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9品目

「……報告されている場所はこの辺なんですけど、とりあえず、森の中に入るのは明日にするとして今日はここで野営をしましょう」

「ぶ、不気味ですね」

「馬車だとこれ以上は進めないな……」


 馬車に乗り込み、王都から2日進むと目的の魔物の出現情報がある森の入口に到着する。この隊の指揮権を持つロイックはこの場所を今日の野営場所と決めたようで騎士達に指示を出して行く。

 1日目は街道沿いの宿場町で宿を取ったため、騎士達は初めての野営場所に戸惑いながらも騎士達は指示に沿って動き出すのだがセフィーリアは手を止めて森の中を覗き込んだ。彼女の目には森は深く奥は薄暗く見えたようで不安そうな表情をするのだがメビウスは馬車から自分の荷物を下ろすと森の中に持っている道具を選び始める。

 騎士達は2日間でそれなりにメビウスと友好を結んだようだ。それでも彼の行動に戸惑っているのか声をかける事が出来ずにおり、騎士達は隊長であるロイックに彼が何をするつもりか聞くように目で合図を送った。


「メビウスさん、どうするつもりなのですか?」

「お前らは残っていろよ。俺が奥に行ってくるから、馬車で連れてきてくれて助かったよ。移動日数が少ないのは楽だからな」


 騎士達の視線に耐え切れなくなったロイックはメビウスに声をかける。

 ただ、メビウスは最初から騎士達を当てになどしてしないせいか1人で森の奥に進んで行く気のようだ。

 ここまで運んでくれた事にお礼を言うとメビウスは選別した荷物を背負う。荷物はメビウスが最初に準備してきた物の半分以下になっており


「な、何を言っているんですか!? 1人なんて危険です」

「俺としてはお前ら足手まといを連れて行く方が危険だ。悪いけど、戻ってくるまで荷物は預かっていてくれ」

「待ってください。荷物を預かってくれと言いますが、それでは軽装過ぎませんか……どうして、そんな表情をするんですか?」


 セフィーリアは慌てて彼を引き止めようとするが彼は言いたい事だけ伝えて森の奥に進もうとする。

 騎士達はどうして良いのか判断できないようで隊長であるロイックに視線を向けた。

 ロイックは自分にかかる負担に1度、ため息を吐くが最初にメビウスが準備してきた荷物が半分以下になっている事もあり、心配だと声をかける。

 心配しているロイックにメビウスはわざとらしく深いため息を吐いて見せるのだが同行している騎士達は誰1人としてため息の意味を理解できない。


「……役立たずだな」

「そ、そんな事はないですよ」

「役立たずだろ。この中でどんな魔物が出るか調べられた人間はいるのか?」


 騎士達の様子にメビウスは毒づくとセフィーリアはそんな事はないと否定するのだがメビウスは呆れ顔で討伐対象の魔物に付いて聞く。

 その質問に誰も答えられる者はなく、メビウスは嫌になると言いたげに肩を落とした。


「メビウスさんはどんな魔物が出てくるかわかっているんですか? ど、どうしてですか?」

「……昨日、宿場町に泊まったんだ。そこでいくらでも情報は聞けただろ。やる気が起きないのはわかるけど他人を巻き込んでいるんだ。少なからず、最善を尽くすくらいの事は考えろよ。これ、預けておくから、何かあったら使えよ。使い方くらいわかるだろ」


 メビウスはここまで中でしっかりと討伐対象の魔物の情報を得ていたようで彼の目からは騎士達が自分達の任務を遂行したいとは思えなかったようである。

 ここで自分達が魔物討伐を成功しても彼らの評価につながらない事も知っているため、それがやる気に繋がっていないように彼には思えたようだ。

 元々、騎士達の事を足手まといだと思っている彼は下ろした荷物から薬瓶数本取り出してロイックに向かい放り投げると森の奥に入って行こうとする。


「ま、待ってください。いくら何でも1人はダメです。危険です」

「……イヤ、何度も言うけど足手まといはいない方が良いから」

「言って良いのかわかりませんが、和みますね……メビウスさん、あなたの言い分もわかりました。ただ、少し待ってください。私もこの隊を預かる身として方針を決めなければいけませんから」

「わかったよ」


 そんな彼の腕にセフィーリアは抱き付き、全力でメビウスを1人で奥に行くのを止めようとするのだが彼女は非力であるため、メビウスを止める事はできずに引きずられて行く。

 2人の様子にロイックは苦笑いを浮かべるとこの隊の指揮官としてやらなければいけない事があるとメビウスを引き止める。

 メビウスはセフィーリアを引きはがすのに彼の話に乗った方が良いと思ったようで足を止めた。セフィーリアは彼が止まった事に一先ず、安心したようで胸をなで下ろすとロイックへと視線を向ける。


「まずは私達が情報を得る努力をしなかった事を謝ります」

「別にそんな事はどうでも良い。俺は受けた依頼を達成するのと食材のために動くだけだからな」

「そうですね。ですから、私達も私達の仕事をします。私達も出来損ないとは言え、騎士ですから」


 謝罪の言葉にメビウスは興味なさそうに答えると自分は自分の仕事をするだけだとため息を吐いた。

 ロイックは真剣な表情をして騎士としてやるべき事をしないといけないと言い、その表情から彼の決意を感じ取ったメビウスは頭をかく。


「……わかったよ。それで何を決めるんだ?」

「そうですね。まずは隊を2つに分けます。メビウスさん足手まといになるかも知れませんが魔物討伐が達成された事を証明しないといけませんので」


 メビウスの問いかけにロイックは少し考えるとメビウスとともに魔物討伐をするメンバーと魔物が街道から出てきた時に対処するロイックを中心としたメンバーの2組に分かれる事を指示する。

 その提案に騎士達は真剣な表情をして頷いて見せた後、彼らの視線はメビウスに集まった。

 集まる視線とロイックの言葉で騎士達の雰囲気が変わったとメビウスは思ったようで小さくため息を吐くとロイックの指示に従うと手を上げると討伐対象と予測される魔物に付いて説明と対処方法を説明して行く。


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