神殿を目指してみた
神殿がある国の大陸に到着すると同じ港街でも何処か様子が違っていた。
自分が育った大陸の港町は行き交う人達ものんびりとした感じで、まさに田舎の港町と言った雰囲気だったのにこの街にはそんな様子はまったく無かった。
商店の種類や数は色々とあって何気に都会風なのに行き交う人達はみな静かな雰囲気で、神殿関係者とみられる人も沢山目に入り何よりその人口密度の高さに驚いた。
ゲームの中の街や村などはどこも建物は数件、当時はNPCなんて言葉は無かったがゲーム内で同じ話を繰り返すキャラが数人程度だったのに、実際にはかなりの人が生活していた。
そしてこの街も気を付けて歩かないと誰かとぶつかってしまいそうな程に人で溢れていた。
それにしても、考えてみたらこの街でも確か勇者イベントがあった筈。
しかしそのイベントが起こっている様子が無い所を見ると、勇者はその前段階のイベントを終わらせていないのだろう。
魔王に関するイベントではなく、所謂勇者のレベル上げの為に用意された様なイベントだからスルーも可能でもあるけれど、こんな所で勇者の現在の進捗状況を確認できるとは思わなかった。
でももしかしてあれか、そもそも勇者が居ないと起こらないイベントなのか?
それともこの人口に圧倒されてただ単に私が見逃しているだけか?
何にしても私はゲーム内のイベントや情報を知っていると言うだけでそもそも何の関係も無かった。
私は私のやりたい様に人生を楽しむと決めたのだ。
第一魔王の恐怖がこの世界のどの辺にあるのかがイマイチ理解できても居ない。
このゲームでは魔王と言う存在があり恐れられていると言うだけで、どこかの国が侵略されている訳でも無く私が育った国にしても何か被害がある様には思えなかった。
ただ単に勇者は魔王を倒すものと言った概念だけがある様な感じだった。
寧ろ各国に存在するイベントボスの方が余程国民を困らせている。
弟の勇者一行はそのうちのどこかで躓いているのだとしたら、きっとその国の国民は困っているかも知れないな。
でもかと言って私が如何にか出来る問題でも無いのだろうし、ここは当初の予定通り転職のために神殿を目指すだけだ。
しかし今の私はこのまま神殿を目指してもまだレベルが足りず、すぐには転職出来ない。
転職するには最低でもレベルを20までは上げる必要がある。
盗賊が覚えるスキルはそう多くは無く、レベル20になればその全部を覚える事になるのでレベルさえ上がればすぐにでも転職は可能だ。
できれば神殿に到着するまでにはレベルを20にしておきたいけど、現実的に考えて今はちょっと微妙なレベル17。
なのでこのグリンガムのムチの本来の性能を確認する為にこの街の掃除もする事にした。
きっとこの街にもネズミの魔物が発生している場所があるに違いない。
私は側溝の流れを辿って街外れへ行くと、やはり思った通りドロドロになった溜まり池がありネズミの魔物で溢れかえっていた。
このネズミの魔物達はこの池に流れ着くゴミを餌にして繁殖しているのだろうし、多分ここを離れたら他の魔物の餌となっているのだろうとそう思えた。
何にしても私にしたらお金と経験値が一度に短時間で稼げる美味しい場所だ。
早速ネズミの魔物を攻撃すると期待通り魔物達は一斉に私に向かって突進を始めた。
そしてグリンガムのムチは期待以上にネズミの魔物に攻撃を重ねて行き、みるみるうちにその数を減らして行く。
ブロンズナイフでチマチマと一匹づつ倒していた時とは雲泥の差だった。
何なら逃げようとする敵にまでムチが届く範囲で攻撃が伸びるので気持ち良い位だった。
体力を減らす前にあっけなく一掃できてしまい寧ろ何か物足りなさを感じる位だったが、取り合えずレベルが上がったので一安心した。
これなら神殿に到着する頃にはレベルも20に届くだろうと思うとその足取りも軽くなった様だった。
リオン
盗賊
レベル 19
HP 103
MP 81
力 132
素早さ 105
体力 53
賢さ 48
運の良さ 193
固定スキル 鑑定 複製
装備 闇の衣 ドラゴンブーツ ドラゴンローブ 復活の指輪 グリンガムのムチ
現在の手持ちの金額 1182G