4-6 ラスボスが登場して
「あ、なんか明るくなってきましたねー」
「ほんとだ。俊介の言う通り、地下空間には明かりがあるみたいだね」
真っ暗な階段を慎重に下っていると徐々に光が見え始めた。
階段はおそらく螺旋状になっており途中何度か壁にぶつかったりしたが、文字通り光明が見えたのでひとまず一安心ではあるが————
「……つまり、鷺ノ宮を攫った何者かもそこにいる可能性が高いというわけだ」
「わたし、目を狙うわ」
「今回ばかりは許可します、秋津さん」
穏便な話し合いで済む、というのは希望的な観測が過ぎる。秋津さんの発想は猟奇的だがこれくらいの気概がないと太刀打ちできないかもしれない。
「みんな、無茶はだめだよ……?」
「……そうだな、渚の言う通りだ。今回の目標は『みんなでご飯を食べる』ことだからな。ちゃんと自分の身も案じてほしい」
「そういう俊介さんも厨二病みたいなことしないでくださいよぉ?」
「そうね。江古田くん弱いくせに調子乗るから」
「どんだけ信用ないんすか、俺……」
もうちょっと信用してもらってもいいと思うんですよね。
たしかにこれまでの言動には自分でも思うところはありますが、というかむしろ思うところしかありませんが。
「信用はしてないけど、信頼はしてるよー!」
「それ、何が違うんだ?」
「渚ちゃん良いこと言いますねぇ。まさにそんな感じですー」
「え、優ちゃんにもわかるの!?」
「わかってないのは江古田くんだけ」
「秋津さんまで……!」
信用と信頼。その言葉に違いがあるようには思えないが……。
「とにかく、頼りにしてるよ! リーダーは俊介なんだから!」
「ゆう達の命預けましたからねぇ。頼みますよー」
「江古田くんについていく」
「…………!」
三人からの無条件の信頼に胸が締め付けられるような感覚があった。
そうか、これが信用と信頼の違いってやつなのか。
信用には裏付けが必要だ、過去の実績とか言動とか現在の姿とか。一方で信頼というのは裏付けは必要ない。
信じたいから信じる。未来に期待する。言うなれば祈りのようなもの。信用がある種で打算的、合理的、性悪説的であるのであれば、信頼はその逆なんだと思う。
たしかに、信用は『値するもの』で信頼は『応えるもの』だからな。
「————はい! 任せてください!」
信じてよかった、と思ってもらえるように俺のなすべきことをしよう。
たまには熱くなってみるのも悪くないんじゃないかな。
「それじゃあ、簡単にこのあとの動きについて説明するからな」
三人と目を合わせて今後の作戦(なんて大したものではないが)について確認する。
まずは俺と渚が木槍を持って突入。まずは状況を把握し、鷺ノ宮を拉致した人物がいるのであれば、意図や目的について聞き出すように努める。
相手の戦力・規模も分からない。話し合いで解決するとは思っていないが、なるべく戦闘にならない方向に調整するのが得策だろう。
もし、交渉が決裂したら今度こそ本当に戦闘開始だ。目標は鷺ノ宮の救出。俺と渚が応戦している隙に秋津さんと優ちゃんで鷺ノ宮を助け出してもらう。
鷺ノ宮さえ奪還することができれば戦闘に置いて遅れを取ることもなくなるはずだ。鷺ノ宮の能力はそれこそチート主人公並みに強いからな。
「……ってな感じだけど。基本的には『いのちをだいじに』のスタンスで頼む」
三人は茶化さずに真剣に話を聞いてくれた。いよいよ……だからな。さすがに緊張感らしきものが漂ってくる。
「じゃあ、渚。準備はいいか?」
「うん、大丈夫!」
「秋津さんと優ちゃんはタイミングを見計らってもらう感じで」
「わかった」
「りょうかいですー」
……怖くないといえば嘘になる。それでもようやく手に入れた絆を失うほうがもっと恐ろしい。だから、ここは無理を通す!
「渚、いくぞ!」
俺と渚は階段の出口から勢いよく地下の空間に突入する。
目の前に現れたのは祭壇のようなもの。外観は四角錐台状になっており、底辺部分から頂点部部にかけて徐々に表面積が小さくなっている。これが空間の中央を陣取っており、四隅にある松明のメラメラとした明かりがそれを妖しく照らし出していた。
周囲を見渡しても鷺ノ宮の姿は見当たらない。
となると、この祭壇の裏側か、もしくは頂点部分に————
「あっはっはっはっは!!」
そんなことを考えていると甲高い笑い声が地下空間にこだまする。
年端のいかない少女が発するような声音。驚いて声が聞こえた方、錐台の頂点に目をやるとそこには小学生のような見た目の少女が仁王立ちをしていた。
長く色素の薄い髪を左右にまとめた髪型、所謂ツインテールというやつだ。
遠目で定かではないが顔立ちも整っているが……何というかすごく生意気そうな見た目をしている。そう思わされるのは、目がつり上がっていることやさっきのキンキンと甲高い声が原因だ。
「俊介、あれは……」
「俺たちと同じ遭難者なのか……?」




