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6品目

「……」

「メビウスさん、すいません」

「食材1つで落ち込まない。それにフィーちゃんが謝らなくても良いのよ。元々、売りに出す気なんてなかったんだから」


 セフィーリアが厨房で料理を作っていたせいか、1日分に出す食材を夕食には早い時間に使い切ってしまった。

 元々、貴重な食材を使っている店のため、メビウスが食材集めで留守にする事も多く営業日や営業時間はバラバラである。

 そのため、客達も食材を使い切った事を伝えると店の外まで並んでいた客達は文句を言いながらも帰って行った。

 客達が帰って行っても店の片づけがあるため、メビウスはモップを手に忙しそうに床掃除をしているのだが、時折、手を止めて大きくため息を吐く。

 メビウスのため息の原因は先ほど自分達が食べてしまった煉獄鳥だと言う事は簡単に予想が付き、セフィーリアは申し訳なさそうにしているのだが原因を作ったターニアは気にする必要はないと酒をあおっている。


「……汚い店だな」

「あ? 悪いな。今日はもう終わりだ」


 その時、準備中の札がかかっているにも関わらず、ドアを開けて騎士鎧を身にまとった男性が5人入ってくる。

 中にはロイックも混じっており、彼は申し訳なさそうな表情をしているが先頭を切って店に入ってきた騎士は店内の様子を見るなり、自分達がわざわざ足を運ぶ必要がないと悪態を吐いた。それはロイック以外の騎士達も同様であり、店の中を見渡してぼろいだ、汚いだと店をバカにして笑っている。

 そんな騎士達の態度にメビウスは当然面白いわけがなく、不機嫌そうな表情をして追い払うように手を払う。


「……セフィーリア、こんな場所で何をしている?」

「そ、それは……」

「まぁ良い……メビウスとか言ったか?」


 高圧的な騎士達と話す気は無いとメビウスは言っているのだが彼を無視して騎士はカウンター席に座っているセフィーリアに声をかける。

 名前を呼ばれたセフィーリアは身体を強張らせると何かを言おうとするのだが言葉が続いてこない。

 彼女の態度に騎士は苛立っているのか舌打ちをした後、高圧的な態度でメビウスの名を呼ぶ。


「ロイックって言ったよな。これ、ぶちのめしても良いのか?」

「……我慢してくれると助かります」

「そうか。助かるだけならどうでも良いな」


 ただ、メビウスはすでに相手にするのもイヤなようで話が通じそうなロイックに騎士達を追い出して良いかと聞く。

 彼の発言にロイックは首を振るのだが、確認する前にすでにメビウスは行動を決めていたようで手にしていたモップを構えるとその柄で先頭に立っていた騎士の顔を殴り飛ばす。

 殴り飛ばされた騎士は勢いよく壁にぶつかり、床に落ちるのだがその目は白目になっており、完全に気を失っている。


「な、何をする!?」

「モップが折れちまったじゃねえか。弁償して貰うぞ」


 目の前で仲間がブッ飛ばされた事に騎士達は驚きの声を上げた。

 しかし、メビウスは折れたモップを見た後に自分でモップを折っておきながら原因を騎士達のせいだと言い切るとロイックを除く他の3人の騎士達の顔面を拳で叩きつけ、彼らを1発で倒してしまう。


「……メビウスさん、何をしているんですか?」

「うちは食堂なんだよ。ゴミは掃除しないといけないだろ。どうする? くだらない事だったら、お前もゴミと判断するがどうする?」

「判断しないでくれると助かります。えーと、今朝の件なのですが決まった事を伝えに来たんですが……とりあえず、縄で縛るのを止めてくれませんか?」

「そ、そうです。そんな事をしたら、後で何をされるかわかりませんよ」


 ロイックは呆れているのか大きく肩を落とすのだがメビウスは騎士達をゴミと言い切った。

 騎士達が非礼な事をした事もメビウスの気性もロイックは理解しているようで苦笑いを浮かべると気絶させた騎士達を縄で縛っているメビウスを止める。

 セフィーリアは顔を青くしながら、ロイックの言葉に同意するのだがメビウスはターニアと顔を見合わせた後、ターニアは騎士達の額に『雑魚』と書くとメビウスは縛り付けた騎士達を店の外に投げ捨ててしまう。


「メ、メビウスさん!? ターニアさんも何をしているんですか!?」

「別に何をされても困らねえよ」

「大丈夫、大丈夫。それに竜の焔亭(うち)にケンカを売ったらどうなるかは年配の騎士達は知っているはずだから」


 2人の行動に顔を青くするセフィーリアだがメビウスもターニアもまったく気にした様子はない。

 それどころかターニアに至っては以前にこんな状況になれている様子であり、危機感などはみじんも感じられない。


「で、ですけど、メビウスさんが強いのは知っていますけど、ターニアさんが狙われたらどうするんですか!?」

「……俺より強いぞ。うちの食材を食っている年季が違うからな」

「メビウスさん、冗談を言わないでください。騎士の身分を特権階級だと勘違いしている騎士達も多いんです。自分達のプライドを傷つけられたら何をしてくるかわかりませんよ」


 危機感のない2人の様子に騎士達が何をしてくるかわからないと声を上げるのだがメビウスは眉間にしわを寄せて自分よりもターニアの方が強いと告げた。

 その言葉は悪質な冗談にしか聞こえないようでロイックは頭を悩ませ始める。セフィーリアも彼の言葉に賛成のようで大きく頷いているがメビウスにとっては折れたモップの方が重要なようで折れたモップを見てため息を吐いている。


「……掃除、どうするかな?」

「今日は店じまい早かったんだから、雑貨屋さん、開いているし、買ってきたら」

「そうするか。騎士団で領収書切って貰ってきて良いよな?」

「メビウスさんもターニアさんももっと真剣に聞いてください!! 本当に言ってしまうんですか? ……隊長、どうしましょう?」


 危機感のない2人の様子にセフィーリアは声を荒げるがメビウスは面倒だと頭をかきながら店を出て行ってしまう。

 彼女は閉まったドアを見て顔を引きつらせるがターニアは気にした様子もなく、酒をあおっている。

その様子にセフィーリアとロイックは顔を見合わせて顔を引きつらせてしまうが状況は変わる事はない。


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