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37品目

「た、倒せるかはわかりません。で、でも、成績は良かったので上手く使えれば有効な手段になると思います」

「成績は良かったね……そんな気はするけどな」


 話をするたびにメビウスが不機嫌になっているように見えたのかセフィーリアは小さな声で返事をする。

 要領が悪いところはあるが彼女が真面目なところはメビウスも認めているところであり、成績が良かったと言う彼女の言葉を信じて良いと考えたのか頭をかいた。

 メビウスの眉間からしわが取れたため、セフィーリアはホッと胸をなで下ろすのだが質問の意味に想像もつかないようで不思議そうに首を傾げる。


「……成績だけじゃないとは思うけどな」

「どうかしましたか?」


 成績が良かったからと言っても実戦で役に立つとは限らない。

 実際、メビウスは先日の第8騎士隊に同行した時以外にも魔物討伐に派遣された時の彼女を見た事があるのだ。

 その時もメビウスが騎士達を見つけた時にはすでに壊滅状態であり、指示系統を失った彼らは混乱して森の中を散り散りになって逃げていた。

騎士の中に魔法を使える者達もいるとすれば戦い方などいくらでもあるはずであり、何より、騎士になるために学んでいた時に好成績を修めている。

 それなのになぜ、彼女は出来損ないと言われている第8騎士隊に籍を置いているのだろう。魔法が使えるのなら騎士以外の道もあったはずだ。


「……魔法が使えたんだろ。騎士なんかにならないで宮廷魔術師にでもなれば良かったんじゃないのか?」

「騎士になりたかったんです」


 メビウスは頭をよぎった疑問をセフィーリアにぶつけてみる。

 その疑問に彼女は少し遠くを見つめた後、笑顔を作って言うのだがその笑顔には無理があり、メビウスは余計な事を聞いてしまったと思ったようでバツが悪そうに頭をかいた。


「悪い。余計な事を聞いたみたいだな」

「そんな事はないですよ。これは私の問題ですから」


 セフィーリアの様子にメビウスはこれ以上の追及はしない方が良いと考えて謝罪する。

 メビウスが謝罪する姿にセフィーリアは少し驚いたような表情をすると気にする必要はないと首を横に振った。


「とりあえず、場馴れした方が良いって事だな。あいつもそれを見越してか? 確かに月光草に群がってくる魔物の相手をすれば怯えている余裕はないな」

「え? そ、それってどういう事ですか?」


 成績が良かったなら、ラングラドが言っていた通りに魔法でならセフィーリアが使える可能性は考えられる。

 ただ、2度の魔物との戦闘の様子にメビウスはセフィーリアを経験不足と判断したようで小さくため息を漏らす。

 ため息と同時にラングラドがセフィーリアを連れて行けと言った理由が彼女の経験不足を埋めるためなのではないかと言う疑問が浮かぶ。

 その疑問は彼の口から漏れ出てしまい、セフィーリアは驚きの声をあげた。


「お前の兄貴は魔物相手で委縮するなら、委縮する余裕すらなくせば良いと考えているんじゃないのか? そうすれば実力を発揮できるんじゃないか? ってな」

「そ、そんな事をお兄様が考えていると言うんですか?」


 メビウスは面倒だと思いながらも、ラングラドはセフィーリアの成長を期待している可能性がある事を告げる。

 セフィーリアはその言葉で頑張ろうと気合を入れ直したようで両拳を握り締めて大きく頷いた。

 しかし、その様子にメビウスは彼女が魔物に囲まれた時に空回ってしまい、失敗する未来しか想像が付かなかったようで大きく肩を落とす。


「その可能性があるって事だ。ただ、実際、俺はあの男じゃないからな。何を考えているかは知らん」

「そうですね」


 気合を入れて空回りするなとメビウスは忠告する

セフィーリアは自分が慌てるとろくな事がない事は身に染みているためか大きく頷くと深呼吸をして自分を落ち着かせようとする。

 深呼吸をしている彼女の様子にメビウスはセフィーリアが余裕をなくしてまともに魔法を使えるとはやはり思えないようで眉間にしわが寄った。


「とりあえず、魔法が使えるなら、試してみたいな」

「た、試すんですか?」


 いきなり、魔物に囲まれるより、どこかで魔法を使わせたいと考えたようで頭をかく。

 その言葉に気合を入れていたはずのセフィーリアの身体は小さく震えだし、顔も青くなってしまう。


「……おい。お前、本当にそんなんで月光草を採りに行けるのか?」

「そ、そうですよね。大丈夫です。きっと、上手く行きます!? な、何ですか!? 何があったんですか?」


 恐怖で顔色が変わっていく様子に不安しか感じないメビウスだが月光草は1人ではどうにもならないため、彼女の協力は不可欠である。

 このままで大丈夫かと言う確認にセフィーリアは大きく頷いて見せた時、何かの咆哮が聞こえた。

 その咆哮にセフィーリアは慌てて周囲を見回すが何も見つからない。そして、咆哮に驚いたのは彼女だけではなく、馬車を引いていた馬は暴走するように走り出す。

 暴走した馬車から落ちないように彼女はしっかりと馬車を握り、メビウスは馬の暴走を止めようと手綱を強く握る。


「メ、メビウスさん、何があったんですか?」

「……空に魔物がいる。何がいるか知りたかったら、自分で確認しろ。見えるとは限らないけどな」


 暴走する馬車を握り締めながら、セフィーリアは何があったのかと聞く。

 原因が空にあると言うメビウスだが馬の暴走を止める事に忙しいようであり、彼女にかまっているヒマなどはない。

 確認するように言われても今のセフィーリアは馬車から落とされないようにする事で精一杯であり、上空を見る事など出来ない。


「か、確認なんて無理です!? れ、煉獄鳥ですか!? この状態で炎とか吐かれたら交わせませんよね。どうするんですか?」

「慌てすぎだ……まあ、この間よりはマシか。おい、降りるぞ」


 魔物の姿が見えない事や暴走する馬車への恐怖からセフィーリアの口からは泣き言が次から次と溢れ出てくる。

 そんな彼女の姿にメビウスは大きくため息を吐くが、先日、ヒュプノパイソンの咆哮に完全に威圧されていた時よりはマシと考えているようで馬車を止めるなり、弓と矢を取り外に飛び出る。


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