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3-1 変な五人が集まって

「それにしても変わり者が集まったな……」


 数奇な運命に巻き込まれこの島に集った五人の高校生。

 あらためてメンバーを見渡す。

 クールでナイスガイな俺。キュートな女装男子の渚。頭のネジが外れている秋津さん。ギャルっぽいけど処女(断定)の鷺ノ宮。Hカップのキラリこと優ちゃん。

 これは……ちとバランスが悪くないだろうか。俺は心の中で外人風に肩をすくめて「やれやれ困ったぜ」と天を仰ぐ。


「その代表格が江古田くんでしょ!」

「待て待て。俺はちょっとおっぱいが好きなだけのごく普通の男子高校生だぞ」


 鷺ノ宮はなにかと俺を変人扱いするが、全くもってそんなことはない。

 おっぱいが嫌いな男子高校生がいるだろうか。いや、いないだろう(反語)。男子高校生なんてエロいことしか考えてないといっても過言ではない。


「江古田くん、わたしの触っとく?」

「俊介、俊介! ボクのも大歓迎だよ!」

「二人ともいつもありがとうございます、助かります」


 右手で秋津さんのおっぱいを、左手で渚のおっぱいを揉み揉みする。

 いやっほう! やっぱ、おっぱいは最高だぜ!


「だから、江古田くんのそういうところが変なんだって! 渚くんと秋津さんが変なのは重々承知したけど、それに応じる江古田くんも大概だからね!?」


 いや、まぁ……おっぱいくらいならいいかなって。だって、二人にはそれ以上のことも誘われてるしな。でも言われてみれば、二人に出会ってから俺の中のエロハードル(?)が下がっているような気はする。


「そうですよー、俊介さーん。ゆうもそーいうのよくないと思いますぅ。もし、今後も続くようなら考えちゃうなぁー。ね、俊介さん?」


 優ちゃんの含みのある発言。

……俺には分かる、優ちゃんが何を言いたいのか。

 きっと先程の取引の話をしているのだ。優ちゃんの助けになるようなことを続ければ、彼女のHカップおっぱいを揉ませてもらえるかもしれないという(勝手な解釈)。

 理由は定かではないが、彼女は俺が渚や秋津さんの胸を揉むことを好ましく思っていないようだった。……まぁ、常識的に考えればそうか。

 むむむ、難しい問題だ。目の前のおっぱいか、理想のおっぱいか。


 一九七二年におっぱい機会均等法が施行されて以来、この国においてはあらゆるおっぱいに貴賎はなく平等に扱うことが義務付けられている(?)。

 おっぱいに上も下もない。それがあるべき姿だ。……だが実際に格差は存在する。

 渚のおっぱいもいい。男だからおっぱいなんてあるわけないじゃん、と思っていたが仄かに感じる柔らかさが癖になる、男にもおっぱいはある。

 秋津さんのおっぱいもいい。彼女は今ノーブラでYシャツ一枚という状況なので一揉みする度に脳にがつんと衝撃が来る、これが『おっぱい』なんだと。

 どちらも甲乙つけがたい。素晴らしいおっぱいだと自信を持って言える。


 しかし、あのHカップおっぱいの前ではまるで大人と子供のようなもの。口では平等平等とは言いつつも本当の意味での平等は存在しない。

 だが、俺はそれでいいと思っている。不平等だからこそそこには争い、競争が生まれ、よりあらたな価値観が想像されるのだ。


 絶対王政に反発して民主主義のように。

 資本主義に反発した共産主義のように。

 巨乳原理主義に反発した貧乳自由主義のように。


 この対立構造が世界を進化させてきた。これぞまさしく弁証法だ。

 つまり、何が言いたいのか。……俺にもよく分からない。何言ってんだ、俺。

 まぁ、とにかくだ。


「渚、秋津さん! 異性に簡単に胸を触らせるなんてよくないですよ!」

「どの口が言ってるの!?」


 鷺ノ宮のツッコミは一旦無視だ。

 とにかく俺は優等生を演じることにした。理想のおっぱいのために。

 やはりおっぱいは大きいに限る。貧乳派のお前ら(だれ?)にいい言葉を教えてやろう。

 大は小を兼ねるってな!! わははははは!!


