第1話「出会い」
俺の名前は藻部河叶多、大学生をしている。学校ではかなり影が薄く、学校ではモブ、モブキャラ・・・などというあだ名が付けられている。
でも、別に虐められているとかそういうわけではない、単純に俺の苗字が藻部河だから藻部のところを抜き取ってモブと言われているだけだ。ちゃんとした友達だっている。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
叶多は大学に行くために玄関から外に出た。
「行ってきまーす」
「お兄ちゃんいってらっしゃーい」
今の声は妹の声だ。
-ガチャ-
「めんどくさいけど行くか・・・」
俺が一歩前に踏み出した瞬間だった。
-プープー-ドンッ!-というクラクションと衝撃音と共に俺の体に衝撃が走り5mくらい飛ばされていた。
周りからはプープーというクラクションのような音が聞こえてくる。
-おい、やべえよ。人を引いちまったよ・・・・どうしよう・・・・えっとえっと、まずは救急車・・・-
やばい、どんどん意識が薄れていく………もう…ダメだ…
そして叶多は事故により、命を失った。
-暗い・・寒い・・息が苦しい・・・まるで海の底に沈んでいるみたいだ・・・俺は死ぬのか・・・-
叶多は真っ暗でなにも空間にいる
すると、急に俺の視界が歪み、白い光が見えた。
まるで、上から救いの手が伸びているように・・・
「眩しい・・・うわぁあああ」
叶多は白い光に吸い込まれるような感じで、その場から消えていた。
-ドスン-
そして、俺はは白い光と共に現れ3mくらいの場所から落とされていた。
「イテテテ。なんだよここは・・・」
叶多のなんだよここはに反応するように上の方から透き通るような美しい女性の声が聞こえてきた。
-ここは神の間です。-
「神の間?てか、あなたは誰ですか?」
神の間にしては殺風景だな・・・もっとこう金色に輝いた物とかあってもいいんじゃないの・・・
-私の名前とか神の間の情報なんてどうでもいいので省略させていただきます。
「いや、雑ぅ・・・いや、ちゃんと説明してくださいよ!今の状況とか!」
-チッ!-
女性は苛立つような表情をして舌打ちを叶多にした。
「あ、今舌打ちしたよね!絶対にしたよね!」
-はいはい。分かりましたよ、説明すればいいのでしょう?そんなに聞きたいな話をしてあげますよ。その代わり簡単に説明しますからね-
まさかの逆ギレ??まぁいいや、こんなことでいちいち突っかかっていたら話が見えてこない。我慢だ我慢。
「お願いします」
-ゴホンッ!まずあなたは元の世界でトラックに引かれ事故で死にました-
「確かに俺は車に引かれたよな・・・・つか俺死んじゃったですか!え、うそ。でも、なんで俺の肉体は無事なんだ!」
分からないことだらけで頭がパンクしそう。
-最後まで話を聞きなさい、あなたが死んだあと私たち神"の方で肉体を治しました。そして、あなたがいるこの世界は前とは違う世界です、俗にいう異世界というやつですね-
「なるほど・・・わからん!肉体を治したというのはよく分からないですけど、つまり俺は異世界転生したということですか?」
-ざっくり言うとそんなところです。あと、あなたはモブキャラで貧弱ですが、これから魔王を倒しに行ってもらいます。-
なんか、すげえひどいことを言われているんだが・・・
でも、異世界というのは小説やアニメでみたことがある・・・え、でもこの流れって最強の能力を神から授かって魔王を倒してこいとかいう最高の流れじゃない?
