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44品目

「何で疲れているんだよ?」

「つ、疲れますよ。メビウスさんが思っている以上に辛いんですよ」


 荷物が増えたものの足手まといが無くなったためか、日が暮れる前に月光草の生息地に到着する。

 セフィーリアは背負子から落ちないようにするだけでも大仕事だったようでその顔からは疲れがにじみ出ている。

 メビウスは背負子から彼女を下ろすとセフィーリアの様子に疲れているのは自分だと言いたげなため息を吐いて見せた。

 彼の言葉にセフィーリアは言いたい事はたくさんあるようではあるがあまり強くは言えない。


「一先ず、休んでおけよ。月が輝く時間が近づいてくれば休んでいる時間なんて無くなるからな」

「そ、そうですね。月光草が咲く時に動けないのは困りますからね」


 荷物を背負っていたためか身体が痛いのかメビウスは身体を大きく伸ばした後、荷物を漁り始める。

 セフィーリアは彼が何をしているかはわからないようだが、これから魔物の襲撃がある事は確定しているためか緊張で身体を震わせてしまう。

 ただ、それでも逃げるわけには行かないためか、気合を入れようと自分の両頬を手で叩いた。


「あ、あの。メビウスさん、何をしているんですか?」

「見てわからないか、罠作りだよ。月光草の魔力に魅かれて多くの魔物がくるって言うのに何も準備をしないなんて命知らずの事はできない」


 荷物漁りを終えたメビウスは周囲を見渡すと何かを始め出す。

 その様子にセフィーリアは首を傾げるのだが、メビウスは月光草を採取するためにも魔物との余計な戦闘は避けたいと言う。


「て、手伝います」

「必要ない。と言うか、罠作りを手伝って貰ったのに魔物が来ても罠が使えなかったら困る」


 休んではいられないと思ったようでセフィーリアは自分も手伝うと手を上げた。

 しかし、基本的に彼女を不器用だと思っているため、失敗されては困ると言って彼女の提案を拒否する。

 セフィーリアは断られるとは思っていなかったようで一瞬、呆気に取られたような表情を見せた。


「ど、どうしてですか!? 時間がないんじゃないですか!? 私も手伝いますよ」

「時間がないから、邪魔をしないでくれ。それより……お前、月光草がどれかわかるのか?」


 日が暮れるまでには時間がなくセフィーリアは遊んでいるヒマはないと考えたようで驚きの声を上げる。

 メビウスはバカな事を言うなとため息を吐いて見せた後、どれが月光草かわかるかと聞く。

 その言葉に彼女はあからさまに視線をそらしてしまい、セフィーリアの様子から月光草がどれかわかっていない事は容易に想像が付く。


「……お前、兄貴の命令とは言え、良くそれでついてくると言ったな」

「す、すいません。満月の夜に花が咲くと言っていたので満月になればわかると思っていました」


 メビウスは眉間に深いしわを寄せるのとセフィーリアは謝る事しかできないようで深々と頭を下げる。

 彼女の様子に怒りを抑えつけるためなかの自分の頭を乱暴にかくと罠作りの手を止めてセフィーリアの方に向かって歩き出す。

 セフィーリアは彼の態度から確実に怒られると思ったようで恐怖から目をそらそうとしたのか目を閉じてしまう。


「……目を閉じてないで、せめて覚えようとしろよ。時間がないんだぞ」

「は、はい? これが月光草ですか? 結構、たくさんあるんですね。これならどうにかなりそうですね」


 メビウスは彼女に月光草がどれか教えようとしたようでセフィーリアの様子に舌打ちをする。

 舌打ちの音にセフィーリアは慌てて目を開くとメビウスは足元に生えている植物を指差した。

 彼が指差した植物には小さなつぼみが付いており、もう少しで花が開きそうになっている。

 セフィーリアは周囲を見回すと似たようなつぼみが付いた植物はかなり多く生えており、これならば簡単に採取できると思ったのか胸をなで下ろす。


「お前、本当にそう思っているのか?」

「何かあるんですか?」


 安心しきっている彼女の様子にメビウスは簡単な物じゃないと言いたいようで大袈裟にため息を吐いて見せた。

 これだけ月光草が生えているのならば、どうにか採取できると思い込んでいるようでセフィーリアは不思議そうに首を傾げる。


「お前、聞いていたか? 月光草は煉獄鳥より、採取するのが難しいんじゃないかって言っていたよな?」

「それは確かに聞きましたけど、これだけあるんですから、魔物が襲ってくるとしてもメビウスさんの手にかかれば」


 女店主が言っていた事を思いだせとメビウスは言うのだが、彼女はどこかでどうにかなると思ってようである。

 ただ、その言葉にはどこかメビウス任せのところもあり、他人任せの彼女の言葉にメビウスは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。


「良いか。確かに魔物はある程度、相手をしてやる。罠を使って月光草を採取する時間も稼ぐ。だけどな。俺1人じゃ、手は回らない。月光草の採取はお前がやるんだ」

「それはわかっています……あの、そんなに危険なんでしょうか?」


 納得は出来ていなくても依頼を受けたからには遂行するために全力を尽くすつもりだと言うメビウスはセフィーリアにも同じように考えろと言う。

 セフィーリアはわかっているつもりだと言うのだがメビウスからの視線は冷たいため、自信なさげに聞き返す。


「当たり前だ。魔物は月光草の魔力に魅かれて集まってくるんだ。月の魔力を受けた月光草が花を咲かせている時間は限られている。魔物はそれを狙ってくるんだぞ。わかっているのか? 月光草を採取出来たら、狙われるのはお前だ」

「そ、そうですね。ど、どうしたら良いんですか? どんな魔物がくるんですか?」


 メビウスはもう少し緊張感を持てと言うとそこでセフィーリアは自分が魔物に狙われると言う事を自覚したようで顔を真っ青にする。

 彼女が状況をやっと理解した事にメビウスは呆れたと言いたげに大きく肩を落として見せた。

 セフィーリアはどんな魔物がくるかわからないため、慌て始めるのだがメビウスは少し冷静になるまで放っておこうと考えたのか罠作りを再開する。


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