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九.

本日二回目

いちゃいちゃの九話です。

「それにしても、びっくりしたよね、まさか春香が佐保姫様に弟子入りして高天原に行く事になるなんて…」


 夏蘭は畳に胡座をかいて座る雪兎の膝上にしな垂れるようにして座り、雪兎はそんな夏蘭の長い金糸のような髪を先程から飽くことなくサラサラと撫で続けていた

 かと思えば夏蘭の両耳に引っ掛けられたアーチ状の髪飾りに指をかけシャラリと取り外す

夏蘭は耳を掠めた雪兎の指先やら腰に回された逞しい腕を意識してドックン ドックンとうるさくなる心臓にしずまれと両手をあてがった


「…自分にずっと引っ付いてた男が去って寂しいの?」


 雪兎がつまらなそうに言って

夏蘭の髪飾りをふわりと掌から念力で浮かせ、もて遊ぶように5本の指を動かす。空中で髪飾りはシャラシャラと三回転し、雪兎がすっと線を引くように人差し指を横へ動かすと髪飾りはそれに従うようにふわりと移動して部屋の隅っこの文机の上に乗っかった


 雪兎は夏蘭の頭上から髪の先まで川を流れるように掌を滑らせるとそのまま中指の腹でつっと夏蘭の背中の中心をなぞる。そうして夏蘭の桃の香りを堪能するように頭や首筋に顔を埋める


(雪兎の息が…唇が…肌に触れてくすぐったい…)


 夏蘭は動揺を悟られないようにと必死でいつも通りに話そうとしているのに、雪兎がそれを許してくれない


「べつにそんなんじゃないし…ただビックリしたってーーだけで〜〜…ね、雪兎、ちょっとま…」


「またない、おまえもう黙って…」


 まるで余裕の無い熱のこもった声が夏蘭の鼓膜を刺激する

(だから、その声反則なんだって…)


 照れ隠しに夏蘭が出した話題が春香の事だったのが雪兎の感情を逆撫でしてしまったのか、

それとも、今いるのが雪兎の部屋で、しかも二人きりであるという状況が雪兎の欲情を掻き立てているのか、どちらかなんて雪兎にしかわからない

 だけれど夏蘭だって雪兎に甘えたいし、もっといっぱいかまって欲しいのだ

だから番だと知ったその日がまだ終わらぬうちに雪兎の家までついてきてしまった


「雪兎…セツト…好き…」


 雪兎の胸に顔を埋めて熱に浮かされたように呟いた夏蘭の言葉に雪兎は血が沸き上がるような衝動と愛しさが込み上げて

 雪兎の中でプツリと音をなして何かが切れた


「お前さ…ほんとなんなの?」


 そう言って雪兎は夏蘭の首に強過ぎる程吸い付いて所有印を刻みこむ、初めて知る微かな痛みに夏蘭は非難めいた声をあげた「いッ!?た、セツト、何す…」


「…可愛い過ぎんのが悪い」


 夏蘭の言葉に被せるように言った雪兎はくっきりと紅く染まった印に愉悦を持って労るようにペロリと舌を這わせたかと思えば今度は捕食するようにカプリと甘噛みする


 そんな事を急にされた夏蘭はたまったもんじゃない

「ひゃあ!? やっ、くすぐった、ああん!…って、やっ、まって、まって、なんか変な声でちゃ…」


 自分のものとは到底思えない甘く媚びたような声が自身の口から勝手に溢れでてきて夏蘭はもうビックリして何がなにやらわけわからなくなり雪兎の胸を押して逃げようとのけぞった


「やば、何今のエロい声、もっかい鳴いて…もっと聞きたい…」


 夏蘭は全力で雪兎から距離を取ろうとしてるのに雪兎は夏蘭の背中と腰をしっかり抱えこんでびくともしない

「ああ、それより先にこっちか…」


 熱にうかされたようにトロンとした瞳をしながら雪兎は親指で夏蘭の唇の輪郭を確かめるようになぞりその指を下唇の下にあてがうといつのまにやら夏蘭は顎を持ち上げられていて、次の瞬間、むにっとやわい感触が夏蘭の唇に落ちてきた