「よっしゃあ!来たぁぁ!魔王なんて一瞬で倒してやりますよ!んじゃそうと決まったらお姉さん!俺に最強の装備と能力をください」
-は?ブフッ!アーッハッハッハ。そんなものあるわけないでしょう。-
と言いながら女性は笑いながら叶多のことをバカにしている。
「ふぇ?」
-ふぇ?じゃないですよ~てか、そういう武器があったとしてもあなたみたいなモブに授けませんよ~
こいつ・・・まじ・・・
-しかも、これからあなたは勇者ではなく勇者をサポートする、いわばそこら辺にいる一般の兵士みたいなキャラでこの世界で生きなければならないのです。もっと言うとモブキャラです。-
この人、人の気持ちも理解しないでグイグイ言ってくるなぁ。つうか、この世界でもモブ呼ばわりなのか・・・ハァ。
「はいはい、分かりましたよ。じゃあさっさと最初の街とかに送ってくださいよ」
-覚悟がお決まるのですがお早いのですね。では、ご武運を-
「あ、ちょっと待ってください。行く前にひとつ聞きたいことがあるんですが……」
-なんでしょう?-
「流石に最低限の武器と防具は支給されるんですよね?」
-そんなもの支給したりしませんよ、自分で調達してください。それでは・・・-
「はぁぁ?ちょっと待て!おい!・・・」
叶多は白い光に包まれ姿を消した。
あの野郎!てか、防具が支給されない状態で行くってことはつまり・・・・
-ドサッ!-
叶多は神の間に来たときと同様に3mくらいに場所から落とされた。
「やっぱり、全裸じゃねええええかああああ!!」
俺は全裸で最初の街に連れてこられ、人々から冷たい目で見られている。
-なんだあいつは-
-ママ~あれなに~。こら、見ちゃダメよ-
-キャァァァ!変態よ!変態!!-
もちろん、叶多の性剣エクスカリバーも露出されている。
-変態はどこだ!!-
-ほらあそこ!-
-取り押さえろ!-
まずいまずいまずい、よりによってなんでし兵士がここにいるんだよ!どうやってこの場を乗り切る!!いや、手段はひとつしかない!それは!両手で股間を隠し逃げるしかない!!
叶多は逃げようとした瞬間、誰かが後ろから近づいてきて俺の肩をポンポンと叩いてきた。
その瞬間俺は異世界ライフは秒で「終わった」と思った。
「こっちに来て!」
と若い声が聞こえ振り向くとそこには可愛らしい女の子がいた。元の世界で言うと絶世の美少女だ!
「あ、ちょっと……」
その女の子は俺の右手を掴み、兵士が来ていない裏路地の方に誘導してくれた。
-あの変態はどこにいった!-
-まだ遠くには行ってないはずだ探せ!
「とりあえず、ここなら大丈夫ね・・・」
「ハァハァ・・・まじで助かったぁ。ありがとう」
「ほら、これを着てその汚いものをしまいなさい・・」
女の子は恥ずかしそうに叶多の方をチラチラ見ながらそう言った。
てか、忘れていたが俺は女の子の前で全裸だ、これが元いた世界だったら確実に捕まっている。つか、今も捕まりかけている・・・
「す、すまない。」
俺は貰った服に着替えた。
「よし、改めて礼を言わせてくれ、さっきの件は本当にありがとう」
「そ、それくらい別にいいわよ」
女の子は照れくさそうに叶多に言う。
「そっか・・俺は藻部河叶多だ。よろしく」
「私はアナスタシア・ラズトキン。名前が長いと思うからアナでいいわ」
「よろしくな、アナ!」
ちなみにアナの服装はノースリーブの服を着ていて両肩を露出し、下には短めのスカート、黒色のハイソックスなどを履いている。
男性の大好きが全て詰まった女神のような人だ。スカートとニーハイのコンビネーションによって露出される太もも(絶対領域)!!
いかんいかん、このままでは欲に溺れてしまう。一旦落ち着こう。
太ももをガン見してたけど、仕方ないよね。だって男なんだもん!しかも、ばれてない・・・
「何、黙って私の足の辺りをジロジロと見てるのよ!」
いや、バレてるぅぅ!!ばれてないと思ったけどおもいっきりばれてんじゃねえかよ、俺。
アナは顔を赤くさせて、慌てて自分の太ももを隠すようにスカートを下げた。
「見ていた?それは少し違うなぁ・・・俺は見ていたのではなく!拝めていたんだ!」
「はぁ、何を言っているのかは分からないけど今後、そういうことがあったらすぐに兵士を呼ぶからね」
ん?あんな苦しい言い訳をしたのにアナは怒っていないだと・・・いや、怒るどころか呆れられたのか!
「すいませんでした」
「はい、じゃあ。さっき、叶多くんを助けた本当の理由だけど・・わ、私とパーティーを組んで魔王を倒してほしいの・・・」
「ちょっと待て、今は魔王を倒せって言ったよな?」
「言ったけど・・・」
「それは多分無理だと思うぞ」
「え?どうして?」
「いや、どうして?じゃなくて俺は見るからに一般人だよ?魔王を倒す?普通に考えて無理でしょ。あと、この世界に来る前に神の間という場所である女性にこう言われたんだよ・・・・」
叶多は神の間で謎の女性から言われた「魔王は勇者じゃないと倒せない」という情報などを伝えた。
「んね?俺には不可能だろ?だから、魔王を倒したいのなら俺みたいなモブキャラではなく勇者とパーティーを組みなよ。それが一一番良い選択だよ」
「・・・・・・」
アナは急に無言になり、なぜか泣きそうな表情を浮かべ、つぶらな瞳でこちらを見てきていた。
え?なんか俺まずいこと言った?なんか今にも泣き出しそうな感じで俺のことをガン見してきてるんだけど!
