職業を決めてみた
取り敢えず街にある冒険者の館へと向かった。
ここは冒険者達が飲食を楽しむだけでなく、冒険者登録をしたりパーティー登録をしたり冒険者同士の出会いを斡旋する場所で、冒険者の財産を預けたりもできる場所だ。
今でいう所の冒険者ギルドの走りの様な場所なのだが、クエストの受注やアイテムの買取などはまだ行われては無く、あくまでも冒険者達が集う場所といった感じだった。
弟の勇者にはあらかじめパーティーメンバーが決められているのでここで登録をしてパーティーを組むだけなのだが、私にはそんなメンバーなど居る訳も無く、かと言ってここで適当に見つけるのも何だか怖い気がした。
まったく知らない人といきなりパーティーを組んで一緒に冒険を始めるなんて私的には考えるだけで魔物の討伐よりも恐ろしい。
まあ私は別に魔王を討伐して世界を救うなどと言う大それた使命など持ってはいない。なので無理に冒険を進める必要も無く、冒険者登録だけして地道にコツコツとステータス上げに力を入れる事にした。
冒険者登録の為にカウンターへ行くと私がまだ無職だった事で職業を選ぶことを勧められた。
職業に就くとステータスの上がり方も違うし何より覚えるスキルが変わって来るので勿論職業を選ぶことは大事なのだ。
しかし一度職を選んでしまうと転職をするのには色々と制限がかかり、そう簡単に転職出来ないのでこの初めの職選びはかなり重要なのだ。
今私が選べる職業は、魔法使い・僧侶・戦士・武闘家・商人・盗賊・遊び人なのだがどれを選ぶかは迷う所があった。
しかし考えてみたら勇者は転職はできないけれど、無職の私は条件さえクリアすれば転職し放題、スキルも覚え放題、そう思うと途端にコンプリート癖が騒ぎ出した。
ここで職業を決めた後転職する為にはまず職業のレベルを上げ、教会の総本山である神殿に行けば転職はできる。
それならば神殿近くで職業のレベル上げに勤しみ転職を繰り返せば職業コンプもそう難しくは無くなるだろう。
と言う事は、私がこれから目指す場所はその神殿。そしてそこへ辿り着くための職業選びが今の最重要事項となる訳だ。
簡単レベル上げの為に必要なスキル『口笛』を手に入れたいが、その口笛を覚えるのは『遊び人』だ。でも遊び人でソロで神殿迄辿り着くのはきっと至難の業となるだろう。
何しろその名の通り戦闘でも遊んでしまう事が多く、敵が弱い内は良いが自分より少しでも強くなると殆どお荷物でしかなくなる。そう考えると今現在ソロで遊び人で冒険をするのは不可能と言えよう。
と言う事は、同じような理由で魔法使いも僧侶もまずは除外する事にして、取り敢えず神殿に辿り着いて基礎ステータスを上げてからの転職候補にした方が無難で安全だろう。
武闘家や戦士などの前衛職は戦闘に有利だろうが素早さやMPが低くレベルの上がり方も遅い。
となると旅を有利に安全に進めるためにはレベルも上がり易く素早さが高い盗賊辺りが良いだろうか?
何しろ盗賊のスキルの鷹の眼、忍び足、盗賊の鼻などは冒険には欠かせないスキルだし、何より何故か素早さだけでなくMPが高いのも複製をするにあたって魅力的だ。
商人特有のお金の稼ぎやすいスキルも捨てがたいが、結局はすべての職業をコンプリートしてからその後に自分に合った職業を選べば良い事だ。
リセット機能が無いのだから慎重になる気持ちもあるけれど『盗む』のスキルもアイテム入手の為には有難い事だろう。と言う事で、ここは職業を盗賊に決める事にした。
しかし職業が盗賊ってどうよ?
と、令和の時代から転生した私はそう思ってしまうのだったが、犯罪を犯さなければ良いって事なのだろうと自分に言い聞かせた。
そうして私は職業を『盗賊』にして当然名前も変えて性別を偽り冒険者登録を済ませた。
リオン
盗賊
レベル 1
HP 31
MP 25
力 77
素早さ 25
体力 15
賢さ 12
運の良さ79
固定スキル 鑑定 複製
少し心配していたが能力の実で上げたステータスもちゃんと反映されている様で安心した。
後は装備できなくなった銅の剣を売って装備を整え直していざ目指すは神殿と気分を新たに街を出るのだった。
装備 ブロンズナイフ 皮の鎧 皮の帽子