狂態化
◯四月七日 夜の街
三人で夜の街を走っている。
夜の街自体、滅多に来ないため雰囲気にどうも非日常感がある。路上でたむろする大学生くらいの若者集団に、スーツ姿に男性、私服の若者、派手な服のおっさん。色々な人の間を縫うように走る。
ネオンの眩しい通り、ビルとビルの間の狭い道を抜け、大通りへ出た。横断歩道に信号待ちをする。
息は切れていない。
一年生の時に三人とも基礎体力を付けてきた。時刻等を把握していない公共交通機関を使うより、走った方が速い時もある。
「明日叱られるのかなぁ。」
美夜は大して深刻ではないトーンで呟く。寮には門限がある。それを破っているため、教員の知るところになれば説教だろう。いや、説教で済めば良いけれど…。
「私も四季も自分の意思で来てるから問題ない。どちらかと言えば、美々を巻き込んだ形になって申し訳ない。」
美々は、新開さんと芳川さんと面識はない。助ける義理は一切ない。
「気にしないでください。見なかったフリをする気はありません。それに、お二人のリレーションシップを大事にする美しさが好きなので。」
変人ではあるが、PPを目指す者であり、筋の通った信念がある。
「それより、作戦はどうしますか?」
横断歩道の信号が青になり、走り出す。
「敵の数は分からない。だけど、一般人なら二人も居れば余程の人数じゃなければ相手できる。」
頭の中を整理しながら話す。
「美々が来る事は、あいつらも新開さんも芳川さんも知らない。私と美夜は堂々と正面から突っ込むから、その隙に二人を逃して欲しい。」
この作戦で問題ない。
「分かりました。無事お二人を救出したら合図をしますので、お二人も状況次第で退却してください。」
「分かった。」
少し先に目的の廃ビルが見えてくる。
ビルとは言え、6階建てのこじんまりとしたものだ。
「私は横のビルから屋上に飛び移ります。」
美々は私達から離れて駆けていく。
「ヤンキー漫画みたいになっちゃったなぁ。」
独り言を呟く。
「私は読んだ事ないから分かんないや。」
「今度貸すよ。」
そう言って、なんだか死亡フラグみたいな事を言ってしまったと後悔する。
電気は通っていないようなので、廃ビルの正面の自動ドアをこじ開け入る。
それと同時に、左右に隠れていた男二人に鉄パイプを振り下ろされる。
私も美夜もそれを躱す。
顎へ殴打を加え、相手を気絶させる。
美夜も蹴りを鳩尾に入れ、戦闘不能にさせる。
「流石に不意打ちくらいじゃやられないか。」
奥から声が聞こえたと思うと、続々と不良が現れる。目視で二十人ほど。奥にはもう少し待機している可能性もあるが、思ったよりも少ない。
手元を見るが、バットや鉄パイプ、ナイフなど持っている奴はいても、銃火器など飛び道具は見当たらない。
これなら問題はない。
確実に1人一撃で沈めていく。無駄な動きは一切しないように、顎や鳩尾へ攻撃を当て、戦闘不能にしていく。
相手は素人で、立ち回りを理解していない。仲間の邪魔にならないように、一人ずつ攻撃をしてくる。連携をとって畳み掛けられた方が厄介だったが、これは都合が良い。
挙動を見て、躱し攻撃する。もしくは、動作が大振りで隙があれば先手を取る。その繰り返しで全員を倒していく。
途中、昨日絡んできた不良を見つける。
あえて手加減し、意識を残すが動けない程度の力で顎を殴る。
最後の一人を美夜が片付ける。
倒れ込んでいる昨日の不良の横に立つ。
「2人はどこにいるの?」
「…上だ。」
意識が朦朧とし喋るのもやっとだろうが、押し出すように声を出す。
「やけに素直に教えるのね。もしかして罠?」
美夜が聞く。
「…どうせうちのボスには敵わないからな。」
そう言ってクククと笑う。
「逃げ出さずに全員が向かってきたのは褒めてあげる。」