いやいやいや、俺は至って普通の事を言ったはずだ、うん、俺は変なことをアナには言っていない!
「それじゃあな」
叶多はこの場を去ろうとした瞬間、アナは叶多の袖を掴みこう言った。
「待って・・・待ってよ!」
アナは必死の思いで叶多に問いかけた。
「ん?どうし・・・・」
叶多は振り返りアナの顔を見ると悲しそうな顔で涙を流していた。
「私を置いてかないで…一人にしないで」
「分かった、分かったから泣かないでくれ。てか、何で勇者とパーティーを組まないで何もない貧弱な俺とパーティーを組みたがるんだ?」
俺は疑問に思っていることをアナに聞いた。
「私はこの王都の第一王女で魔王を討伐でき、世界が平和になったら勇者と結婚しなければならないの。」
王都?王女?結婚?情報量が多すぎて理解が追い付かん。
つか、急に口調が変わったなぁ。さっきまで、すげえグイグイ来てたのに。
「アナスタシアって王女だったの!?」
「驚かせてしまってごめんなさい」
「確かに、その事にはかなり驚いているよ。でも、別に魔王を討伐して勇者と結婚できるのなら最高の人生なんじゃないか?」
「全然最高なんかじゃないわよ!最悪よ!まず、叶多くんが思っている勇者ってどんな人なの?」
「うーんそうだなぁ俺の中での勇者は顔が整っていて、何でもできて、強くて、みんなから好かれる言わば平和の象徴かな」
「叶多くん・・・・・この世界にそんな完璧な勇者なんかいないわよ・・・」
「ええええええ・・・またまたアナスタシアさんったら~ご冗談を~」
「私は嘘は言わないわ、これは本当のことよ。顔も気持ち悪いし、太ってるし、全く強くないし、魔王と戦う気もない・・・しかも城から出ようともしないのよ!私の立場になって考えてみてよ、こんな奴と結婚したいと思う?」
ボロクソ言うじゃないか、この王女様は・・・でもこれだけ言われるということは相当酷い勇者なんだろうなぁ・・・
「結婚したいとは思わない・・・な」
「でしょ?だから、使えない勇者の代わりに私が自ら魔王を討伐してやろうと思っているのよ!」
「でも、それって魔王を倒してしまったらポンコツ勇者との結婚が早まって最悪な結末を迎えるんじゃないの?
「あ・・・・・」
と叶多が言うとアナは凍ったかのようにその場に数秒間固まっていた。
そのとき俺はこの王女様は可愛いけど少しアホだなぁと心のなかで思った。
「あ、いや、うんきっと大丈夫よ!その時になったら無理矢理にでも王女を辞めて、叶多くんと結婚するから~」
やば!!変な流れでなぜ変なことを言ってしまったよ私!やばい、やばい!なんか、すごい体が熱くなってきた!
「ん?ごめん、聞いてなかった。何だって?」
あんな声量で言ったのに聞こえてないの~
「な、何でもないわよ。その時になったら叶多くんに相談するわ・・」
アナは照れながら言った。
「そっか。じゃあ、これからよろしくな!アナ!」
「え?これからって・・・もしかして一緒に魔王を倒しに行ってくれるの?」
「それ以外に何があるんだよ。まぁ、ここまで話されたらアナのことを一人にはできないからな!」
「叶多くん・・・・ありがとう」
アナスタシアは嬉しさのあまり涙と鼻水を垂らして叶多に飛び付いた。
「ちょっと、離れろよ・・アナ・・鼻水が服に付いちゃうからあああ!」
そしてモブとアナスタシアの冒険が幕を開けるのだった。
一方、レヴェルト城では-
「勇者様、今日も魔王討伐には行かれないのですか??」
「ああん?行くわけねえだろ、そんな危険な場所に!そこまで言うならお前がいけばいいだろうがよ!」
「す、すいませんでした」
「てか、お前!俺のアナスタシアちゃんは今どこにいるんだよ!!」
「アナスタシア様は先程、街にお出掛けに行きました」
「だったら、早く連れ戻してこい!こちとら、色々と溜まって機嫌が悪いんだよ」
「ですが・・・・」
「捕まえたら、いい女紹介してやるよ」
「本当ですか!今から王女様を連れ戻してきます!」
「頼んだぞ」
その頃叶多たちは冒険者ギルドでパーティー登録の手続きを行っていた。
-カラーンカラーン-
「へぇ~ここが冒険者ギルドかぁ~」
「さぁ、叶多くん!パーティー登録をするわよ!」
「お、おう」
アナスタシアと叶多はパーティー登録ができる窓口に向かっていった。
すげぇ、自然な感じで王女様と冒険者ギルドに入ってるけど本当にこれ大丈夫なのか?
