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41品目

「……」

「メビウスはどうして頭を抱えているんだい?」


 昼食の時間帯が過ぎ、遅い昼食を終えたメビウスはテーブル席に座って何かを考え込んでいる。

 その様子を見た女店主はセフィーリアに何をしているのかと聞くがメビウスが考えている事など彼女にわかるわけもない。

 セフィーリアはゆっくりと首を横に振ると食器洗浄を手伝おうとするのだが女店主は手で彼女を制止する。


「あ、あの」

「これ以上は良いよ。それより、行ってきたらどうだい? この後の事も考えているんだろうし」


 女店主はここから先は自分だけの仕事だと言うとメビウスと一緒に頭を抱えて来いと言う。

 その言葉にセフィーリアは少し戸惑ったような表情を見せるだが、女店主は笑顔で彼女の背中を押す。

 彼女の笑顔には逆らう事は許さないと言う意味が込められており、セフィーリアは戸惑いながらもメビウスの前の席に座る。


「あ、あの、メビウスさん、何をしているんですか?」

「……」


 セフィーリアは気合いを入れるように小さく頷いた後、メビウスに声をかけるが彼はテーブルの上に置かれているものから視線を動かす事はない。

 いつもなら返事くらいはあるため、反応が無い事にセフィーリアの心は折れそうになるが何とか思いとどまるとメビウスが見ている物へと視線を向けた。


「地図ですか?」

「あ?」


 メビウスが眺めていた物はこの周辺の地図であり、セフィーリアは不思議そうに首を傾げる。

 そこでメビウスはセフィーリアに気づいたようで顔を上げると目の前には彼女の顔があり、目が合った2人は慌てて距離を取った。

 2人の様子に酒をあおっていた年配の冒険者達はニヤニヤと笑っているのだが2人がそれに気づく様子などはない。


「居たのか?」

「は、はい。メビウスさんは何をしているんですか? 出発しなくて良いんですか?」


 慌てた事を隠すようにメビウスは眉間にしわを寄せた。

 それに対してセフィーリアは顔を赤くしながら視線をそらしながら、ゆっくりとしていても良いのかと聞く。

 その質問にメビウスは小さく声を漏らすがどうやらすぐに出発は出来ないようで地図へと視線を戻すと地図の上を指差した。


「……ちょっと不味い事になった」

「不味い事ですか?」


 想定外の事が起きているようでメビウスは眉間に深いしわを寄せている。

 ただ、セフィーリアは彼が何に頭を抱えているかわからないためか聞き返す事しかできない。


「料理を運んでいた時に聞いたんだけどな」

「あの間にお話を聞いていたんですか!? ……すいません。続けてください」


 手伝いで料理を運んでいた間に冒険者達からメビウスは情報を集めていたようであり、収集した情報を精査して問題が発生したようである。

 セフィーリアは不機嫌そうな表情をして料理を運んでいたはずなのにしっかりと情報を集めていた事に驚きの声を上げるが、話を折るなとメビウスに睨まれて身体を縮ませてしまう。


「捕まえられるかは別として、俺が良く狩りに行く場所はだいたいの地形や捕れる魔物や野草は頭に入っているんだけどな」

「そうなんですか? わかるものなんですか?」


 地図の1カ所を叩きながら、メビウスは説明に移る。

 彼の言葉を冒険者達は聞いていたようで聞き耳を立て始めたのかホール内の話し声が止まった。

 セフィーリアは冒険者達の変化に気が付かないようで不思議そうに首を傾げるとメビウスは小さく頷いて返す。


「あまり料理に使わないから月光草が生えている場所も知っていたんだけどな……今回のヒュプノパイソン大量発生でその場所が毒まみれになった」

「毒まみれ? ……大事じゃないですか!? と言うか、なんでそんな場所で戦うんですか!? 月光草って貴重なんですよね!?」


 どうやら、昼食前にヒュプノパイソンと戦闘を繰り広げた冒険者がいたようでその戦闘で月光草をダメにしたと言うのだ。

 その話を聞いたセフィーリアは一瞬、何が起きたかわからないようで首を傾げるのだが、状況の整理が出来ると顔からは血の気は引いて行く。

 顔が真っ青に変化した後、かなり慌てているようでまくし立てるように言うと彼女の頭にメビウスの手が振り下ろされる。


「……落ち着け」

「は、はい。申し訳ありません」


 初めて見た彼女の様子にメビウスは小さくため息を吐く。

 セフィーリアは頭に走った衝撃に両手で頭をさすりながら頷くのだが涙目になっている。

 彼女の様子にメビウスは手加減はしたけど威力が少し強かったなと思ったようで首筋を指でかくともう1度、地図を指差した。


「あの。ここは?」

「俺が知っている月光草の生息地の1つ。次の満月までで間に合いそうなのはここくらいだ」


 メビウスは他にも候補があったようであり、目指す場所を教えた。

 月光草の生息地がまだあると聞いてセフィーリアはホッと胸をなで下ろすがメビウスは眉間にしわを寄せたままである。

 いつも不機嫌そうではあるが基本的には強気な彼が眉間にしわを寄せたままと言う事で問題は簡単ではないと気づき、セフィーリアは姿勢を正す。


「あ、あの。何かあるんですか?」

「……地図を見直せよ。この場所は山の上だ。馬車ではいけない」


 メビウスに言われてセフィーリアは地図を見直すと彼の言う通りで目的地は村から少し離れた山の山頂近くであり、馬車で近くまでは行けるもの、途中からは歩いて進まなければならない。

 セフィーリアは状況をすぐに理解できないようで首を傾げており、彼女の様子にメビウスは大きく肩を落とした。


「何が問題なんですか?」

「とりあえずは第1にお前の体力、第2に煉獄鳥を探している時間が無くなった事、他にもいろいろと有るけどな。その辺は移動しながらだな。ただ、2人じゃどうしようもないから、冒険者を2、3人雇わないといけないな」


 問題点について想像が付いていないセフィーリアは首を傾げて質問をする。

 メビウスは山の中を歩くと言う事や時間的な問題が出てくるため、当初の目的である煉獄鳥に時間をかけていられないと言うと頭をかきながら冒険者へと依頼を出すためにカウンターに向かう。


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