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36品目

「だ、大丈夫なんですかね?」

「慌てたってどうしようもならないんだ。それより、寝てないんだろ。寝ていろよ」


 翌日になり、2人は村を馬車で出発するヒュプノパイソンを狙いに来ていた冒険者達はすでに出発しているため、遅い出発である。

 昨日の話のせいかメビウスの隣でセフィーリアは心配だとため息を漏らしているのだが彼女はあまり眠れなかったようで目の下にはクマが出来ている。

 睡眠不足で必要な時に力が発揮できなくては困るため、メビウスは眠っているように言うのだが目を閉じると不安が襲ってくるようで彼女は泣き出しそうな目で顔を横に振った。


「……むしろ、メビウスさんは何でそんなに落ち着いているんですか? 確かにメビウスさんにしたらヒュプノパイソンは弱いかも知れませんけど、私にとっては強すぎる魔物なんですから」

「強すぎるね。実際、ヒュプノパイソンを倒すだけならそんなに苦労しないだろ。実際、怖いのは毒だけだからな」


 セフィーリアはメビウスが特別なんだと非難するような視線を向ける。

 それは自分が魔物を倒す事など無理だと思い込んでいるように見え、メビウスはそんなに難しく考える必要はないとため息を吐く。


「ど、毒だけって、その毒が危ないんじゃないですか? あんなに森を焼いていたんですよ」

「別に毒を吐かせる前に仕留めれば良いだろ」


 彼女は先日、メビウスがヒュプノパイソンを倒していた様子を思い浮かべたようで顔を青くしている。

 あの時のヒュプノパイソンは自分の毒を振りまいて大地を焼き、また、その毒で自分の身すらも焼いてしまっていた。

 ヒュプノパイソン自身も焼いてしまう毒の強力さは彼女にとって脅威でしかないのだがメビウスの反応は相変わらず、おざなりである。


「メビウスさんだって、そんな事できなかったじゃないですか?」

「できなかったんじゃない。やらなかっただけだ」


 簡単な事を言わないで欲しいと頬を膨らませる彼女だが、メビウスはわざと毒をまき散らしながら戦っていたと言うのだ。

 意味がわからずにセフィーリアは一瞬、呆気に取られるのだがあの場にいた自分は余計な危険に巻き込まれただけだと思ったようで青かった顔が真っ赤に染まって行く。


「どうしてそんな事をするんですか!! やらなかったって事はわざとですよね。そんなに私達騎士隊の事が嫌いなんですか!!」

「騎士は大嫌いだけど、わざわざそんな嫌がらせをするつもりはない。バカにするなよ」


 セフィーリアはあの時の彼の行動が騎士への嫌がらせだと思ったようで声を上げる。

 その言葉にメビウスは不快感を露わにしてセフィーリアを睨み付けた。彼の眼力にセフィーリアは一気に血の気が引いたようで赤かった顔は再び、青くなってしまう。

 青くなったり、赤くなったりする彼女の様子にメビウスは身体に悪いのではと言いたいのか眉間にしわを寄せた後、大きくため息を吐いて見せた。


「あ、あの。嫌がらせじゃないんですか?」

「当たり前だ。俺だってそんなにヒマじゃない。それに不本意だけどな。お前には世話になっているんだ。わざわざ、嫌がらせなんかするかよ」


 睨まれて小さくなった彼女はそれなら何に意味があったか知りたいようで声をかける。

 認めたくはないが彼女が店の手伝いをしてくれているおかげで店が繁盛している部分もあるため、嫌がらせなどしないと言う。

 その言葉は彼女にとっては嬉しい事だったようで表情を一瞬、明るくするのだがメビウスに睨まれて身を縮める。


「食材として取りに行ったんだ。食材として使えるように仕込むのは当たり前だろ。魔物は他の食材よりは腐りにくいけどそれでも処理の仕方で味にも違いが出てくるんだよ」

「そう言えば、前にターニアさんがメビウスさん以外の人が魔物のさばくと美味しくないと言っていましたね」


 メビウスは食材として使用するために必要な工程だった事を伝える。

 その言葉で以前にターニアに言われた事を思いだしたようでセフィーリアが頷くと納得してくれて何よりだと言いたいようでメビウスはため息を吐く。


「それなら、ただ倒すだけならどうするんですか? あの毒液を出させない方法があるんですよね?」

「毒が詰まっている毒袋があるから、そこを傷つけないように仕留める。最初に俺がナイフを刺した場所があるだろ。あそこをおかしく傷つけると毒液がまき散らすから気を付けろ。食材にするなら毒袋と血管を同時に傷つけて体中に毒を回らせる事だな」


 いつかヒュプノパイソンと対峙した時のためにセフィーリアはメビウスから学んでおこうと考えたようで真剣な表情で質問する。

 メビウスはため息を吐きながら簡単な事だと言うのだが、セフィーリアにとってはあの巨大なヒュプノパイソンとの距離を縮める事自体が難しい。

 そのため、話を聞いて自信を失ったのか彼女の表情は暗く沈んで行く。


「だから、対処するんだろ。元々、狩る目的がヒュプノパイソンなら、やりようなんていくらでもあるだろ。毒を軽減する鎧や魔法具を用意するって言うのも必要だし、別に騎士だから剣を使えとか言われなければ、弓でも魔法でも使えば良いんだろ。魔法なんて弓よりも攻撃力が高いだろ」

「そうは言いましても……私はあの状況で冷静に動ける自信がありません」


 メビウスは狩る獲物を決めて動いているようでセフィーリアが魔法を使えると聞いたため、魔法で簡単に倒せるのではないかと言う。

 セフィーリアは先日、ヒュプノパイソンと対峙した時の恐怖を思い出したので身を震わせるのだがメビウスは彼女の言葉に何か引っかかる事があったようで小さく首を傾げた。


「なあ。魔法でなら倒せると思っているのか?」

「え? いきなりどうしたんですか?」


 彼には彼女の言葉は威圧されなければヒュプノパイソンなら魔法で倒す事が出来ると聞こえたようである。

 その質問の意味がわからずにセフィーリアは驚いたようで聞き返す。

 彼女の反応は自分の言葉の意味を理解していないようであり、メビウスは眉間に深いしわを寄せた。


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