助けてみた2
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盗賊に案内され辿り着いた場所はとても小さな村とも呼べない場所で、元はこの地で僅かばかりの畑を耕し辺りの魔物を狩って暮らしていただろう家が8棟建つだけの小さな集落だった。
ルリとシオンが村に残っていた盗賊団の頭と残党を討伐し村の中を念入りに見て回ると、幼女から中年迄幅広い年齢の女性が6人も発見された。
明らかにここで何をされていたかが分かる程に怯え目も虚ろなその様子に私は思わず目を伏せた。
多分彼女たち以外はきっと殺されているのだろうと思うと怒りが込み上げたが、今私にできる事など何も無かった。
シオンはこの国は治安が悪いと言っていたがこれ程なのかと少しショックも覚えていた。
食べるのにも困る程に飢えた人達や冒険者になり切れなかった人達は他人から奪う選択しかしない国なのかと思うと、折角シオンが守護する国なのにと悲しい気持ちにもなった。
結局強い者や狡賢い人しか生き残れない様な国であって欲しくない、着いたばかりの国でいきなりの出来事にそう願っていた。
するとルリは瑠璃色のとても綺麗な羽を私に手渡してきた。
「この羽には癒しの効果があります、きっと身体を癒し嫌な記憶も忘れさせてくれるでしょう」
多分これは聖獣の姿のルリの羽だろう。
ルリの羽にはそんな効果もあるのだと知り驚くがどこか納得していた。
「その前に終わらせたい事がある」
シオンはそう言いながら盗賊団が溜め込んでいた宝を漁りだす。
「警察の肥しにされるくらいならこの女達に分け与えたい」
そう言うと私に現金を入れていた小袋を女性の人数分複製させ、そこにお金を詰め彼女達に握らせた。
「これからの生活の足しにできるだろう。嫌な事は忘れてこれから先の人生を楽しめ」
悲しそうに願う様に言うシオンの姿を見て私も心からそう願った。
それからルリとシオンに促されルリの羽で彼女達を撫でる様にすると、一瞬の間彼女達の身体が淡い光に包まれると穏やかな表情を浮かべ眠った様だった。
「宝がまったく無いとなると我々迄怪しまれる恐れがあるが、おまえの欲しいものがあれば持ち帰ると良い」
シオンにそう言われ、宝を物色して取り合えず私の持っていない物を複製して頂いておいた。
ついアイテムコンプを意識してしまいそうしたが、盗賊団が奪った物を奪うのは何となく盗賊と同じ罪を犯す様で後ろめたかった。
シオンが言う様に他の腹黒い奴らの懐を肥やすだけだと分かってはいたが、私にはまだ令和のコンプライアンス意識が残っている様だった。
「彼女達を街まで送り届けましょう」
ルリのその提案に私も同意した。
折角忘れ去ったであろう嫌な記憶を警察に尋問され思い出す事になるのを懸念してだった。
それから村の外にあった荷馬車に布団を敷きそこに彼女達を寝かせ私達は村を後にした。
御者台にシオンと私が座りルリは荷台に座った。
目を覚ました彼女達の話を聞き説明するのにはルリが適任だろうと思ったからだった。
そして結局街ではなく、近くにあった村の教会に寄付金と一緒に彼女達を託した。
街へこのまま連れて行っても人が多いだけで、彼女達の癒しになるとは思えないというルリの意見からだった。
街へ行きたいと本人たちが望めば、それは自分達で如何にかすべきだとシオンも言う。
私も最後まで彼女達の面倒を見る程の責任も負えないし、結局それが妥当なのだと判断して納得した。
この国で最強装備を整え高難易度のダンジョンに挑むと意気込んでいたのにと少しばかり肩を落とし、もしかしたらこの先シオンによる世直し行脚の可能性もあるのかと考えていた。
すると何となくファミコンゲームの水〇黄門を思い出し、何故か『残念ですな〇門様』のあの忌々しいセリフが音声付きで頭に響いてきたのだった。