突き身を乗り出し驚いている。


「ここで買い取って貰おうとも考えている」


そう言えばドラゴン素材は領主か王都じゃないと買い取れないと言われていた事を思い出した。


「本当ですか! 宜しいのですか? ドラゴン素材ですよ!!」


「勿論だ、買い取れるところが少ないと聞いて困っている。できる事なら少しでも処分したい」


「本当に宜しいのでしたらこちらとしては思ってもいない申し出に驚いています。勿論できる限りの高値を付けさせて頂きます。それでですがちなみにドラゴンのどんな素材をお持ちかお伺いしても宜しいでしょうか」


オッカムさんが確認したいというので私は肉・皮・爪・牙・鱗・目・血・臓物等一通り一つずつをマジックバックから取り出し、テーブルに乗せて行く。


「いったいどんなドラゴンを倒したらこれ程の素材が手に入るのですか・・・」


オッカムはテーブルの上に積み上げた素材を目の前にして信じられないとでもいう様に頭を振る。


「確認だが、この商会ではこれらを幾つ買い取れる?」


「えぇぇ~~! ・・・この他にもまだお持ちと言う事ですか?」


「幾つ位あるんだ」


シオンは私の方へと顔を向け顎を上げる様にするので、私は手にしていたカップを置き改めて数を確認する。


「肉は300を超えますが、その他は100から150前後と言った所でしょうか」


その数を聞きオッカムはまるで魂が抜け出たかのように顔色を青くし目を剥いたまま呆然としている。


私としてはこのドラゴン素材はルリとシオンが手に入れた物なのでその扱いは二人に任せるつもりでいたが、ここまで強気な態度で交渉しているシオンの考えを計りかねていた。


(何か考えがあるの?)


いまだ放心状態のオッカムを尻目にシオンに念話で聞くと


(この街の悪人を誘き出したいのでしょう)


ルリが答えた。


(どういう事?)


(この国で貴重なドラゴン素材を扱う者が居ると噂になりその出所を探る輩が現れる。そこでドラゴン素材を私達が多数持っているとなればどうなると思いますか?)


(私達を襲ってでも手に入れたいと考える人が出ると言う事?)


「そうなれば安易に他人から奪おうとする輩は一網打尽だ」


シオンが怒りをおびた声を出した。


(でもさぁ、ドラゴンを倒すほどの実力者だよ、簡単に奪えると考えるものかな?)


(他人から奪おうと考える奴らは頭は良くない。故に手段を択ばず群れれば大丈夫だと思うだろう)


(思うつぼってやつですか)


私は思わずそう呟いていたが、本当にそう上手く行くものかと首をかしげていた。



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