「んっ…セツ…ト、んっ!?…んんーー!!!」


 途切れ途切れ夏蘭が息をしやすいように雪兎は角度を変えて夏蘭とのはじめてのキスを堪能していた


 夏蘭はといえば、自分がキスをされているというのはわかってはいた。だが、しかし、雪兎のキスは色恋ごとに疎い夏蘭には些かハードモードであり。さらに興奮MAX状態の雪兎はそれだけにはとどまらずキスをしたまま夏蘭を畳に押し倒す


「ぷは、ちょっと雪兎今の何?」


「キス」


「じゃなくて、まて、まて、まて、何してんの、何してんの〜〜!!??」


「ん?脱がす、触る、全部見る」


 雪兎は夏蘭の衣裳の形状を確かめてどこをどうやって脱がすかな、とか本気で考えながら手を這わせていた


「何間顔でいってんのよーー!!バカバカバカ」

 夏蘭は自身を抱きしめるようにして必死で抵抗を試みる


 夏蘭は間顔だと言ってるが、実際の雪兎はギラついた瞳で夏蘭の服から覗く白い肌を見て舌舐めずりし、呼吸を荒くしていた

 直接的に言えば盛っているのだが夏蘭など若葉マークの生娘には雪兎の余裕がない状況など全く知る由もなかった

 それでも、流石にこのまま脱がされたならどうなるかくらいは夏蘭でもわかる

 夏蘭は自分が想定していたイチャイチャを秒速でぶっちぎってひた進もうとする雪兎に待ったをかけた


「脱がない!着る!服着る!」


「? 着たまましたいの? そういえば今日の夏蘭服も可愛い、いいよ、着たままする?」


 甘ったるい声で雪兎が夏蘭の耳元で囁く


「着たままするって何?着てもしない!なんもしない!お家に帰る!」


 焦って随分幼い喋り方になった夏蘭が裏返り匍匐前進で覆い被さっていた雪兎の包囲から抜け出そうとする、雪兎はそんな夏蘭の腰をしっかり掴んで逃がさない


「ダメ、帰さない。俺達は番いだろ?だったらもうこのまま俺に嫁いできて一緒に住めばいい」


「今日の今日で流石に一足飛び過ぎるでしょ!

私達番なのに二百年も距離取ってたじゃない?

本来だったらもっと恋仲らしくデートしたり、手を繋いだりそうゆう初々しい事から徐々に距離を詰めてたはずでしょ?それが二百年の反動なのかなんかわからないけど、私も雪兎も感情にセーブが効かない上に身体が既に大人になってるものだからつい本能のままに欲しくなっちゃうけど、こんなの絶対よくない!もっとゆっくりお互いを知りあいながらステップ踏んでこうよ」



「そんなの無理だって、こんな好きなのに触っちゃダメとかそれこそ拷問だ、なあ夏蘭、早く結婚しよ、結婚したらずっと側に居られるし、それからだってデートできるしお互いの事知れるだろ?」


 雪兎が夏蘭の腰を抱きしめて耳元で強請る

夏蘭の好きな神声にさらに甘さが増していて夏蘭は身体の力が抜けそうになる


「その声で誘惑するの反則!」


「だったらお前の桃の香りだって反則だ!

こんなうまそうな匂いつねに纏わせて可愛く擦り寄ってこられたらそりゃ食べたくもなるだろ」


「そんなの、じゃあどうするのよ」



 夏蘭が動揺して質問に質問で返すと雪兎が夏蘭を起き上がらせてまた自分の膝に乗せて抱きしめた


「食べさせてよ夏蘭を、どうにかなりそうなんだ」


「む、無理だって…だって、だって…私R15までしか対応出来ないから!!」



「……。アール?15?お前何言ってんの?」


 夏蘭の突然の言葉に雪兎が固まる


「人の世のR指定ってやつだよ!知らないの?

