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日常の朝

姿見でタイが歪んでいないかを確認し、侍従服に汚れやヨレがないことを見て、朝の準備を終える。


侍従の朝は早い。


まだ日も上がっていないうちから起床し、主人を迎えるための準備をする。


食堂で他の侍従と共に食事をとり、水汲み、清掃を行い、主人の朝がいつもどおり迎えられるように。


カティサーク家に拾われすでに3年が経過していた。


ノブナガは侍従見習いから侍従へとなった。


しゅくしゅくと朝の準備を終え、主人の寝室に赴き、朝の挨拶を行う。


コンコンコンコン


「ノブナガです。よろしいでしょうか。」


最初はノックの仕方にも叱られることが多かった。


ノックの回数、強さ、響かせ方。主人の部屋を1人で伺うことすらしばらくは許可が出なかった。


今では主人付きの侍従として、なんとかやって行けていると思う。


無言でドアが開く。主人はまだお休みのようだ。


一礼ののち無言で入室する。


部屋付きのメイドに黙礼したのち、部屋の奥にある扉にノックを行う。


コンコンコンコン


…………


返事がないことを確認の上入室する。


「アレクサンドラ様…アレクサンドラ様…起床のお時間にございます。」


「うー……」


「起きてください。」


「ノブナガ………」


「はい。」


「殺す」


朝の挨拶を行うといつも通り袈裟懸けに振られた剣を周囲の家具を傷つけないように指で受けとめて、主人に覚醒を促す。


「アレクサンドラ様いいかげん寝起きに剣を振るのはやめてください。おかげでアレクサンドラ様を起こせるのは私だけになってるんですから。」


ため息と共に主人の背に手を入れゆっくりと体を起こす。


桶に入れた水をお湯に変えて手早くタオルを濡らしきつめに絞ってさしだす。


「うるさい。お前が起こすのが悪い。起こすな。」


「お時間です。本日も予定が詰まっております。」


今日も受け取らないタオルを手早くと広げ、適温まで冷やしたのちにゆっくりと主人を拭いていく。


拭きながら本日の予定を確認していく。


「本日は朝食後、戦闘訓練、休憩の後に収支報告及び事業方針決定会議、昼食を挟みまして、勉強、休憩ののち視察戻ってから書類の処理を行っていただきます。」


「ノブナガ。代わりにやっておけ。」


「無理です。」


朝の主人はいつも通りだった。相変わらず朝に弱い。


コーヒーを用意して、さらに覚醒を促し、合わせて部屋付きのメイドを呼び入れる。


「カナリア入室して大丈夫です。朝の仕度をお願いします。」


後の仕度をカナリアに任せ、部屋から訓練場に向かう。


訓練場にはすでにゴツいおっさんのほか、数名が来ていた。


「おはようございます。」


「おぅノブナガ。若は起きたかい?」


「はい。しばらくの後にお越しになるかと思います。」


「じゃあそれまで軽く手合わせでもするか。」


「よろしくお願いします。」


このゴツいおっさんは見た目の通り戦闘職の百人長だった。名前はグランツ。


腕はいいのだが、いかんせん礼儀作法などを覚える気がないらしく、これ以上の出世は望めない。というか本人が望んでいない。


「堅苦しい会議より、戦場で暴れてる方が簡単で良い。」とは本人の談だ。


身の丈程もある巨大な剣を振り回し、戦場では赤鬼として恐れられているらしい。


今日も刃引きのデカい剣を持って対面に構える。


正直なところこのおっさんの相手はかなり疲れる。


一撃でも食らえば骨の数本は簡単に折れるだろうし、受けもそのまま押し切られる。避けるか受け流すほかに手がない上に、切り返しも早い。


その上バカみたいに頑丈で、刃引きの剣をいくら当てようとノーダメージで突っ込んでくる。勝つには急所を狙う以外にないがそう簡単に当てさせてくれない。


今日も苦労しそうだと思いつつも、剣先を目線の高さで構え、手合わせを始める。


「いくぜ!」


相変わらず初手は肩にかるった状態からの振り下ろし、剣の重量と合わせて、馬鹿げた威力だ。

軽いバックステップから斜め前方に切り込み、右からおっさんの左肩を突きで狙う。

即座に切り返し。おっさんの剣が左腰に向かって切り上げ。

突きを中断してそのまま倒れ込み、前転でかわす。

即座に体勢を立て直すがすでにおっさんが踏み込んで振り下ろしの体勢。

倒れ込むように膝の力を抜き、落下の反動で前方に踏み込み、おっさんの剣の根本で受け流し、首に肘打ち。


「グッ!!!相変わらずえげつねーな」


「グランツさんにはこれくらいしないと効きませんから。」


「可愛くねーな。ちょっと前まで泣きながら向かってきてたのによ〜」


「言わないでください。怒りますよ。」


「おーこえーこえー…じゃあそろそろ始めるか。」


「はい。」


おっさんは魔力を集め、自己強化魔法を使用する。あわせてオレも自己強化魔法を使用。

即座に魔力を足に集中。おっさんの後ろから剣を振り下ろす。が、おっさんの読み筋だったのか目に集中した魔力により見切られていたようで、おっさんの左脇から剣が生えてくる。剣の腹で受けつつ、さらに足で止めると共に後ろに飛ぶ。着地と同時に前を向くと、おっさんが地面を蹴り上げ、土を飛ばす。


「オラァッ」


「くっ」


思わず、左に避けるがこれも読み筋だったようだ。すでに目の前には巨大な剣の剣先。


避けられない!


ピタッ


と剣が止まる。


肩に入っていた力を息と共に抜いていき、


「参りました。」


「おーーーーーー!!!」


静まりかえっていた周囲が思い出したように騒ぎ出す。


ニヤっとおっさんが笑う。


「まだまだノブナガには負けてらんねぇからな!はっはっは。」


「前回は私の勝ちでしたけどね。」


「ちょっおまっ今それ言うか!もうちょい勝ちにひたらせろよ!」


おっさんの笑う顔がイラッとしたのでつい…



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