急に兵士に取り押さえられたりしないよなぁ………はぁ、不安だ
「いらっしゃいませ!ってえええ!アナスタシア様!」
と窓口にいる受付のおじさんがかなり驚いていた。
無理もないよ、だって急に王都のトップが前に現れるのだから。
「こんにちわ・・・彼とパーティーを組みたいのだけれど」
「あ、どうも」
アナは口調が変わると一気に上品になって王女様っぽくなるよなぁ。あ、別に普段が下品な口調と言っている訳じゃないよ、、もちろん。
「は、はい!アナスタシア様、こんなことを聞くのは差し出がましいかもしれませんがその方は例の勇者様でございますか?」
「全然大丈夫ですわよ。この方は私の友人でございます」
「そうだったのですね、勇者様とお間違えして申し訳ございませんでした。」
「気になさらないでください」
「パーティー登録でしたね。少々お待ちください」
叶多とアナスタシアは受付の指示通り書類に記入し、パーティー登録を済ませた。
「これで、私たちも冒険者の一員になれたわね!」
「そうだな」
「よし、次はあなたの武器を買いに行くわよ!」
「おお!武器キタァァ!あ、でも俺お金なんて持ってないよ?」」
とアナに言うと目を輝かせ、叶多にグッドポーズをしながら「いいからいいから、私に任せなさい!」
「んじゃ、お言葉に甘えて!」
というわけで俺たちは武具屋に来たわけだが・・・
武具屋にはかっこいい剣や盾がズラーっと並んでいた。しかもかなり高そうなものばかりだ・・・
「さぁ、叶多くん!お好きな武器を選びなさい!もちろん、お金の心配はいらないわよ!」
「んなこと急に言われてもパッと選べるかぁ!」
ありすぎて、悩むこともできないぞ・・・とりあえず、店主に聞いてみるか・・・・
「あの、すいません!おすすめの剣を教えてください!」
「アナスタシア様ぁぁぁ!!なんでここにおられるのですか!?」
はぁ・・・めんどくっさ・・・
今、この王女様めんどくさいって声に出してはっきりと言ったよね。それ絶対店主に聞こえてるよ!
俺は心のなかでヒヤヒヤしながら聞いていた。
まぁ、アナと店主の会話が終わるまで武器でも見てるか・・・
アナは冒険者ギルドの受付と同じ反応と質問をされたのでめんどくさそうな雰囲気を出しながら同じように対応していた。
「私は、彼の武器を選びにここに来ました・・・お邪魔だったでしょうか?」
「とんでもありません。むしろ毎日でも来てほしいくらいですよ。まぁ、それは冗談ですけどね・・ちなみに一緒に来られたあの方は誰ですか?」
「あの方は・・私の将来の旦那様ですわ!!」
また、口が滑った・・・何言っちゃってるんだ私!こんなこと叶多くんに聞かれたら・・・
「なるほど・・・そうゆうことでしたか。どうかお幸せに・・・」
「ありがとうございます・・」
あれ?別に食いついてこない?めんどくさくない人で助かった~
「いえいえ、じゃあ今剣を持ってきますね!」
話がやっと終わったか・・・
店主は話が終わると叶多に近づき、いきなり右手でグッドポーズをしキメ顔で「グッドラック!」
と言い出した。
「急に何ですか・・・・」
店主はニヤニヤしながら武器がある棚に向かっていく
今のグッドラックはなんだ!!何!いきなり幸運を祈るって!さっきのアナとの会話で何を話しやがった!