美夜が投げるように言葉を出す。
ざっと周りを見渡すが、この階に残党はおらず、新開さんも芳川さんも居ないようだ。嘘は言っていないのかもしれない。
「上に行こう。」
階段を見つけ。美夜と二階へ上がる。
耳を澄ますと、何か物音が上階から聞こえる。
目を合わせ頷く。
念のため足音を消し、気付かれないようにゆっくりと3階へと上り、物音がする方へ行く。
ドアの先は開けた空間になっていて、奥に人が見える。
「やっぱり、ただの不良じゃ相手にならないか。少しは期待してたけど。」
「新開さん!芳川さん!」
その男の横で2人は地べたに座っていた。目を閉じ、意識を失っているようだ。
美夜が駆け寄るが、足を止める。新開さんと芳川さんの隣に、もう一人傷付いて倒れている。
「美々…?」
「やっぱりてめぇらのお仲間か。でも、一人だけって俺のこと舐めてない?」
男は指をぱきりと鳴らす。
「あんた、友達に何したのよ。」
美夜の声は今まで一番怒りに満ちている。
「捕まえてきた二人には何もしてない。後からやってきたこいつは喧嘩売られたから買っただけ。」
美々が負けた?
月見ヶ丘中学で一緒に訓練を受けてきた。対人戦闘訓練も受け、一般人には絶対に負けない実力はある。武力部門の順位は平均以上だったはず。
美々の姿を見るに、武器や罠、不意打ちでやられたようではない。純粋な戦闘で負けたように見える。
「こいつ多分、ドーパーだ。」
美夜にそう言う。
「その言い方、好きじゃないんだけど、そういう事だ。」
ドーパー。禁止薬物に投与による筋力や思考力の向上、科学技術による脳への直接的干渉によって、無理やり潜在能力の解放、つまり人間のリミッターを解除する奴ら。
勿論、ノーリスクではなく、むしろハイリスクだ。無理矢理身体のリミッターを解除するため、脳機能低下や筋力の低下、最悪死に至ることもある。
人体への悪影響が大きく、法的には禁止されている。しかし、地道な努力など必要なく一気に能力を引き上げる事ができるため、後先考えない、またはそうするしかない連中が武力行使するために使用している。
対してPPは、それらに頼らず身体のリミッターの解除を行なっている。月見ヶ丘では2年生になってから行う訓練で解除出来る。
つまり、私達は狂態化出来ない。
あいつは狂態化している。しかし、逃げ出す訳にはいかない。
美々、新開さん芳川さんの三人を連れて逃げるのは無理だ。
やるしかない。
美夜と左右に分かれて駆け寄り、連撃を仕掛ける。どちらか一方に集中させ、隙をもう一人が突く。
私の顎へ放った殴打を躱し、美夜の足払いも跳躍し躱す。
腹部へ向けて蹴りを放つが、全力のそれを腹筋で受け切られる。大木を切ったような感覚がする。反撃を喰らう前に脚を引く。
美夜が顔面へ拳を振るうが、額で受けられる。
人間は、無意識にあらゆるリミッターを掛けて生きている。私の今の蹴りも、本気で放ったが無意識に脚の骨が折れないよう、筋肉にダメージがないように加減をし、出せることの出来る100パーセントの力で放つ事は出来ない。一般的に、常態では本来のポテンシャルの20パーセントの力しか出す事が出来ないと言われている。
そのリミッターを外した状態が狂態だ。
私の蹴りも、美夜の拳も、この男の20パーセント以上の力で押さえ込まれた。
男が拳を握り締め振るう。
美夜が寸前で躱し、空を切った拳は壁に当り、粉々に破壊され穴を穿つ。
「やばっ…!」
筋力のリミッターを外している。何パーセントかは分からないが、間違いなく今の私達の全力では歯が立たない。攻撃してもダメージがなく、男の攻撃は防御しても致命傷になる。
男は力強く踏み込み、一気に美夜との距離を詰める。カバーしなければと駆け出すが間に合わない!
