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「冒険者が調査に来た?」
今日は色違いの、それは古い携帯型ゲーム機をコードで繋いで対戦をしている。
いまや、コードレスが主流だ。
こんなのでゲームをするなど自分達くらいだろう。
「そうらしいです。
なんか夜な夜な歩き回るアンデッドが出たとかで。
近所の人が依頼を出したらしいです」
「はぁ、アンデッドかぁ。
それはまた物騒な。
でも、夜と言えば私もよく散歩してるけど、そんなアンデッドになんて会ったことないけどなぁ」
スケさんの言葉に、ピコピコ、カチャカチャとゲームを操作していた手が止まってしまった。
多分、スケさんのことだと思うんだけどなぁ。
「…………」
「どうかした?」
「それ本気で言ってます?」
思わず聞き返した自分は悪くないはずだ。
「?」
スケルトンが首を傾げて、はてなマークを浮かべる。
あ、これ、ガチでわかってない。
「自分の目の前に、夜散歩をしている、スケルトンのアンデッドがいたりするんですけど」
そこで、スケさんの手が止まった。
スケさんは自分自身を指さして。
「え、わ、私?!」
「100ぱー、そうでしょうね」
「え、討伐されちゃう?
退治されちゃう?!」
「たぶん、冒険者の目的はそれでしょうね」
対戦が一区切りついたので、お互い電源を切る。
もはや慣れたもので、最近ではスーパーで安く売っている紙コップとお茶を入れた特大サイズの水筒(家探ししてたら出てきた)を持参している。
水筒からお茶を紙コップに入れて、スケさんに差し出す。
ついでに、ポテチをパーティー開けして置いておく。
それをお互いツマミながら、話を続ける。
「隠れてた方がいいと思いますよ」
「それを言うなら、貴方の存在もいろいろ誤解を招くおそれがあるから、そろそろ毎日学校に行ったらどう?」
「えー、だって楽しくないんですもん」
「でも、勉強は大切だよ」
「それって、大切なのは国語数学理科社会とかの科目の勉強で、人間関係の構築訓練はどうでもいいって聞こえるんですけど」
「あー、たしかに社会に出た時の人間関係の訓練になるのか。学校生活って」
「……つっても、別にイジメられてるわけじゃないし。
必要最低限の出席日数と、生活態度、あと成績にさえ気をつけてれば何もいわれないですから。
現に体調を気遣われるくらいで、何も言われてないですし。
あ、そうだコレ見てくださいよ」
自分は思い出して、学校に戻れ、毎日通えと言ってくるスケさんに、持ってきた証拠を見せた。
「おや、これは」
それは数枚の紙だった。
つい先日行われた期末テスト。
その答案用紙である。
全教科百点と記された答案用紙である。
「凄いですね」
ダメ押しで、自分は返す。
「ちなみに、学年一位です」
「わお」
数字で能力値を計る、一般的な方法で、自分はとりあえず学年で一番成績が良いことを証明している。
つまり、どれだけ授業内容を覚えているか? ということに対して、休んでいてもきちんと聞いてますよ、勉強していますよ、出来ていますよ、と数字で証明したのだ。
そして、生活態度は普通。
教師に対して反抗的ではない。
従順な一生徒であることも忘れていない。
「なんで、頭いいのに墓場でゲームしてんの?」
少しドヤっていたら、スケさんからそんな疑問を投げられる。
答えは簡単だ。
「なんでって、ゲームして遊ぶの楽しいじゃないですか」
「いや、だからなんで、そもそも墓場を選んだの?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
「聞いてない聞いてない。
静かで人が来ないから、ここで遊んでるって言ったんじゃないか」
「あー、ここを選んだ理由ですか。
人に教えてもらったんですよ」
「人って、友達?」
「いいえ、ネットの掲示板で」
そして、改めて自分は掲示板のことをスケさんに説明した。
「あの、今更だけどさ」
「はい?」
「それ、悪い人にも引っかかりやすくない?」
「身バレさえしないよう気をつけてれば、そんなに怖くないですよ。
それに、学校に行ってたらスケルトンと交流を深めて人間関係を構築してゲームして遊ぶ、なんて出来なかったでしょうし。
学校じゃ経験出来ないことを出来てる時点で、学校が勉強する場所として万能じゃないことの証明になってますよね?
つまり、無理矢理学校に行かなくても、勉強はできるってことですよ」
「あー言えばこー言うって、こういうことなんだろうなぁ」
もしくは、口が減らない、減らず口を叩く、とも言う。
自分で言うのはなんか違うので、思っても口にはしなかったが。