決心をしてみた
チャラ男と腹黒僧侶の事が少なからず気になりしばらく様子を窺っていたが、彼らは自分達の職業を第三王子と従者とだと思い込んでいただけでやはり無職だった様だ。
冒険者としての職業の事は知っていたらしいが、その職業にどうしたらなれるのかなどを知らないとは随分と情報に隔たりがある人達だと思わずにいられなかった。
チャラ男はイメージ通り戦士に腹黒僧侶は僧侶に職業を設定し、新たに魔法使いと盗賊をメンバーに加え無事パーティーを作る事ができた様だった。
それにしても見ず知らずの人と簡単にパーティーを組める彼等って本当に凄いと思ってしまう。
相手がどんな人かも分からないのに心を許し四六時中一緒にいる等どうして出来るのだろう。
ましてや良い人そうに見えて悪人だとか、あの人には良い人でも私には冷たいなど自分と合うとか合わないという問題もある。
何より同性ならともかく、女は男に服従するのが当然と考えている男とだなんて今のところ私には絶対に無理な話だ。
家族の事を思い浮かべても虫唾が走るのに、見ず知らずの他人となんてどう考えても無理だ。
お節介を焼いた責任上彼らの様子を見届けた私は港街へと戻る事にした。
そう言えば彼らの名前も聞いていなかった。
もっとも彼らも本気で私とパーティーを組みたいと思っていたのなら自分達から名乗っただろう。
それをしなかった時点で私をかなり下に見ていたか、利用する事しか考えていなかったか、女だと思って侮っていたか、何にしても軽く思われていたのは確かだろう。
それに私が好きでしたお節介だとはいえお礼も言われていない。
はぁ~・・・。別に何かを期待した訳じゃないけれど、複雑な気持ちを抱え深くため息をついた。
良く溜息をつくと幸せが逃げて行くと言うが、ストレスの発散には良いらしい。
聞いた話なので確証は無いが、ストレスは例えば汗だとか声だとか身体から何かを出すと発散されるそうだ。
なので食べると言う行為は身体に入れる事になるのでストレスの発散を考えると止めた方が良いらしい。
実際私も食べてストレス発散した気になってもその後の体重の変化でさらなるストレスを抱える事になっていた。
街に戻ったら今度は何を食べようか。ストレスの発散の為では無く気分を切り替える為に考える。
あの街は私の食べたいがいっぱい詰まった食の宝庫だから、何ならあの街に永住しても良いかも。
そんな事を考えながら私は気分を新たに街へと戻った。
茶店でみたらし団子と草餅を食べ日本茶を啜りながら街行く人を暫く眺めていたが、やはりこの街から移動する事にした。
私がこの街の一員として永住する姿が想像できなかった。
冒険者の姿もあまり見かけないし、何より他の地に行けば新しい何かに出会えるかもしれないという期待を持ちたかった。
それにその気になれば転移魔法でいつでもこの街に戻って来られる。
そして神殿で思い出したイベントが気になった事もあるし、折角だからこの際私も宝玉を揃えてみようと思ったのだ。
弟勇者の物を取り上げる訳じゃない、先にイベントを済ませてしまうだけだ。
もう既に一つ済ませてしまったのだからこの先のイベントを幾つ済まそうと関係無いだろう。
肝心なのは弟勇者が宝玉を手に入れられれば良いのだろうから。
私はそう思い立つと、あちこちで起こるだろうイベントを弟勇者より先に解決する決心をしたのだった。