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 「そういえば、この時代には冒険者っていないの?」


 豚のしっぽをやりながら、スケさんがそう聞いてきた。


 「うーん、まぁ、居るには居ますよ」


 「居るんだ。なら、冒険者ギルドも健在なのかな?」


 「ありますねぇ」


 視線はトランプへやりながら、お互いに真剣そのものでゲームを続ける。

 ドーナツ型に伏せて並べたトランプを1枚ずつ、交互に引きながら中央でひっくり返す。

 ひっくり返す度に、なんとも言えない緊張感が漂う。


 それを繰り返しながら、自分は冒険者ギルドとそこに登録している冒険者達について説明した。

 これ、名称こそ古き良きものだが、言ってしまえば人材派遣会社と派遣社員である。

 何でも屋の元締め、という言い方も出来るだろう。

 ちなみにその前身は正真正銘、本来の意味での冒険者ギルドだったりする。

 人によっては、民間のハローワークとも言われているらしい。

 日々、大なり小なりの仕事が持ち込まれ、ギルドに登録している人達がそれぞれの仕事を選んで働いている、それだけだ。

 仕事の内容によっては数日かかる物もあるとか。

 稼ぎはどうなのかと言うと、これまた仕事によりピンキリである。

 つまり、安定していない。

 一日で半年遊べる金を稼ぐ人もいれば、最低賃金のアルバイト並みしか稼げない人もいる。

 時には、害獣討伐等も請け負うため危険が絶えない職種である。

 しかし、未だに人気が高いのはやはり一攫千金を狙える可能性がわずかでもあるからだろう。

 都市部では、これでひと財産築いてまるで城のような屋敷を建てた人もいるくらいだ。

 安定した収入よりも、不安定な収入でも、仕事のスリルを味わいたいという変態が多い職種でもある。

 そのため、一部の安定志向の人達からは生暖かい目を向けられることも多いらしい。


 「まぁ、わかるなぁ。

 危険で稼ぎが少ない仕事よりも、安定した収入がある方が安心だし」


 「ただ単純に就職が難しくて、冒険者ギルドに登録して働いている人もいるので一概に言えないんですけどねぇ」


 「就職が、難しい?」


 「何年も前ですけど、不景気でリストラが流行ったり、企業側が新卒の人の雇用を控えることが多発したんです。

 そういった人達が派遣会社(冒険者ギルド)に登録して働くようになり、糊口を凌ぐために危険度の高い仕事を請け負って、そして」

 

 自分はトランプを引いて、中央へ持っていく。

 そして、ひっくり返した。

 目的の数字ではなかった。


 「そして?」


 「一時期、大量の死者が出たらしいです。

 不景気で、働きたくても働けない、そんな人達の最後の受け皿だった場所は、言い方はアレですけど弱者を切り捨てるための姥捨山代わりになったらしいです。

 本当かどうかはわからないですけど、思い詰めた人なんて、家族にお金を残そうと保険金目当ての自殺目的でギルドに登録した人もいるらしいです」


 まぁ、これはニュースの受け売りだけど。


 「それは、なんともまぁ」


 さすがにスケさんも言葉を失ったようだ。


 「皮肉なことに、いい大学に進学して、出世街道まっしぐらだった、いわゆるエリートさん達も姥捨山行きになったらしいです」


 「解雇されて?」


 「解雇されて」


 人生はなにが起きるか本当にわからない、という典型例だろう。

 勝ち組人生だった人の自殺率が高かった、なんて話もゴロゴロしている。


 「解雇されるまでの挫折の経験値の差が、命の明暗を分けたってことかな?」


 スケさんが確信をついた。


 「たぶん、そうなんじゃないか、とは聞きました」


 よくある話らしい。

 学生時代までをそれなりに楽しく過ごして、社会に出て、それまでの人生でそれなりに味わってきただろう苦い経験。

 社会に出て、そんな経験など鼻で笑うかのような事態に直面して、乗り越えられずに心が折れて命を絶った人も、不景気には多かったらしい。

 

 「イジメでもよくある話だそうですよ。

 小中と加害者側だった子が、高校入学と同時に自分がしてきたことをされて、引きこもりになったり、不登校になったり、自殺したり、自主退学したりするらしいです。

 掲示板でも見ましたし、姉ちゃんと兄ちゃんのクラスメイトの実話だったりします」


 あの二人は幸いにも加害者にも被害者にもならなかった。

 残酷な現実をばらしてしまうと、被害者の味方にもならなかったらしいけれど。


 「人生、なにが起こるか本当わからないですよねー」


 スケさんがカードを引いて、ひっくり返す。

 また目的の数字は出てこない。


 「現代怖い」


 そう呟いた骸骨が、自分の目の前でガクブルしていた。


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