美夜は両手で防御姿勢を取り、顔面への直撃は避けたが、嫌な音がして美夜が吹っ飛ぶ。壁に当たり、受け身もとらずに床に伏せる。頭部へ衝撃が届き意識を失ったようだ。
二人がかりでも敵わない相手に、私一人で大丈夫か?
「あなたが大島?」
これからの策を練るため、時間稼ぎのために会話をする。
「大島?そいつは下でてめぇらがぶっ飛ばしただろ?」
どういうことだ?美々から聞いた話では、不良のボスは大島らしいが、こいつは大島ではない。それはつまり。
「ボスの座を奪い取ったのね。」
「簡単に言えばな。俺は富士根だ。」
「何が目的なの?」
「お前らだよ。」
指を差されるが、理解が追いつかない。
言葉に詰まり、沈黙してしまう。
「あんた達が学生を虐めてるのが、どうして私達に繋がるの?なんで新開さんと芳川さんを狙ったの?」
「てめぇもPP目指してんだろ。考えれば分かる。損させないでくれ。」
私の言葉を否定しなかったため、富士根という男がこの辺りの不良に指示し、学生を襲わせていた事は事実だ。
その理由も、考えれば分かるという。
こいつは新開さんと芳川さんを拐って、私達を呼び出した。電話の反応からして私と美夜が目的だろう。
ただ単に、昨日の“お礼”という訳ではだろう。こいつは、私と美夜をどうしたいんだろう。
仮にこのままこいつにやられたらどうなる?
私が死ぬ。どんな辱めを受け殺されるかは分からない。もしくは、生かされて死んだほうがマシと思うかもしれない。それで、富士根は何の得がある?
「もしかして…。」
一つ思い当たった。
富士根は口角を上げる。
「狙いは月見ヶ丘中学校?」
「ほぼ正解だ。」
富士根は大きな声で笑い出した。
私と美夜個人を狙ったわけじゃない。月見ヶ丘中学生、もしくはPP育成校の生徒を狙ったんだ。
付近生徒に絡んでいたのは、私達のような“正義感”のあるPP育成校の生徒が出しゃばるのを期待していた。
「想像通り、将来のPPを殺すことが目的だ。邪魔な芽を今のうちに摘むこと。その事実が明らかになることで、PPになる事への恐怖も期待できる。」
そうか。PP育成校の生徒が、そんな理由で殺されれば、社会へも大きな影響が出る。PPとして任務に就く前から命を狙われる恐れが今度付き纏ってしまう。PPになろうとする人も少なくなるかもしれない。
「狂態化出来る奴らが相手だったら正直しんどかったけど、お前らみたいな雑魚で良かったよ。」
その通りだ。
私達じゃなく、三年生であれば富士根を倒せていたかもしれない。
「まだ、負けてない。」
狂態化した人間は瞬発力、判断能力、筋力、戦闘における全ての能力が桁違いで敵わないが常態と変わらない部分もある。
例えば眼球。露出した臓器であり、筋肉と違い硬化することはなく、指で押せば潰せる。
また、聴覚も防ぎようがない。スタングレネードなどは効果的になる。しかし、持ち合わせてはいない。
眼球に焦点を当て狙う事にする。
目を潰せれば、視界を奪い皆を助け逃げる事も出来る。
一気に駆け寄り体術を混ぜつつ、狙える時に眼球を指で突く。
一頻り、手を休めずに仕掛けるが全て躱すか受けられる。
富士根も隙を狙い攻撃してくる。
一撃でももらったらだめだと気を張る事で、何とか躱すことが出来ているが、全部運だけで避けているようなものだ。
「全力では俺を倒そうとしてるな。」
「まだ負けてないって言ってるでしょ。」
強がりを言う。
「警察でもPPでも呼ばれてれば危なかったんだけどな。回避に専念して時間を稼がないあたり、どうやら呼んでいないようだな。」
一瞬、目眩がする。
警察なりPPを呼んでいれば、時間稼ぎをすれば勝てていた。
いま、絶体絶命の状況を生み出している原因は何だ?
