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1-4 文明から切り離されて

 俺たちはまず水分の確保を優先することにした。

 渚が見つけたポ◯リの木に向かい、可能な限りポ◯リを回収する。

 どうやって持ち運ぶのかという問題になったが、俺が着ていた制服のYシャツを風呂敷代わりに使うことで一旦解決した。


「えー、別にボクのワンピースを風呂敷にしてもいいよー?」

「そんなことしたら渚が半裸になるだろ!」

「いいのにー。今日お気に入りのブラつけてるから、ちゃんと上下も揃ってるし」

「え!? まじで!? ちょっと見せて!」


 ……。

 ………………。

 …………………………ふぅ、最高だったぜ。


 渚の下着を見せてもらいました。色は水色の可愛らしいやつ。超エロかったです。あと、やっぱりちゃんと”ついてる”んだなって思いました。もっこりもっこり。

 自分は童貞ですが、いやむしろ童貞だからこそ、性に対しては積極的です。じゃあなぜ未だに童貞のままなのか、それは訊かないお約束。


 と、そんな悶着があったものの探索を再開する。最初に目覚めた地点からはそれなり移動したはずなのだが、いつまで経っても人の痕跡らしきものは見つからない。

 右手側には青く美しい海。左手側には深く広大な森。景色は一向に変わらない。

 水分補給ができるとはいえ、炎天下の中で歩き続けるのは骨が折れる。


「いくら歩いても人の痕跡はないな」

「だね。さすがのボクも疲れちゃったよ。休憩しよ」


 俺たちは日陰を見つけてそこに腰を下ろす。

 時計はないが、体感で一時間以上は歩いたと思う。


「現代日本でこんなに歩いて、人工物を一切目撃しないってのはあり得るのか?」

「やっぱり俊介の言っていた通り、ここは日本じゃないのかもね」

「うーん、だとしたらここはどこなんだろうな? 外国だとしてもこんなに人気がないのは違和感があるし。というか、スポーツドリンクが木に実ったりする時点で現世ではないのかもな。神隠しとかそういうやつ?」


 物理現象として考えたら埒があかなそうだ。

 俺たちは何か大きなものに巻き込まれた、と考える方がスッキリする。


「ボクたちって神隠しにあうようなことしたのかなぁ。別にそんなに悪いことはしてない気がするんだけどなぁ。俊介は心当たりある?」

「悪いことか……。はっ! まさか……!」

「も、もしかして心当たりが?」

「あぁ、あれは俺の許されざる咎だ」


 階段ってありますね、階段階段。

 誰もが思い浮かべる普通の階段を想像してください。階段ていうのはさ、至るところにあるわけですよ。駅、商業施設、そして学校。

 その中でも特に学校の階段はさ、女子高生が上り下りしているわけですよ。

 けしからんことに最近の女子高生はスカートが短い! あんなに太ももを見せびらかして……じゅるりじゅるり。

 そう、それが起こるのは極めて限定的な場面。スカートの短い女子生徒が階段の上段にいて、自分がまさしく階段を上ろうという時だ。

 肉付きのいい太ももに目を奪われているのも束の間。俺の中の悪魔が声を発する。


 ————あと数センチ屈めばパンツが見えるんじゃね?

 いけないことだと分かってる。覗き込みは立派な犯罪だ、許してはいけない。

 だが、数センチなんだ。ちょっとだけ膝を曲げるだけなんだ。

 あからさまじゃなく、ほんの少しでいいでいい。そこにはもはや邪な気持ちはない。ただパンツが見たいという純然たる思いだ。


「教えてください、神様。この数センチは罪ですか?」

「長々と何を言ってるの!?」

「ふっ、赦されるとは思ってないさ。だが、これだけは言えるぜ。俺は同じ場面に遭遇したら何度でも同じことをすると……な。自分の行動に後悔はない」

「な、なんでだろう。ただただ最低な覗き魔なのに、まるで信念のもとに行動をしていたかのように錯覚させられるよ!?」

「信念か……そんな大それたモンじゃない。俺はただ覗いただけだ……どんな理由があってもそれは最低なことだ」

「覗き魔が格好つけるのやめてくれない!? 開き直っている分、普通の覗き魔よりももっとタチが悪いと思うよ!? というか、この程度でって言ったらあれだけど、神隠しの理由としては弱すぎない!?」


 結局のところ、俺も渚もこんな場所に連れて来られるような理由に心当たりがないというのが正直なところだった。


「俺から言い出しといて申し訳ないが、正直こればかりは考えても無意味だよな」

「……だね。それよりは明日を生き残っていくことで精一杯だよ」

「暗くなる前に寝床を確保しないとな。あとは食料も——————」

「ねぇ、あなたたちも遭難者?」


 これからのことを考えていた矢先、川のせせらぎのように澄んだ声が響く。

 慌てて声がした方に視線を向けると美少女がいた……なぜか生まれたての姿で。


『ええええええええええええええええ!?』


 俺と渚はたまらず声を上げてしまう。急に声をかけられたこと、声の主が超絶美少女であること、なぜか全裸であること、それら全てをひっくるめて。


「元気がいいのね」


ぽかんと間の抜けた声を発する美少女。自身の状況を理解しているのか。

 一面の肌色に目のやり場が困る。白く透き通った、細く長い足、引き締まったウエスト、ほどよいサイズのおっぱい。………………あれ?


