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 家に帰ると、すぐにレジャーシートの汚れを落とす。

 それから、夕飯と風呂の支度である。

 どうせ両親は夜遅いのだ。

 祖父母がいなくなって、さらに兄と姉が進学のために家を出てからは、基本、ずっと一人で夕食を摂ることになっている。

 最初は寂しいと感じたこともあったけれど、今や慣れてしまったので悠々自適にご飯食べている。

 さて、風呂は洗ってスイッチ一つで簡単に入れることができる。

 問題は夕食だが、これも勝手に作れるように材料が備蓄されているので問題ない。

 今日は野菜炒めだ。

 いや、久しぶりにカップ麺も捨て難い。

 

 「あの人(スケさん)、カップ麺とか見ても驚きそうだよなぁ」


 そんなことを考えながら、お湯を沸かす。

 野菜炒めはやめて、今日はカップ麺だ。

 お湯を入れて数分で食べられる。

 そして、家族共有のタブレットを近くに置いて動画サイトを再生して、その数分を潰す。

 テレビは似たようなバラエティ番組ばかりで、つまらない。

 最近はずっと動画サイトを利用している。

 携帯端末ではなく、タブレットなのはただ単に画面がデカいからが理由である。


 「明日は何して遊ぼっかなぁ」


 

***



 翌日。

 一旦、家を出て近くの茂みに隠れる。

 それから数分と経たずに、両親が出勤していく姿を見送った。

 二人ともそれぞれの車での出勤である。

 車のエンジン音が遠ざかり、完全に聞こえなくなってから自分は家に戻った。

 そして、


 「……ゴホッゴホッ、あ、先生、ごほっ。

 すみません、昨日の夜から熱と咳が止まらないので、はい、はい、すみません、はい、そうです、休みでお願いします」 


 学校の担任へ電話をかけた。

 鼻もつまんで、風邪ですアピールにリアリティを持たせる。

 咳も中々上手いな、と我ながら思った。

 携帯ではなく、家電からかけた。

 先生から気遣わしげな言葉をもらい、申し訳なさそうに謝って受話器を置いた。

 これで今日一日は遊べる。

 給食は、今日は諦めた。

 代わりに、ストックしてあるカップ麺をカバンに二つ突っ込んだ。

 自分の分とスケさんの分である。

 昨日と同じようにレジャーシートも忘れない。

 水筒も二つ。

 片方には麦茶。

 もう片方には、ただの水道水が入っている。

 これでも、初級の魔法くらいなら扱えるのでカップ麺用のお湯はその時水筒に入れた水道水で沸かせばいい。

 沸かすための小さな片手鍋も突っ込んでおく。

 あとは、ゲーム機とスケさんが驚きそうなポータブルDVDプレーヤーも突っ込んだ。

 ポータブルプレーヤーは、姉のお下がりである。

 何を見せようか悩んで、無難に映画のディスクを一本手に取る。

 スケさんの時代には確実に無かったものだ。

 あとは、お菓子も用意して家を出た。


 そして、片道二十分のなんちゃって登山コースを歩いていた時だ。

 ズズん、と地震のような揺れに襲われる。

 震度三くらいだろうか。

 余震に全く気づかなかった。

 数年前に、震度七の地震が隣の国を襲った時は、その国の港町が津波で壊滅状態になった。

 その余波は自分の住むこの国にもやってきた。

 それ以来、隣国であるこの国も地震対策の一環として、揺れが観測されるの災害通知のメールが届くようになったのだが、そんなメールは一分、二分と待つが全く届かなかった。


 「変だな」


 携帯端末をポケットにしまって、自分は歩を進めた。

 

 先祖代々の墓の前で、レジャーシートをバサバサと広げていると、どこからともなくスケさんが現れた。


 「ほんとに来た」


 骸骨の声帯なんてとっくの昔に朽ちているだろ喉から、呆れた声が漏れる。


 「来るって言ったじゃないですか。

 あ、そういえば、さっきの地震気づきました?」


 「じしん?」


 「地面、揺れませんでした?」


 「あ、あー、アレか、ごめん、そんなに揺れた?」


 スケさんが、バツが悪そうに訊いてくる。

 なんでこの人が謝ってるんだろう?


 「震度三くらいありましたけど。でも、通知メール来てないし」


 「土滅入る?」


 あー、そっか。

 自分は簡単にメールについて、スケさんに説明した。


 「はー、便利なものがあるんだねぇ。

 魔法要らずだ」


 「魔法だって現存してますよ。無くなってません。

 自分は初級のしか使えませんけどね。

 ま、年齢制限さえなくなれば、アプリで課金して好きな魔法使えるようになるし」


 言いながら、ふとスケさんが持っている剣を見た。

 鞘から抜いてある。

 両刃の剣だ。


 「剣、使ってたんですか?」


 自分の質問に、スケさんがポリポリと頭を掻きながら返してくる。


 「あ、はい、暇だったんで素振りを。

 そもそもこれ、私のなのかな?

 気づいたら持ってて」


 いや、知らんがな。

 自分は、その剣をじぃっと見た。

 なんだろう?

 どこかで見た事あるような?

 うーん、思い出せない。

 でも、今日日こんな所持するのに資格がいりそうな剣、こんな近くで、しかも博物館以外で見るなんて中々出来ない。

 自分の視線をどうとったのか、スケさんが、


 「素振り、してみます?」


 そう言ってきた。


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