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58品目

「メビウスさん」

「……何しているんだ? 掃除しているのに汚すな」


 男性はただで泊めてもらうわけにはいかないと言い、常連の冒険者に案内されて他の店に移って行った。

 メビウスは男性に申し訳ない事をしたと考えているようでどこか覇気がなく、閉店後の後片付けでも反応は鈍い。

 その様子にセフィーリアは少し戸惑っているようではあるが、店長であるメビウスの調子が悪い分、自分が頑張らないといけないと思ったようで気合を入れるのだがその気合は空回りし多様でイスにつまずいて転んでしまう。

 店内に大きく響いた音にメビウスは大きなため息を吐くと彼女へと手を伸ばす。


「あ、ありがとうございます」

「良いから、さっさと片付けろよ」


 セフィーリアは頬を赤らめて彼の手を握るとメビウスはその手を引いた。

 彼女を立ち上がらせると素気なく仕事を再開するように言うのだが彼の動きはセフィーリアにはやはりいつもとは違って見える。


「あ、あの。メビウスさん」

「何だよ? ……さっさと片付けしろよ。話はその後だ」

「は、はい」


 彼の不調が昼間の男性とのやり取りが関係している事は明白である。

 セフィーリアは過去に何があったのか知りたいようで声をかけるのだが振り返ったメビウスの様子に言葉が続かない。

 メビウスは彼女が何を言いたいのか察したようでため息を吐くと一応、従業員であるセフィーリアには話しておいた方が良いと判断したようで掃除をするように促す。

 彼が自分の事を放してくれることは珍しいため、セフィーリアは嬉しそうに大きく頷くと張り切って掃除を再開する。

 その様子に何が嬉しいんだよと言いたいのかメビウスはもう1度、大きなため息を吐いた。


「何から話すかな? ったく、こう言うのは俺の仕事じゃないのに」


 後片付けを終えた2人はカウンターを挟んで座る。

 少し話が長くなると思ったのかメビウスは2人分のお茶を用意した後、首を傾げてしまう。

 彼自身、どこから話して良いものかわからないようでこの場にいないターニアに文句を言いたいのか眉間にしわを寄せた。

 そんな彼の姿にセフィーリアは少しだけ困ったように笑うが彼が話し始めるのを待つしかないため、口にお茶を運ぶ。


「まずは食堂と宿屋の協会の件か?」

「は、はあ」

「元々、この店は宿屋兼食堂だったんだ」


 メビウスが考えた結果、出てきたのはセフィーリアが聞きたい事とは誤差があり、彼女は微妙な反応をする。

 しかし、メビウスは彼女の様子に気が付く事無く話し出す。


 元々、竜の焔亭は宿屋業も営んでいた。それはセフィーリアも聞いていたためか小さく頷いて見せる。

 メビウスの父親が亡くなった事でメビウスだけでは手が足りなくなった事が1番であるようだが彼や常連客達の様子から原因が従業員不足だけではない事は想像が付く。


「お前は協会がどんなところか知っているか?」

「はい。すべてのお店はそれぞれの協会に申請をして開店許可をもらって初めて営業ができるんですよね?」

「ああ、ただうちの親父は協会に属していなかったんだ」


 話をする上でセフィーリアの知識がどこまであるか確認するように聞く。

 彼女の頭の出来は悪くないため、一般的な知識を持っているようで問題のない答えが返ってくる。

 メビウスは小さく頷いた後、困ったように頭をかきながら問題発言をするのだ。

 その発言は先ほどまでの話の内容から完全に外れており、セフィーリアの眉間には小さなしわが寄ってしまう。


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