ダンジョンに籠ってみた
転職ができる神殿を目指すは良いが問題はその為のルート選びだ。
この国は少し大きな島大陸になっているので、別の大陸に渡る為にはまず船が必要になるのだ。
しかし自分の船なんてのはそう簡単に手に入れられる筈も無く、かと言って港街から船に乗るにはかなりの代金を必要とする。
そのせいか当然勇者達にはなるべくお金の掛からないルートを見つけるためのイベントが用意されていた。
そしてそのイベント終了後に開通される妖精の道はその後もイベントをこなす度にこの世界のありとあらゆる場所に繋がって行き、魔王の元へ到達する為にも必要なイベントだった。
なので今の私では妖精の道は絶対に通行不能。もしそのルートを通るとしたら弟より先にそのイベントを終わらせるか、または弟が冒険を始めるのを待ってその後を追いかけるしかないが、どちらにしても面倒くさい事この上ない。
と言う事で、私に選べる選択は船で渡る一択なのだがその渡航代金をどうするかだ。
この辺のスライムやカラスの魔物相手に渡航代金を貯めるのはどれだけ時間が掛かるか分からないので、少し危険だがこの国にあるダンジョンに籠る事にした。
幸いな事にそのダンジョンには宿屋と商店が置かれた魔物の現れない場所もあった。
そこそこに強い魔物も現れるが回復も可能なので魔物の討伐をコンスタントに出来るのなら何の問題も無く籠る事ができる。まるで今の私の為に用意されたかのような場所だ。
それに少々戦い慣れて来てもいるし装備も一応整えてある。能力の実で少しばかりのドーピングも済ませてあるとなればここのダンジョンで手古摺る事はまず無いだろう。
それに確かこのダンジョンの宝箱からは素早さの実が手に入った筈。そんな事を考えながら私の足は意気揚々とダンジョンへと向いていた。
このダンジョンは海辺の洞窟を抜けて別の出口から地上に出ると5階からなる塔が建っていて、その塔がそのままダンジョンとなっていた。
肝心の宿屋などは地下にあるので様子を見ながら1階2階と攻略して行くが、当然その辺りの階層の魔物は一撃で倒して行けた。
魔物も多くても4匹位までしか群れないので然程苦も無く素早さの実を手に入れる事ができた。
しかしさらに欲をかき3階へと進んでみると厄介な事に魔物は2匹から多いと8匹と群れを成す様になり、中には状態異常を引き起こす攻撃をして来る魔物も居て忽ちに大変になった。
当然状態異常攻撃をして来る魔物から倒してはいるが、やはりソロで戦っていると当然攻撃を受ける事も多く冷や汗をかく事も何度かあった。
これはもう相手に攻撃をさせない程素早さを上げるか、攻撃されてもたいしてダメージを受けない程防御力を上げるかしないと無理だな、と考えながら初めて薬草と毒消し草を口にした。
が、これがまた何で丸薬やポーションにしないのかと言う程食べ辛い上にとても不味かった。
このゲームではまだ薬やポーションと言うアイテムは開発されて無くて、状態異常はすべて草で治していた。
しかし現実に薬草を口にしてみるとあり得ないだろうと言う不便さだった。
こんな物戦闘中に口にしたらまず薬草を噛み締めている間に戦闘が終わってしまい効果が表れるのは戦闘後だろうし、その不味さに悶絶して隙を作り返って危ないわと考えた。
どう考えたってこんな薬草で一瞬で回復するなんてあり得ないだろうと思っていたが、飲み込みさえすれば途端に効果が表れる不思議。
冒険者達はこの草をもしかして丸呑みしているのか?
いやいやいや、無理だから。ゲームでならともかく現実では絶対無理だから!
それに消化吸収の原理はどこへ行った?
しかし回復の手段としては勇者や僧侶や賢者が使う回復魔法でも無いと無理なので、ソロの今の私では薬草に頼るしかない。
となったらこれはもう自分で丸薬なりポーションなりに作り替えるしかないと思うのだった。
リオン
盗賊
レベル 5
HP 45
MP 32
力 92
素早さ 41
体力 19
賢さ 16
運の良さ79
固定スキル 鑑定 複製
装備 ブロンズナイフ 皮の鎧 皮の帽子
ダンジョンの宝箱で木の帽子や旅人の服を手に入れたが木の帽子などダサすぎて皮の帽子より防御力が高いとはいえ被る気にはなれず、当然旅人の服と共に売ってしまった。
複製できるまで持ち続けることを諦め、もう既にアイテムコンプよりお金だと気持ちを切り替えている自分がいた。
それからレベルが上がりMPが増えた事で能力の実が1日に2個複製できるようになった。
これは本当に嬉しい事だった。
と言う事は能力の実の複製に必要なMPは15と言う事になるだろう。
他にも複製できるものが増えたかも知れないが、取り合えずステータスUPを優先させるために複製の検証は先送りにする事にした。
そしてできる事なら早くMPの実も手に入れたいと願うのだった。
現在の手持ちの金額 529G
渡航代金までまだまだ遠い・・・。