いや、考えちゃだめだ。
「そろそろ終わらせるか。」
富士根は拳を握り、振りかざし、大きく踏み込む。
壁を破壊するほどの威力があるそれは、身体のどこで受けても致命傷だ。
避けなきゃと思うが、頭の中で勝手に思考が巡る。
この状況を生み出した原因は私だ。
新開さんと芳川さんを助けた事自体は後悔していないが、助けた事によって二人をより危険な目に合わせてしまった。
ここに来る時だって、美夜と美々は気をつけた方が良いと言ってくれた。何かが怪しいと。その助言を無視して、慢心から最悪の手を提案してしまった。
何が学年武力部門一位だ。この程度じゃないか。
富士根の振り下ろされる拳が、ゆっくりに見える。この角度は顔面だ。一撃で死ぬ。
死んでしまう。
ふと、美夜と初めて会った時のことを思い出した。
溌剌とした人で、私とは合わないだろうって思ってたっけ?同じ部屋で暮らす事になって、美夜の性格を理解していった。外面は正反対だが、内面は似たもの同士だ。数少ない気の置けない友人だ。
美々との初対面は、衝撃的だった。
突然部屋にやってきたかと思えば、私と美夜の名前を褒め出したっけ。特にも美夜には美しいの字があり、10分くらい褒めていた。内容はほとんど覚えていない。
かと思えば、私達の造詣がどうのこうとの訳の分からないことを言い、突然顔を舐められた。
その時、私は美々をほとんど知らなかった。顔は見覚えあるし同学年だとは分かっていた。私よりの背の小さい、可愛い感じの奴くらいの印象しか無かった。
そんな人に突然顔を舐められ、思考停止したし、ああ、この人は変態なんだと直ぐに理解した。
それでも話をしていくと、変ではあるが悪い奴ではないと分かった。
それから色々あったが、今日でその人生も終わる。
呆気ない。
これが走馬灯なのかもしれない。富士根の拳がスローモーションで見える。こんなに考え事をしても、一向に顔面に届かない。
いや、これは走馬灯じゃない。
思考能力が常態を逸している。許容限界を超え、脳が視覚的情報を処理している。それ故、富士根の動きがスローに見えている。
これが狂態化だ。
拳を握り締める。全力で握り締める。
狂態化出来るなら、富士根の防御を越えるほどの筋力で殴る。
不意に腕の痛みを感じると同時に、スローな世界が終わる。痛みで脳の処理能力狂態化が解除されたようだ。意識しなければ扱えない狂態化。痛みなど外的要因で意識がブレれば、狂態化は解除される。
確実に富士根の拳は私の顔面を捉えたはずだったが、僅かに右にずれる。
「四季!」
美夜がいつの間にか起き上がり、富士根にタックルしていた。
富士根は直ぐに標的を美夜に変え、拳を振るう。
が、美夜はそれを両手で受け止める。
美夜も狂態化している?