「俊介、ボクは男だよ!」

「そうか、同性ならいいのか」


 男が男のおっぱいを揉んだところで何も問題もあるまい。


「俊介さん(ニコリ)?」

「うん、同性同士でも胸を揉むなんてふしだらなことはよくないな!」


 優ちゃんのNGが出たので即刻取りやめます。

 ……うん、優ちゃんの笑顔は圧があるな。怖い笑顔ってやつ。

 渚は寂しそうにこちらを見る。やめろ、そんな目で見ないでくれっ! これもHカップおっぱいのためなんだ、許してくれ。


「それで、これからどうしますー? 忘れそうになりますけど、ゆう達は一応遭難(?)しているような状態だと思うんですぅ。いい加減ネットのない生活も限界なので、なんとか元の場所に帰る方法を考えましょーよー」

「……たしかにそれは考えないとだよな」


おっぱいおっぱい言っている場合ではなかった。

どうやってこの無人島から脱出するか。時間が経てば経つほど落命の危険はどんどん高まる。悠長にはしていられない。


「それも考えなきゃだけどさ、まずご飯にしない? ボクお腹すいちゃったよ」

「わたしもお腹すいたわ」


 渚と秋津さんはお腹のあたりをさすって空腹をアピールする。

 言われてみれば、昨日バッタ刺身を食べてから何も食べていなかったな。


「そうね、腹が減っては戦もできないっていうしね。じゃあ朝ごはん……もうそうそろ昼ごはんになりそうだけど、準備をしましょうか。食材は江古田くんと渚くんが確保してくれた分があるけど、五人分だとちょっと心もとないからもうすこし食材が必要かな」

「じゃあ、食材担当と料理担当で分けるか? 俺、一応料理できるけど……男は食材担当になったほうがいいよな?」

「え……? 江古田くん……料理できるの?」

「なんだ鷺ノ宮、バカにしてるのか。料理くらい普通にできるぞ」


 俺は地元静岡を離れて東京の学校に進学した。今、身を寄せている東京の家は母方の祖父の家であり、家事全般は俺が担当することになっている。

 ジイちゃんはまぁ生活力のない人で、バアちゃんが死んでからはそりゃもうすごいありさまだった。そこで家事担当が欲しいジイちゃんと東京での拠点が欲しい俺、二人の需要と供給が見事に合致しそのような状況が生まれたわけだ。


 なので、俺は一通りの家事ならだいたいこなすことができる。


「嘘! そんなの絶対にありえない!」

「……別に今時、男が料理できたっておかしくないだろ。それに鷺ノ宮自身さっき男女問題がどうとか言ってたじゃんか」


 ちょっと前に『料理はお母さんが作るもの』という固定観念は危険だ、みたいな感じで企業のブランド名やCMなどが炎上していたのが記憶に新しい。

 そうなのだ。今時男だから◯◯、女だから◯◯というのはよくない。だから、俺を専業主夫として誰か養ってください。働く女性、素敵だと思います。


 ……それはさておき、こういうジェンダー問題は鷺ノ宮が一番うるさそうだが、この態度は一体なんだと言うんだ。


「俊介さーん。実はですね、咲さんって全然料理だめなんですよぉ。いやね、ゆうが言えることじゃないんですが、ちょっとアレはひどすぎるといいますかー」

「なるほどな。そういうことか」

「う、うるさい! べ、べつに? 女だから料理できなきゃ、なんて前時代的な考え方はないけどね! こんな変態・江古田くんに負けるのが悔しいの!」


 うん。ジェンダー問題を気にしている人ほど、こんな風に男は◯◯、女は◯◯というのに縛られすぎている気がする。蛇の道は蛇、ではないが。


「ま、落ち着けって鷺ノ宮。今度料理について教えてやるからさ」


 ここは大人の対応といこう。料理だって覚えればすぐにできるのだから。マウントを取るようなことでもない。要は経験の問題だ。


「くぁwせdrftgyふじこlp!!」


 鷺ノ宮はヒステリックに叫び散らしていた。

 しまった、逆に大人な対応がよくなかったかもしれない。ここは相手に反論の余地を残してやるべきだったのだ。

 難しいな、人間関係は。勝ち方、負け方一つとっても上手い下手がある。


「咲さんは放置して役割分担しましょうかー」

「だな」


 鷺ノ宮は虚空に向かって何やら叫んでいるが一旦無視。

君子危うきに近寄らず。だって普通に怖いし。でもまぁ、今回は鷺ノ宮の意外な一面を見れたということでよかったのではないだろうか。

弱みを見せ合うことで人は仲良くなるって言うしな。

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