「おい、アナ!あの店主と何を話していた!急に俺に向かってグッドラック!って言ってきやがったぞ!」
武器を見ていた叶多は店主と話していた内容を知るためにアナを問いつめている。
叶多の呼びかけにアナはビックリした表情でこう言った。
「どどどどどうしたのかしらぁ~別に私たちはごく普通に会話をしていたのよ~ほら、今日は天気がいいですね~とかさ~」
「アナ、今日の天気は曇りでいい天気ではないぞ・・・」
「・・・」
しまった!私ったら適当な事を言ってしまったわ!もう、こうなったら正直に言うしかないわね・
「まぁ、別にいっか・・・人に聞かれたくない話とかもあるよな・・・うんうん。だから言わなくてもいいよ。」
助かった~今度からは気をつけて話さなくちゃ!それにしても叶多くんはどこまでも優しいな~
「お待たせしました。アナスタシア様!言われてしました剣をお持ちしました」
店主が持ってきたのは金色に輝く、黄金の長剣を持ってきた。
「どうだ?かっこいいだろお?」
「おおおおおおおお!!めちゃくちゃかっこいいじゃないかよ!」
「その言葉もっと頂戴頂戴!」
「おっちゃんの剣は世界一!」
「もっともっと!」
「いや、もう褒めるところがないからやめとくわ。早くその剣を売ってください」
「ええ……………」
店主はショックで地べたに座り、ぶつぶつと喋っていた。
-俺が半年かけて作ったのに・・・そんな言い方はないよ・・・-
「少なすぎない!叶多くん!もうちょっとあるでしょ!ていうか、店主があまりのショックで魂が抜けそうになってるけど!」
何この店主~すごいめんどくさいんだけど。はぁ・・
「おっちゃん、これだけは言っておきますけど俺が見てきた中でこの剣は一番できのいい剣だと思いますよ」
「本当か?」
「本当です」
正直な感想では今俺が行ったことは事実だゲームや漫画の世界でも見たことがない。
「よし!これはお前にやろう!もちろんやるのだからお金はいらないぜ」
気持ちの切り替え早すぎだろ!!
「いいんですか?じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
よし、この強そうな剣があれば魔王なんて楽勝だな!今日からお前は俺の相棒だ・・・
「本当にお金を払わなくていいのですか?」
「いいですいいです。お金のことは気にしないでください。こんな美しいアナスタシア様にお金を払わせるわけにはいきませんからね!」
「ありがとうございます」
叶多は剣を受け取ろうと持ち手の部分に手を添えた。
するとなぜか叶多は一瞬にして剣から手を放した。
「アナ、ちょっといいか」
「どうしたの?」
「剣が重くて持ち上がらないんだけど!!」
叶多ははこれまでにないくらいのひどい顔をしている、まるで絵画のムンクの叫びだ。
「嘘でしょ・・・」
叶多くんのかっこいい顔がめちゃくちゃになっていってるう!どうにかしないと
「ンンッ!!」
俺は全身全霊で剣を持ち上げようとしたがビクとしない。
何で、持ち上がらないんだよおおお。さっきのおっちゃんのグッドラックってまさかそういう意味で言ったのかぁぁ!
「叶多くん、一旦落ち着きましょう」
「落ち着いていられるかぁ!」
「どうした?いらないのか?まさか、お前・・・・重たくて持てないのか・・・」
と煽るように問いかける店主。
「へ?俺が持てない?それはどっちの意味で言ったのか詳しく聞かせていただこうか~剣を持てないのか単純に俺が女の子からモテないのか」
「何変なところに突っかかってるのよ!!いいから、もう一回持って!」
叶多は店主の人に近づこうとしていたがそれを見たアナは叶多の服を引っ張りそう言った。
「すまない、もう一度チャレンジしてみよう」
「ンンンンッ!持てない!」
無理だ重すぎて持ち上がらないん・・・俺には魔王を倒すことなんてできないのかもしれない。
「やっぱり、重たくて持ててないじゃないか!!アッハッハ!」
店主は彼方をバカにし、大笑いしていた。悪魔みたいな奴だ。
「やかましいわい!」
「すまんすまん。まぁ、気にするな武器には得意不得意があるからよ」
「うむ・・・」
「じゃ、重たいのならこんなのはどうだ?」
すると店主が気を使ってとある武器を出してくれた。
「これって・・・刀か?」
「そう!刀だ!これは特別なドラゴンの鱗からできいるから切れ味も良くて扱いやすいんだ」
「へぇ~そんな貴重な刀をもらってもいいのか?」
「ああ、もちろんいいさ!さっきも言ったがアナスタシア様がこの場にいたから無償で提供しているんだぜ?感謝しとくんだな」
その刀は水色にキラキラと輝いていてまるでそれは曇り一つない青空みたいだ。
俺はあまりの美しさに自然と声が出ていた「美しすぎる」と・・・
「本当にありがとう!」
「良かったわね、叶多くん!」
「おう!アナもありがとうな!」
俺は店主からもらった刀を持ち軽くその場で素振りをした。
「いえいえ!さぁ、冒険にいきましょう!」
「だな!」
「それでは、ありがとうございました!」
叶多たちは店から出ようとした瞬間外から声が聞こえてきた
-アナスタシア様!!アナスタシア様!!!どこですか?-
-勇者様が呼んでおられます!いるのでしたら至急お城にお戻りください!-
「なんだなんだ!騒がしいなぁ!」
アナは兵士の声を聞いた瞬間怯えるような感じでその場に立ち尽くしていた。
私の事を探しに来ているわ・・・嫌だ・・・絶対にあんな勇者の所へは行きたくない!
