2話 ロカ
ロカがうちに来て二日たった。
その間に分かったことが三つ。
一つ目は、ロカが異世界からやってきた異世界人ということ。
なんでも。彼女の国は、戦争中らしくこの世界に亡命してきたらしい。
二つ目は、彼女の見た目。金髪でエメラルドグリーン色の瞳。その整った顔立ちには、老若男女、誰もがくぎ付けになるだろう。そして、特徴的な、長い耳。
もうわかるだろう。彼女は、エルフだ。
ラノベなんかによく出てくる。森の中に住み、弓矢や魔法が得意なあの、耳長族だ。
四つ目は、彼女が魔法を使えること。
魔法だ。火を噴いたり、水を操ったり、風で竜巻を起こせたり。男のロマンが詰め込まれた、あの誰もが一度は使ってみたいと思う魔法を彼女は使えるのだ。
俺も使ってみたいと思ったのだが、、、
「~~~~~~~~『アクアリット』」
と、そんな思考をさまよわせているとロカが魔法を使うところが見られた。
使った魔法は、『アクアリット』。大気中の水素と酸素を融合して水を作り出す魔法だ。
俺も使ってみたいと思って試してみた、、、いや、試す以前に前文の詠唱のところの言語がさっぱりわからない。
日本語じゃない。英語でもフランス語でもない。(フランス語わからないけど)
生成された水が真下にあるベランダの小さい植木鉢に落ちる。
植木鉢には、先週植えたミニトマトの種が入っている。
「いいのか?そんなのに魔法使って、水道水でいいと思うんだけど」
そういうと、ロカが少し頬を膨らませて、
「駄目だよ。水道水には菌やら微生物やらがたくさんいて木の成長の妨げになっちゃうよ」
ふーん、と思いながら、ふと時計を見る。
八時だ。学校が始まるのが八時半。ここから学校まで自転車で三十分、、、
「あと三十分しかねえ!?」
急いで着替え始める。するとロカが不思議そうな顔をして、
「なんだい?どこかに行くのかい、、、、、、!?」
振り返ったロカが赤い顔してさっと、後ろを向く。
「き、君はもう少し羞恥心というものを覚えたほうがいい、、、」
「はっ!?」
とっさに自分の体を見る。シャツとパンツだけしか着ていないのでこれはどこからどう見ても変態である。
「わ、悪い。つい癖で」
ロカは驚いたように、
「癖!?き、君には人前で裸になると興奮する露出癖とかそういうものがあるのか!?」
後ろを向いているのに顔が真っ赤なのがわかる。
こんなにテンパっているロカは初めて見た。
「違う!俺にそんな性癖はない!これはいつも一人だから、つい、その感覚で着替えちまっただけだ!」
必死で弁明すると、ほっとしたように
「そ、そうか、、、と、とりあえず服を着てくれ」
「あ、ああ」
いそいそと服を着る。
「で、君はどこへ行くんだい?」
「へ?」
ぼそぼそと言っていて聞き取れなかった。
「だから、君はどこへ行くんだい?」
「あ、忘れてた!」
言われて思い出す。そういえば学校に行かなくては。
急いで着替える。
弁当は作ってる暇がないので、行く途中にあるコンビニで買っていこう。
「んじゃあ、行ってくる。昼は昨日の残りチンして食ってくれ」
「あ、ちょっ」
俺は玄関を飛び出して、階段を駆け下りる。
学校に間に合うかはわからないがとりあえず急ごう。
読んでいただきありがとうございます。またちょくちょく出していきます。