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49品目

「どう言う事だ? 何か起きるのか?」

「わ、わかりません。で、ですけど、こんな話、私も聞いた事なんてありません!?」


 魔法について知識のないメビウスは状況を整理しようと彼女に声をかける。

 だが、セフィーリアも魔物の死体から魔力が奪われている事以外はわからないようで首を横に振るだけである。

 彼女の様子からただ事ではないと言う事は理解できたようではあるがメビウスにとっては魔物の死体から魔力が奪われている事より、重要なのは月光草に向かってくる魔物達から身を守る事である。


「わからないなら後にしろ。死にたいならそのまま考え込んでいろ。魔物は待ってくれないからな」

「は、はい」


 投げつけていた矢が底を尽きたのかメビウスは彼女の前に立ち、鉈を抜くと向かってきた魔物の爪を弾き返す。

 セフィーリアは月光草の事は気になる物の自分の身を守る方が大切だと思い直したようで大きく頷いて見せた。

 先ほどまで腰が引けていた彼女の足元はしっかりとしており、彼女の様子にメビウスは小さく口元を緩ませる。


「どれだけ魔法が使える?」

「わ、わかりません。でも、なぜか今ならいくらでも魔法が使える気がします」


 すでにメビウスは彼女の魔法を頼りにしているようで襲い掛かってくる魔物の攻撃を鉈で弾き返しながら聞く。

 セフィーリアは目を閉じると自分の中の魔力量を確認するのだがなぜか自分でも残っている魔力がわからないようである。

 ただ、それは魔力が残りわずかだと言う物ではなく、何度でも魔法が使えると言う物である。


「それなら、いくらでも魔法を使ってくれ。時間くらいは稼いでやる」

「は、はい。お願いします」


 魔物達の動きは素早く、セフィーリアでは対応できそうにはない。

 そのため、メビウスは襲い掛かる魔物の攻撃を鉈で弾き返し、攻撃は彼女に任せると言う。

 彼の言葉にセフィーリアは頷くと魔法の詠唱に移る。

 彼女の足元には魔法陣が浮かび上がると同時に2人の周囲には無数の氷の矢が現れ始めるのだがその数は先ほど煉獄鳥に向けて放たれたものよりも巨大な物である。


「……おい。どう言う事だ?」

「わ、わかりません。あ、あれ? こんな魔法使ってないのですけど」


 空中に浮かんでいる氷の矢の大きさにメビウスは眉間に深いしわを寄せた。

 その様子からこれだけの魔法を使えるのなら、なぜ、煉獄鳥相手に使わなかったのかと言う非難の意味が込められている。

 しかし、セフィーリア自身もこのような強力な魔法を使った覚えはなかったようで大きく首を横に振った。

 彼女が首を振ると同時に巨大な氷の矢は魔物達に向かって放たれて行く。


「……魔物の死体から魔力を奪っているのはお前じゃないだろうな?」

「そ、そんな事はしていません!?」


 放たれた氷の矢の何本かは魔物に向かわずになぜか上空に向かって行く。

 魔物達は自分に向けられた氷の矢を交わし、牙や爪で砕く事で身を守っているのだが砕かれた氷の矢は魔物の身体にまとわりつき、その巨大な身体の動きを鈍らせて行く。

 魔物の動きが徐々に鈍くなって行くと同時に2人へと向けられる魔物達の攻撃の数は減って行く。

 余裕が出てきたせいか、メビウスは先ほど魔物の死体から魔力が奪われていると言う現象に彼女が原因ではと疑いの視線を向けた。

 突然の言葉にセフィーリアは全力で否定した時、空から氷の粒が舞い降りてくる。


 舞い降りてきた氷の粒は魔物達に絡みつき魔物達は身体に付着する氷を振り払おうとするのだがその行動がさらに氷が絡みつく速度を上げて行く。


「……冷凍か? これ、そのまま持って帰ったら、融けたら街で暴れるかな?」

「ど、どうでしょう? メビウスさん、危なくないですか?」


 セフィーリアの氷の魔法は襲い掛かってきた魔物の動きを止めてしまい、メビウスは凍り付いた魔物を覗き込みながら持って帰る魔物の選別を始めだす。

 自分の魔法に何が起きているかわからないセフィーリアは魔物を倒していないのではと疑っているようで心配そうな表情をしている。

 メビウスは気にする事なく、魔物を覗き込んでいるのか何か思いついたのか不意に足を止めて、彼女の方へと振り返った。


「ど、どうかしましたか?」

「この状態の魔物からも魔力は奪われているのか?」


 セフィーリアはいきなりメビウスが振り返ったのを見て、びくっと身体を震わせるのだが彼は気にする事はなく、魔物達の魔力の行方について聞く。

 その言葉でセフィーリアは慌てて周囲を見回すのだがその表情は険しくなって行く。その様子にメビウスはまだ魔力を奪っている元を倒しては居ないと察したようで面倒くさそうに頭をかいた。


「ま、まだ。魔力が奪われています。原因をさ、探してみます」

「そうか。それなら、他に魔物がいないか見ているか……って言っても気配も何も感じないんだよな。あいつ、騎士止めて魔法で生計立てて行った方が絶対に良いだろ」


 セフィーリアは周囲を見回しながら何が魔物の死体から魔力を奪っているのか探そうとする。

 メビウスは彼女の様子を眺めながら、まだ魔物がいる可能性を考えて周囲を警戒するように視線を向けた。

 しかし、周囲にはまったく魔物の気配が無くなってしまっているようでどうしようかと首筋を指でかく。


「とりあえず、月光草でも採取するか? そろそろ、花が咲くだろうし……あれ? ぜんぜん、花が開きそうにないな」

「あ、あの。メビウスさん、あれが魔力を集めているみたいです」


 原因を探している間に採取を終えてしまおうと決めたメビウスは1番早く咲きそうだと思っていた月光草へと視線を向けるのだが月光草はまだ花を開く前であり、見当違いだったかと彼は他の月光草の様子を見ようとする。

 その時、セフィーリアは何かに気が付いたようで何かを指差す。

 彼女の表情には驚きの色がある物の恐怖のような感情は混じっておらず、メビウスは彼女の示す原因へと視線を向ける。

 そこには花が開きかけた月光草のつぼみがあり、つぼみは黄色く光り初めている。


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