1. ルーティン
「ううっ……んっ……」
眩しい……
もう朝なのか。
窓から漏れた太陽の光が僕を眠りから覚ました。
今は夏休みの真っ只中。
お盆ということもあって、部活は休み。
そうなると夜中まで起きていたくなるものだ。
昨日は、深夜まで新しく買った『ユニバース・グラヴィティ』というゲームをしていた。
内容は、ある星の歌姫が敵の攻撃を受け、主人公の前に現れて、星を救って欲しいと頼み、宇宙を駆け回って戦うという在り来りなものだ。
だが、とにかくその歌姫がカワイイ。
信じられないほどカワイイ。
あと胸が大きい。
男子の理想の女性だ。
ゲーム中の演出で歌を聞かせてくれる場面があるのだが、そこで僕は涙腺崩壊。おそらく30分ぐらい泣いていただろう。
僕を泣かせる演出なんて相当レベルが高い。
是非みんなもプレイしてね。(特に男性諸君らは絶対プレイすることをオススメする。)
それはいいとして、昨日、僕の家のとなりに榎野さんという家族が引っ越してきたらしいのだ。後で挨拶に来るらしい。
もしかしたら、どっかの星の歌姫だったりして……なんてありえないことなのだろうけど、どこか期待してワクワクしている自分がいる。
まあ、中学生男児なんてこんなものだろう。
話題は移るが、僕には毎朝のルーティンがある。
内容はこうだ。
家の近くの丘に行く。
そして朝の澄んだ空気を吸い、草の上に寝転がり、空をみる。
「今日の雲は花の形だな」と、想像すると頭を使うせいかお腹が減ってくるので、家に帰り、朝食をとる。
これを一応晴れた日は毎日行っている。
今日もいつものルーティンを行おうと、丘へ向かう。
今日は朝から気温が高く、ギラギラと地面を照りつける太陽が、僕に夏の到来を嫌が上にも知らしめているようだ。
僕は夏が好きじゃない。暑いし、虫は多いし、日焼けをすると、皮膚が赤くなりヒリヒリとした痛みが残る。
去年の夏もそうだった。
僕は色白い肌が好きなんだけどな。
「暑い……夏なんて早く終わってしまえばいいのに」
そんな独り言を言いながら、丘を登り始めた。
あれ?
丘の上から笛の音が聞こえる。
それも、美しく響きわたるような音ではなく、少し音程のずれた気持ちの悪い音。
正直上手い方だとは言えない。
でもこんな朝早くからいったい誰が?
帰ろうかとも思ったが今まで1度も休まなかったルーティンをやめることが嫌だったのと、この音の正体はなのだろうという好奇心があったので、丘の上に行くことにした。
(深呼吸して落ち着こう。よし、行くぞ。
この音をだしてる犯人は、どうせニートとか、未亡人とかなのだろうな。どうせ。)
そう思っていた僕だったがその予想は呆気なく壊された。
丘の上にいたのは、僕と同じくらいの背丈をした少女だった。