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そして、約一時間半の映画鑑賞を終えた時。
スケさんは、骨になっている手を叩いていた。
話にも感動し、ポータブルプレーヤーの技術にも感心しっぱなしだった。
ちょうどよく、学校からチャイムが聞こえてくる。
もうお昼か。
早いなぁ。
「いやぁ、凄いですねぇ。
とても魅入ってしまいました」
「でしょう?」
そして、今度は昼の準備である。
墓から少し離れた、土が見えている場所まで移動する。
スケさんが、なんだろ? なんだろ? と興味津々に成り行きを見守っている。
自分は地面に簡易的な魔法陣を落ちていた小枝で描いて、そこへ持ってきた鍋を置く。
それから鍋に、水筒から水を入れて、魔法陣の縁をトン、と指先でつついた。
炎は見えないが、やがて鍋に入れた水がお湯へと変わる。
ふつふつと気泡が出てきて、やがて沸いた。
それを予め蓋を開けて用意していたカップ麺へと注ぐ。
「ここから三分待ちます」
「三分ですか」
「スケさんは麺料理って、食べたことありますか?」
「え、うーん、パスタならあった、かも?」
「ラーメンは?」
「ないですね、聞き覚えがないです」
「めちゃくちゃ乱暴に言うなら、スープパスタの亜種です」
言って、スケさんの生きた時代ってスープパスタってあったのかな?
と、ちょっと考えてしまった。
牛乳はあったと思うから、多分あったと思う。
「へぇ、お湯を注ぐだけで作れると、ほぉほぉ。
興味深いなぁ」
あったな、これは。
「あ、でもパスタみたいに麺は固くないです。
どっちかって言うと、くったりしてるんで、そこはパスタとは違いますねぇ」
「ちなみに、これはどれくらい保つんですか?」
「うーん、メーカーにもよりますけど、1年くらいですかね」
「凄いですね! ということは軍隊で使われてた兵糧の一種なんですね」
カップ麺の歴史は生憎知らないので、わからない。
あ、でもそっか、それだけ長い間食べ物が保つってのは、戦争とかで遠征に行かなければならない時に、たしかに重宝しそうだ。
いや、待てよ?
たしか、缶詰めがそうじゃなかっただろうか?
今度は缶詰めも持ってきてみよう。
そうこうしているうちに、あっという間に三分が経過してしまった。
スケさんにも実食してもらう。
とりあえず、事前に穴を掘っておいてその上で食べて貰った。
やはり、ボトボトとカップ麺が落下していった。
「お、おおお!
こ、これは美味しい!!」
「早くて簡単、そして、美味い。
まさにチートですよねぇ」
さて、この日はこんな感じで過ぎていき、終わったのだが。
その翌日のことだ。
登校してきた自分に、クラスメイトの一人がこちらの体調を気遣いつつも、あることを訊ねてきた。
「墓に、幽霊?」
「そう、知り合いの知り合いの婆さんが、山の上の畑に行く途中で、墓地の駐車場でちょっと休憩したんだってさ。
そしたら、墓地の奥の方から子供の笑い声が聞こえてきて、真昼間に変だなぁって思って、様子を見に行ったら、居たんだって、子供の幽霊……!」
「……へぇ」
「墓の前でうずくまって、死ねだの、殺してやるだの、そんな恨みごとを呟いてたんだってさ」
「そうなんだ」
たぶん、携帯型ゲームでセーブするの忘れたままボス戦にでも挑んでたんじゃないかなぁ、その幽霊。
などとは、まぁ言えないわけで。
「そう!
で、その墓地ってのが君の家の近く、というかこの近所なんだけど」
「…………」
「って、怖くないの?」
どうやら自分の反応が薄すぎたようだ。
「いや、そうじゃなくて見間違いじゃないの?
普通に子供が学校サボって遊んでただけじゃ?」
というか、これ、百ぱー自分のことだと思う。
「わざわざ墓を選んで遊ぶ子なんていないよ!」
「そうかなぁ」
「それに、この話にはまだ続きがあってね。
その、幽霊をみた婆さんは驚いて最初尻もちをついちゃって、でもすぐに、今の君みたいに近所の悪ガキが墓でイタズラしてたって考えたんだ。
で、叱ってやろうともう一度その墓を見たら……」
「見たら?」
「消えてたんだってさ。それで今度こそ怖くなって婆さんは家に逃げ帰ったんだって」
たぶん、その幽霊消えたとかじゃなくて、ゲームに一区切りついて安心したら催して、トイレにでも行ったんじゃないかなぁ。
まぁ、言えないけど。
うん、今度からもう少し静かに遊ぼう。




