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ショッピングモール

作者: 小野大地

やっぱり書くしかないと思いました。

ショッピングモールといえばいろんなものがあり何かしらの出会いがある所である。自分も他の客同様何か出会いを求めてここに来た。

外は大変な日差しでまさに真夏といった感じだったが、中はクーラーが聞いていてとても涼しい。子どもが元気に跳ね回っている。

1階はフードコートである。飯は食ってきたので2階に上がった。

エスカレーターを上がる途中で辺りを見回した。2階の奥の方には映画館の入り口が見える。照明がついておらず真っ暗だったのですぐに分かった。その反対側にはゲームセンターがあってとてもうるさい。

耳をふさぎながら何か面白いものはないかときょろきょろする。するとエスカレーターを上がりきったところの広場にきれいなクラフト広場のようなところがあった。ショッピングモールといえばこれである。自分は無邪気な子供のようにステップを駆け上がって行った。


「こんにちは。えっとー、このキャンドルグラスというやつを作ってみたいのですが」

「かしこまりました。グラスのタイプがAとBとあるのですが、どちらにいたしますか?」と2つのグラスを見せる。

「あ、じゃあBで」

「かしこまりました。それでは準備いたしますので、こちらにおかけになってお待ちください」そして女性は裏方の方に回っていった。

自分は案内された席へ向かう。席に着くや否や振り返って女性を探した。柱の後ろで作業をしているようで、黄色いロングスカートがひらひら揺れるのだけが見えた。その動きはゆっくり静かに行われたので、まるで風に揺れる葉っぱのように感じた。自分はもっと知りたいと体を投げだしたが、その人の目がひょっこり現れたので、急いで前を向いた。ドンっと椅子が地面をたたく音が滑稽に響いた。

「どうかされましたか?」

「えっ、あっ、いや、その、ただ早く作ってみたかったので、まだかなあと思ってみていました。」

「ふふふ。そんなに待ち遠しかったのなら、こちらに中に入れるビーズを用意していたのですよ」見ると確かに色んな色のビーズが机の上に置いてあった。しかし、自分はこのキャンドルグラスというものには全く興味がなかった。ただ単に人に会いたかった。人恋しさを振り払いたかった。自分の興味は完全に女性に向かっていた。その女性は近くで見てもやはりきれいだった。目は二重でとても澄んだ瞳をしていた。マスクをしていて残念だったが、ある程度の欲求は処理されたので、それ以上痛手を負わないために適当にうつむいていた。しかし、視界の隅にあのロングスカートが入り、また自分を夢見心地にさせた。

「質問とかは大丈夫ですか?」という女性の声が突然聞こえてきた。

「は、はい」自分は夢から覚めた時のようなあせった声でそう言った。何のことかよく分からなかったが、適当にうなずいておいた。女性は笑いながら向こうへ行ってしまった。

机の上にはビーズの他に、グラスと透明な液体が置かれていた。女性が置いて行ったものだ。説明を聞いていなかった為にどうすればいいのか分からなかったが、近くにサンプル品が置いてあったので、それを見ながらなんとか作った。


しかし、そのグラスを天上にかざした時、グラスが回転してしまい、中のビーズがぐしゃぐしゃになってしまった。もう取り返しのつかないような状況になってしまった。女性を呼ぶ必要があった。辺りを見回す。するとその女性は別の人に教えていた。しかもそれは男だった。

男は女性と同じぐらいの年齢で、かっこいいジャケットのようなものを身に着けていた。女性は過度な笑みで説明をしていた。男も興味深そうに話に聞き入っていた。すると、その男が無邪気にビーズの箱をほじくっていた時、中身が床にこぼれた。男はすみませんと言ってジャケットを翻す。女性も大丈夫ですよと言いながら、黄色いロングスカートを引き寄せてしゃがんだ。ビーズを拾う手が重なる。いや、女性がタイミングを見計らって重ねたのだ。顔がほのかに赤くなった。いや、女性の方は偽りの色だった、ように見えた。自分は強く青ざめた。そしてこう考えた。

店員とはあくまで商売が目的である。適度に客を気持ちよくさせ金をとる。その瞳は全く欲望に満ち、客のポケットの中の財布だけを見る。まさに売春婦だ。この女性も同じだ。さっきまできれいで純粋そうな瞳で自分を見つめておいて、その実は売春婦と何ら変わりはない。後で冷静になって遠くの方から見てみると、やっとその醜さに気づくのである。店員なんてみんな売春婦なのだ。人間なんてみんな自己中心的な生物なのだ。


なんだか寂しい想いがして来た。自分はそのグラスをテーブルの隅に置いた。作りたくて作ったわけじゃない。どうせいつか捨てるんだ。途中で気づいた女性が走ってきてくれたらそれでいい。その時には自分の恋しさの傷も少しは癒えるだろう。もっともそんなこと起こるはずもないが。

代金を払う必要があった。しかし、それもなんだか面倒だった。法を犯すことになってしまっても、自分にはどうでもよかった。それよりもこの人恋しさを他人に分かってもらえるのかどうかの方が問題だった。

重々しく椅子を引く。下りエスカレーターまでの距離がかなり遠く感じた。数歩進んで振り返った。グラスはまだ寂しくたたずんでいた。

改善点とかあったら教えてください。

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