すると、富士根の背後へ美々駆け寄り、飛び蹴りを喰らわせる。
びくともしなかった富士根が蹌踉めく。
「攻撃の際に、使用する筋肉にしか狂態化していません!」
そうか。
狂態化は元々身体に負荷がかかるため、本能でリミッターを掛けている力を解放するもの。それを全身、常にリミッターを解除するには繊細な神経が必要だ。薬物や科学技術で強引にリミッターを解除した奴らに、そんな器用な事はできない。
富士根はインパクトに必要な分だけ、防御に必要な分だけ肉体のリミッターを外している。
美夜が思い切り拳を顔面に向け振るう。
体勢の崩れた富士根は腕を顔の前に出して防御する。
隙だらけだ。
右手を握り締める。
掌が血塗れだ。さっき加減できずに握り締めすぎたらしい。腕の筋肉も骨も、痛みが消えないが、そんなことは言っていられない。
美夜の攻撃に気を取られている富士根に渾身のボディーブローをお見舞いする。
鈍い音と嫌な感触が伝わる。
美夜の拳も腕に当たり、骨の折れる音がする。
富士根は数メートル吹っ飛び、起き上がることはない。
右手は力を入れる持ち上げるのがやっとで、握り締める事はできない。
血塗れの手を見る。
「お二人とも、大丈夫ですか。」
美々が苦しそうな声で尋ねてくる。
「美々こそ大丈夫?」
美々の身体は傷だらけだ。所々に血が滲み、顔は苦しそうに歪んでいる。
「かなり良い一撃を貰ってしまって…。」
「どこ?平気?」
「それより、美夜さんは…?」
美夜を見ると立ったまま動かない。あの一撃を受けてなお、攻撃を繰り出した腕がだらりと下がり、見るからに痛々しい。
「何か煩くない?」
美夜はポツリと溢す。
まだ増援があったかと耳を澄ますが、遠くで聞こえる街の喧騒しか聞こえない。
「別に何も聞こえないけど。」
美夜は目を見開いて、一点をじっと見つめている。視線の先を見るが、薄汚い壁があるだけだ。
「音だけじゃない…!このビルこんなに…、いや…、何かおかしい…、あれ…?何だこれ?暑い、変な匂いがする、埃が多いし…。」
「美夜…?」
「美夜さん!腕の痛みを確認して下さい!」
美々が大声で指示する。
「何で?」
瞳孔の開いた目で美々を見つめる。
「いいから!!」
強い口調で言う。
それに怯んだようで、目線が泳ぎ、直ぐに顔を顰める。
「腕、痛い。折れたかも。」
「痛くても集中して下さい!」
「ちょっと美々!どういうこと?」
「四季さんも落ち着いて!たぶん、美夜さんは狂態化の解除が出来ない状態だと思います。痛みに集中して、他の感覚を一旦忘れさせます。」
「私は狂態化しても、今はいつも通りだけど、どういうこと?」
「私も四季さんと同じです。ただ、稀に狂態化に成功してもリミッターを元に戻す事が出来なくなる人がいます。」
美夜の様子は明らかにおかしい。美々の言う通りだろう。
「自分でも分かる。私今、狂態化から戻れない。美々、どうすれば良い?」
「強張っている身体をゆっくりと力を抜くようにイメージして下さい。」
美夜は目を閉じ、深呼吸をする。
「少しでも常態と違うと感じたら怪我の痛みに集中して下さい。私達では、美夜さんの狂態化に干渉することは出来ません。」
「大丈夫。気合いるけど、戻ってきてる。」
「集中して下さい。狂態化は長く続くほど身体への負荷は大きくなります。」
美夜の様子は落ち着いてきた。常態へ戻っているのだろう。
「あれ、私…?」
奥から声が聞こえる。
新開さんが目を覚ましたようだ。
「大丈夫!?」
急いで駆け寄るが、脚がもつれて転んでしまう。
右手を突いて立ち上がろうとするが、激痛でまた倒れてしまう。
「やばい。」
口を吐いて言葉が出る。
右腕だけじゃなく、全身が痛い。狂態化の反動だろう。今の自分が耐えられる身体のリミッターを超えてからの上限を理解していない。
立ち上がれない。
「え?ここどこ?何で色紙さんが?えっ!めっちゃ血出てますけど…。」
後ろで人が倒れる音がする。
美夜も美々も反動に耐えられず倒れたらしい。一時的なハイで意識を保っていただけだ。
私も意識が飛びそうだ。
絞り出すように一言。
「助けに来て言うセリフじゃないけど、救急車呼んで…。」