「アナ?大丈夫か?」
「・・・・・」
俺はアナの方をみるとそこには体が震えている彼女がいた。寒くもないのに、震えるはずがない・・多分アナは勇者のもとに帰りたくはないのだろう。
相当酷いことをされたのだろうな。
それに気づいた叶多はそっとアナの手を握りこう言った。
「大丈夫・・・・大丈夫だよ・・アナ・・・・」
「叶多くん・・・・」
「またあいつら、アナスタシア様を探しに来ているのか」
「また?ってどういうことだ?」
「ん?あのクソ勇者とアナスタシア様が将来的に結婚する運命にあるのは知ってるよな?」
「知ってるけど」
「それをいいことにアナスタシア様を見つけては兵士に連れ戻させめちゃくちゃな要求などをしているんだ。そして自分の思い通りにならなかったら殴ったりするんだぜ?」
「・・・・」
「酷すぎて、言葉も出ないだろ?」
俺は店主が言うように酷すぎて言葉をうしなっていた。
アナから話は聞いていたけど予想以上にクソみたいな勇者だな・・・それでアナは怯えてしまっているのか・・・
「それはどうにかならないのか?」
「う~ん、アナスタシア様をあのクソ勇者から開放してあげるのは無理な話だろうな」
「なぜ無理なんだ?」
「開放するには勇者を倒すしかないからだよ・・・・」
「いや、無理じゃない・・・俺がそのクソ勇者を倒しに行く」
「おいおいおい、お前さん頭でも狂っちまったのか?仮にでも相手は最強武器、防具を持っているあの勇者だぞ?一般人が叶う相手じゃない。もし奇跡が起きて倒したとしてもお前が牢獄行きになるだけだ・・・」
「そんな・・・・」
何なんだよこの救いようのない世界わ・・・こんなの魔王を倒すとかいう問題じゃねえ・・・クソ、俺が勇者だったら・・・
叶多は自分の無力さに絶望し、その場に立ち尽くしていた。
するとそれを見たアナは口を開きこう言った・・・
「叶多くん、私は大丈夫だからその刀を持ってここから逃げて・・・」
「逃げてってアナはどうするんだよ・・・」
「私はお城に戻るわ・・・短い時間だったけどすごく・・・すごく・・・楽しかったわ!」
アナは悔しい思いと悲しい思いがぶつかり涙を流しながら叶多にそう言った。
「アナ・・・」
「じゃあね・・叶多くん」
「アナ!アナ!!」
「おい、よせ!小僧!」
「離せよ!おっちゃん!」
「おい!暴れるな・・・」
叶多の体は反射的にアナを追いかけようとしていたが店主に止められていた。
-私はここです-
-アナスタシア様!無事で何よりです。さぁ、勇者様がお呼びですので城に帰りましょう-
-はい-
私は大丈夫だよ、叶多くん・・・あなたと出会えて本当に良かったわ・・さよならとアナは心のなかで言いこの場去っていった。
これでいいわけがないだろう・・あんなに悲しい表情を浮かべている女の子を見捨てるわけにはいかない・・このままバッドエンドで終わらせてたまるかよ・・・俺は強くもないし特別な力を持っているわけではない・・・が女の子を一人くらいは救える!