巡り来る季節
今年最初の雪が降ったと、夕方のニュース番組でお天気お姉さんがにこやかに報じている。
出口は何をするでもなく、ただぼんやりとテレビの画面を見ていた。
そういえば、今日はやけに冷えるなと、部屋着の上にパーカーを羽織ったのは、午後になってからだったろうか。
キャンプまでまだ少し間があるこの時期は、少し長めの冬休みのようなもので、出口は毎年、里帰りするか友人もしくは恋人と旅行に出かけたりしていた。だが今年は何故かそういう気になれなかった。
いや、何故か、というのは嘘になるだろう。その原因を、出口はいやというほど理解していたのだから。
死ぬまで一緒に、とか、この先ずっと、などと思っていた訳ではなかったが、ただ少し、失うには早すぎて、忘れるには遅すぎた。
テレビの画面は、電飾に彩られた街にひらひらと舞う雪の映像を映している。
出口は立ち上がって部屋を横切り、ベランダに面した窓のカーテンを捲って外を見た。ニュース映像と同じように、白い雪が舞っていた。
ガラスに近付けた鼻先から、冷気が静かに伝わってくる。出口はぶるりと身震いし、自分の呼気で少し曇ったそこを拳でぐい、と拭うと、カーテンを閉めた。
生まれのせいか、暑さに強い奴だったから、冬になったらきっとひどく寒がるんだろうな、となんとなく思っていたのだが、それを確かめることは多分できないのだろう、と思って、未だに賑やかしく喋るテレビの電源を、ぶつん、と切った。