 ネット小説とか映画であるの」


「いや、知ってるけどさ、だからそれとお前に何の関係があるかって聞いてんの」



「R18的行動は私に取らないで!」


「だから何で?」


「諸事情色々あんだよ!ちょっとまて、私にR18の予習させて」


 雪兎が溜息をついて夏蘭の頬にキスを落とす


「予習なんかいらねーって、俺がゆっくり教えてやるから」


「逆にあんたはその知識をどこから得てんのよ、

まさか里の誰かと付き合ったりしてたの?彼女いたりしたの?」


「いや、いないけど…お、男には男の色々諸事情ってのがあんだよ、察しろ!お前が言う予習的なやつを俺は既に終えてるって事!お前何言わせんの!?」


 雪兎が真っ赤になって夏蘭の肩に額をつける

その間も常に夏蘭の桃の香りが甘く雪兎の鼻をくすぐって魅惑の果実をおあずけされている状態に雪兎は我慢の限界に達していた



「さっきよりずっと甘い…

本当はお前だってもう限界なんじゃねーの?

なあ、頼む。俺このままじゃ今日寝られねーよ」


「だって、婚姻前でしょ?」


「だってもう番じゃん、互いの父親と四柱のいる前で婚姻の意思を伝えたんだからもう結婚してるも同然だろ?」


「そうかもしれないけど…」


「大事にするから、これ以上ないってくらい幸せだって実感させてやる、だから夏蘭…俺のものになって、俺の番として、身も心も全部、おれにあけわたしてよ」


「番として?」


「うん、番として。そのかわり、俺の全部もお前にあけわたすから、もし叶えてくれるなら、俺は骨の髄までお前のものだよ?どう…夏蘭」


 夏蘭の喉がこくりと鳴った

その音が雪兎に聞こえたのだろうか

雪兎は薄く笑って最後の止めとでもいうように耳に唇を添えて囁いた


「俺を欲しがれ夏蘭、全部やるから」


(このドS…

 ああ、だけどそれに流される私も大概…)


「言ったね、全部って言ったら全部なんだからね、

 バカ雪兎」


 夏蘭は振り返って雪兎の肩を掴み交戦的にもキスをお見舞いしてやろうとして…


 ガチッ


「「ッ…」」


 歯があたった


「ご、ごめ…」


「これは、まずキスから手解きが必要だな…」


 羞恥で真っ赤に染まった夏蘭の頬を両手で包み込んで雪兎がペロリと自身の唇を舌なめずりした

そのあまりの色気に夏蘭はくらりとする


「今のキス、了承と見なすから、もう待った無しな」


 とさりと雪兎が夏蘭を畳に組み敷いて二人の唇がもう一度重なろうとしたその時ーー



「雪兎!夏蘭!出てこーい、今から里あげての宴を開くことになった。主役のお前達がいないんじゃ宴にもならんからな」


 雪兎の父、冬ノ神の呼びかけに雪兎は落胆して夏蘭の上にピッタリと乗っかったまま脱力した


「〜〜…ちょっと待ってくれないか?」


 とりあえず返事だけは返す雪兎の顔を夏蘭はボケっと眺めていた


「雪兎、言っとくが夏ノ神ももうすぐここに来るぞ」


 多分何か察しているであろう父親の声に雪兎は大きな溜息をついて項垂れた


「!?」


(パパが来るって!?)


 夏蘭は雪兎の脇腹をぐーパンチして雪兎から抜け出し襖を少し開けて声をあげた


「は、はーい、今いきまーす」


 胸を撫で下ろし溜息をついた夏蘭を覆い包むように背後から影が落ちてきて夏蘭が振り返るとすぐ後ろには雪兎がいて…


 スパンと音を立て雪兎は襖の隙間を埋めると

 夏蘭の腰を引いて顎を掴む


 チュッ、チュッと二回唇にキスを落として少しイラついた声音で雪兎が言った


「時間ギリッギリまでキスの練習な…」


 そうして雪兎は本当に夏ノ神がやってくるまで夏蘭にキスの雨を降らせるのだった





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