急いでみた
その晩は内裏の様な屋敷内にある豪華な一室を提供され泊まったのだが、なんとあの巨乳で妖艶な女王様が部屋に来た。
これはあれですか、何と言うか勇者に有りがちなハーレム系のムフフなイベントですか?
ゲームの中ではそんなイベントなど無かったけど、現実になった世界ではエロゲやラノベにありがち設定が隠されていたんですか?
強者と言うだけで簡単に靡く巨乳なんて、女の私からしたら脳みその無い発情期の動物以下だろうとしか思えない。
もっとも強者の遺伝子を残そうとする動物の本能と考えれば少しだけ納得もするが、何にしても女は男の所有物女は男の言いなりという古い考え方から来ているとしか思えない展開。
その上部屋にまで来てこうして迫られると男装して男と振舞う今の私には恐怖でしかない。
私はその巨乳で妖艶な権力者を必死になって部屋から追い出し、この内裏での長期の滞在を望んでいたがそんな事はきっぱりさっぱり諦め朝になるのを待って屋敷を出た。
すると今度はあの生贄の少女に纏わりつかれた。
良く見れば可愛くて清楚で純情そうなその少女がほんのり頬を染めて擦り寄って来る姿にコイツもかと辟易した。
昭和の時代の男達の頭の中も現代とまったく変わらないのですねと思いながら必死になって少女から逃れた。
このムフフなイベントは弟勇者に用意されたものなのだろうに、ヤマタノオロチを倒した事で私が横取りしてしまったのかと思うと何だか気が重くなった。
弟よ本当にごめん。私は弟に対して初めて心から申し訳ないと思った一瞬だった。
それにしても、ここまで念入りに用意された勇者イベントなら、どうしてこのイベントを私が起こす事ができたのかが不思議で仕方ない。
私が航路を工夫して弟勇者より先にこの国に入国したからか?
でも先回りと言うなら私と一緒にもう二人この国に降り立った冒険者が居た筈で、その人達はどうなったのだろう?
思うにきっと、イベントは条件さえ揃えば自然と誰でも起こせるのかもしれない。
だから結局は誰が解決するかが重要なのであって、その解決しうる存在が勇者なのだろう。
そして私はたまたま『複製』と言う有難いスキルとゲームでの知識から、うっかり強くなってしまい偶然イベントボスを倒せたというだけだ。
まぁ考えても仕方ない、何にしてももうすべて済んでしまった事。
私は勇者では無いし魔王も討伐しない。
これからも思いつくまま気ままに冒険をするだけだ。と当初の予定通り米に醤油に味噌を購入しその他にめぼしいものは無いかと街中を散策した。
しかしどこへ行っても誰に話しかけても感謝されおまけをして貰えるのは嬉しいが、英雄扱いはどうも慣れないし笑えなかった。
なので長期滞在も考えていたが早々にこの国を出る事を決め船着き場へと行ってみると、私が乗って来た船はまたいつここに立ち寄るか定かでは無いと言われる。
いやホントまいった、帰りの事までまったく考えていなかった。
だとしたらこのままあの妖艶な権力者と清楚な少女から逃げ回りながら船を待つしか無いのかと頭を抱えていると、近くにある対岸の大陸へ渡るだけで良いなら船を出している村があると聞いて、私はその村へと急ぐ事にした。
今はもうこの国からと言うよりあの女たちから一刻も早く逃げ出したい。
一応料理は堪能できたし欲しい物もかなりの量を確保できた。
これでしばらくは日本食を自分で作る事も可能になったし、この国でやる事はこれで充分だろうと思っていた。
ちなみに例の宝玉はやってみたら複製できたので複製した物はこっそりとインベントリにしまってあるのだった。
リオン
盗賊
レベル 32
HP 299
MP 999
力 999
素早さ 999
体力 327
賢さ 149
運の良さ 999
固定スキル 鑑定 複製
装備 闇の衣 ドラゴンブーツ ドラゴンローブ 復活の指輪 グリンガムのムチ
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