「なんなんだ! この謎の光は!」


 本来であればおっぱいの中心にあるはずのものが、謎の光によって隠されている。

 ちくしょう、もしこれがブルーレイ版ならこの光は無くなってくれるのか!? だとしたら円盤を買うのは必須だぞ。美少女の突起物を拝めるなら金に糸目はつけない。


「この光、邪魔なのよね。目がチカチカしてたまらないわ」


 美少女はうんざりとしていた。重いため息をつく。

 一体、この光はどういう原理なんだ。光の屈折や物理法則を完全に無視して、謎の光は彼女の恥部を覆い隠している。


「これはどういうことなんだ! 渚、確認のため全裸になってもらえないか!?」

「わかった!」


 渚はワンピースを脱ぎ、ブラを外し、するりとパンツを脱ぎ捨てる。

 自分で提案しておいてあれだが、渚は全く抵抗することもなく全裸になってしまう。


「なぜだ!? どうして渚の胸部にも光が!? 渚は男のはずだろ!? ……いやむしろ、この場合は隠されているの方がいいな! ナイス、光!」


 この謎の光もなかなか分かっているな。エロの真髄を理解している。

 俺はいつも思うんだ。エロいことに対して規制を入れるやつほど、実はめちゃくちゃエロいんじゃないかと。エロいからこそ、それがエロいのだと理解ができる。

 言うなれば、深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているということだ。


「俊介が全裸になった場合はどうなるんだろ……? ちょっと試しに脱いでみてよ!」

「そうだな。もしかしたら俺の乳首にも規制が入るかもしれないな。今の時代はなにかと厳しいからな。どれどれ」


 俺はTシャツ、ズボン、パンツを脱ぎ捨て、裸体を世界に晒す。

 ふむ……見たところ乳首に規制はかかってないな。股間はどうなのかというと————


「ゾウさんだ!」


 渚が俺の股間を指差し可愛らしい声でのたまった。


「ほんとね、デフォルメされて愛らしくなってるわ」


 謎の全裸美少女も俺の股間を見て微笑ましそうにしていた。


「俺の息子ってそんなに可愛らしい見た目してたっけ? ……なんじゃこりゃ!」


 おそるおそる自分の股間を見てみると、そこにはバラエティー番組などで股間に使用されるゾウのモザイクがあてがわれていた。


「これなら女の子でも安心して見れるね!」

「はたしてそれは喜んでいいのか……というか、なんで渚は違うんだ!?」


 理屈で言えば、渚のモザイクもゾウさんになっていないとおかしいだろう。


「ほら、ボクは需要的にこっちのほうがいいでしょー」

「うーん、それはたしかにな。渚にはあくまで中性的でいてほしい、という製作陣(謎の光)の意図が込められているのかもしれないな」


 胸、股間にモザイクをしていると、渚は胸が小さい女の子にしか見えない。

 めちゃくちゃエロい。エロ可愛い。男の娘は世界の宝です。


「ねぇ、あなた。そのゾウをちょっと動かしてもらえる?」

「ふぇ?」

「男性器の揺れとモザイクの動きが連動するのか気になったの」

「……なるほど、やってみますね!」


 美少女たっての願いとあれば、無下にできないのが男というもの。

 俺はリクエスト通りゾウさんを上下左右に動かしてみた。ぶらぶら〜。


「すごいよ、俊介! 連動して鼻の部分が動いてるよ!」

「こんな風にぶらぶらと動くのね。興味深いわ」


 これ、大丈夫か? 

 映像的にはあくまでゾウの鼻が動いているだけなんだが、地上波で放送できるだろうか? あまりにも動きが生々しくて不安になるな。それにこんな美少女たち(渚は男だけど)に股間を凝視されるとなんだか………………パオーン!


「わぁ! ゾウさんの鼻がそり立った!」

「ふむふむ、これがいわゆる、ぼ————」

「ちょ! 見ないで! いや、えっち!」


 いくらゾウさんのモザイク越しでも恥ずかしすぎる! 

 じっと見られるのは恥ずかしいという乙女心(?)ってやつです。

 俺は冷静になって自分の股間を隠します。


「あぁー、俊介のゾウさんがー」

「残念ね、もう少し観察したかったのに」


 二人はとても名残惜しそうにしていた。

 まったく、ここに来てから出会う人間には変な奴しかいないな。

 定石通りなら「いやー!」「きゃー!」「へんたい!」とか叫ぶのが定石ってもんだと思うのだが。


「————というか、あなた誰ですか!?」

「いまさら?」


 俺は全裸美少女にあらためて疑問を投げかけるのであった。

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