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61品目

「メービーウースー、おーさーけー」

「ターニアさん、あ、あの」

「フィーちゃん、お酒、ちょうだい」


 メビウスから反応がない事にターニアはまたいつも通りの無視だと思っているようで駄々をこねている。

 ただ、今回は考え事をしているため、耳に入っていないのが原因である。セフィーリアは彼女からも詳しい話を聞きたいようで申し訳なさそうに声をかけるとターニアはメビウスからお酒を貰えないと判断したようでセフィーリアに標的を決めた。


「あの、お酒の事は一先ず、置いておいて」

「えー」


 常時、酔っているターニアにこれ以上、酔われては話を聞けないため、セフィーリアは誤魔化そうとする。

 いつもは何だかんだ言いながらも自分の味方をしてくれるセフィ―リアが酒を出してくれない事に何かあったと思いながらもターニアは不満そうに頬を膨らませた。


「姐さん、年齢を!?」

「女性に年齢の事を言うなんて、出入り禁止にして欲しいの?」

「な、何でもありません」


 見た目が若いとは言え、ターニアはそれなりに年齢を重ねている。

 その件について口を滑らせた常連客の1人に向かい、彼女から殺気にも似た何かが向けられた。

 彼女から発せられる物に常連客達は慌てて首を横に振るとターニアは満足そうな笑みを浮かべた後にセフィーリアへと視線を向ける。


「フィーちゃん、何か用? と言うかメビウスはどうしたの? おめでた?」

「ち、違います!? どうして、そんなお話になるんですか!?」

「え、父親として考える事がたくさんあって、仕事も手につかなくなっているんじゃないかって」


 お酒を出してくれない事への意趣返しなのかターニアは彼女をからかい始め、結局、セフィーリアはターニアのペースに引きずり込まれて行く。

 その様子に常連客達は生温かい笑みを浮かべるもののターニアからの攻撃は遠慮したいようでセフィーリアを助けようとはしない。


「違います。おかしな事を言っていないでお話を聞いてください」

「えー、お姉さん、お話聞くのにお酒必要なのにお酒出てこないから聞きたくない」

「……わかりました」


 このままではいけないと話を聞いて貰おうとするセフィーリアだがターニアを制御するにはやはり酒が必要だと悟ったようでふらつきながらお酒を取りに行く。

 彼女の様子にターニアは満足そうな笑みを浮かべた後、相変わらず、心ここにあらずなメビウスを見てため息を吐いた。


「フィーちゃんもわかってきたわね」

「……嬉しくないです」

「それで、メビウスは昨日のことを引きずっている感じ?」


 セフィーリアは酒の在庫を確認してターニアが好む物を運んでくると彼女は嬉しそうに酒を受け取ってすぐに飲み始める。

 完全に手のひらで踊らされているセフィーリアの顔には若干の疲れが見えるがターニアが気にするような事はない。

 その様子にセフィーリアは肩を落としているが目的の酒を手に入れたターニアはメビウスを指差すと彼女の聞きたかったことを言い当てる。


「は、はい。あの、やっぱり、メビウスさんは宿屋業も再開したいんだと思うんです」

「そうでしょうね。でも、それをするといろいろと面倒なのよね……有力貴族や有力商家をいくつかぶちのめさないといけないから。ふふふ、全面戦争ね。楽しくなりそう」

「え、笑顔でそんな物騒な事を言わないでください!? み、みなさんも悪ノリは止めてください!?」


 メビウスの覇気がない原因を相談しようと思っていたセフィーリアに向かってターニアは笑顔で恐ろしい事を言う。

 その様子にセフィーリアは声をあげるが、常連客達は声をあげてターニアの言葉に賛同し始めて店内は異様な盛り上がりを見せ始める。


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