1話 出会い
俺、鏡凛太朗はよく優しいといわれる。
そんなつもりはない。
が、目の前で困っている人がいればついつい手を貸してしまう。
それが人間の真情というものだろう。違うか?
まあいい。
そう、こんな状況になったのもきっと俺が『優しい』からなのだろう。
俺の目の前には金髪の耳の長い美少女がこちらをガン見しながら黙々とご飯を食べていた。
そう、あれは1時間前のこと。
俺は、今日発売の『エルフ爆誕』という今話題のラノベを買いに行った帰りのことだ。
俺の住んでいるマンションから本屋までは往復十分もかからない。
好きなラノベが発売されるたびこの本屋にお世話になっている。とてもありがたい。
と、話がそれた。
まあ、そんなこんなで帰り道。
俺は、地面に金髪の少女がうつぶせで倒れているのを発見した。
「!?」
急いで駆け寄り起こす。
「大丈夫か!」
少女がゆっくりと瞼を開ける。
瞳は緑色だった。
少女の口がゆっくりと動く。
「よか、、、、、、た、せい、、、、こう、、」
内容がよく聞き取れない。
見たところ外傷はないようだが、、、
どうしてこんなにもぐったりしているのだろうか?と思っていると、
ぐぅ~~~~~~~~
と、少女のお腹が大きな音を立てた。そして少女は、
「お腹すいた」
と、まあこんな感じでこのままおいて帰るわけにもいかず背負ってここまで運んできたわけだが、改めて見るとすごい美人だ。
顔はすらっと整っているし、目もエメラルドのようにきれいで、髪も自ら光を発しているようにキラキラしている。
だが、彼女にはもう一つ特筆すべき特徴がある。
耳だ。
彼女の耳はとでも長い。
耳にもいろいろと個人差があるが、そなレベルじゃなく、ちょうど俺が買ってきた小説『エルフ爆誕』に登場するエルフのような耳だ。
「ごちそうさまでした」
そんなことを思っているうちに少女がご飯を食べ終え、食器を台所へ持って行く。
「ああ、いいよ。俺がやるって」
制止すると「そう?」と言ってシンクに食器を置いて戻ってくる。
机を挟んで俺の前に正座したところで切り出す。
「君、何者?」
「?」
何を言っているのかわかりませんとばかりに首をかしげる。伝わらなかったかな?
「あ、えっとね、君、名前は何でいうのかな?」
少女はピこん!と反応する。
「ああ、そういえばまだ名乗っていませんでしたね。」
少女は背筋を伸ばして、
「わた、、ボクはロカ・シュミロナ。凛太朗君、ボクにはいく当てがないんだ。だから、しばらくの間ボクをこのうちで泊めてくれないかな?」
あれ、俺いつ名乗ったっけ?って、待て待て待て。
「泊める?」
「うん」
即答だ。
「誰を?」
「ボクを」
これも即答だった。
「どうして?」
「君が困っている人を見かけたら、ほおっておけない性格だからだよ」
「・・・・・・」
「じゃあ、これからよろしくね。凛太朗君」
俺が黙っている間も話は進んでいく。
俺が困って人を見かけたらほおっておけないのはほんとだし、彼女、いやロカは困っていると言っていた。
「はあ、、、、、」
自分の頼まれたら断れない性格にうんざりする。
「じゃあ、よろしくな。ロカさん」
するとロカはクスクス笑って、
「ロカでいいよ。ロカで。君にさん付けされると背中がムズムズするよ」
「お、おう。そうか。よろしくな、ロカ」
こうして俺たちの奇妙な物語は静かなスタートを始めた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。またちょくちょく更新していくんでその時は見てください。