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35品目

「で、結局、あんた達は何しに来たんだい?」

「……また、その話かよ。関係ないだろ」


 冒険者達は早朝からヒュプノパイソンを狩りに行く気のようで夕飯を食べるとホールから借りている部屋や野営の準備のため、解散してしまう。

 手伝いを終えた2人がカウンター席に座ると女店主は出来上がったばかりの料理を2人の前に置き、この村に訪れた理由を聞く。

 メビウスはすでに面倒になっているのか料理を頬張りながらも返答を拒否してしまい、彼の様子を見てセフィーリアは苦笑いを浮かべている。


「メビウスさん、お話はしておいた方が良いんじゃないでしょうか? もしかしたら、そろそろ出てくる可能性だってあるんですよね? その場合は避難もしないといけないでしょうし」

「避難って、そんな危ない魔物を狙っているのかい……ないね」


 彼の予想では煉獄鳥はこの辺で出てくる可能性が高い。その事で彼女はこの村にも被害のある可能性があると考えており、説明は必要なのではないかと意見する。

 セフィーリアの言葉でメビウスは食事の手を止めるのだが彼が話し始める前に女店主がそんなに危険な物ではないと言い切ってしまう。

 意味がわからずに呆気に取られるセフィーリアだが女店主は興味を失ったのか洗い場にたまった食器を片づけ始める。


「ど、どうして、そんな反応なんですか!? 危険な魔物なんですよ!?」

「そうなのかい? そんなに危険な魔物を狩りに来たなら、メビウスはフィーちゃんを連れてこないと思うんだけど」


 女店主の態度にセフィーリアは真剣になってくださいと声を上げるのだが、彼女が弱い魔物だと判断した理由はセフィーリアが同行しているためだと言うのだ。

 自分が足を引っ張ると言う事は自覚している彼女ではあるが、口に出されてしまうとやはり心に響く物があるようで大きく肩を落としてしまう。


「……あたし、何か不味い事を言ったかい?」

「どうかな? こいつが同行したのは雇い主のせいと言えば良いのか? いろいろと有ったんだよ。めんどくさい事が」


 落ち込む彼女を見て、女店主は小さく首を傾げる。

 判断は正しいと思っているようでメビウスはため息を漏らすとセフィーリアを指差しながら言う。

 その態度から彼がセフィーリアを同行させたくなかったのは明らかであり、女店主は危険な魔物が近づいてきていると理解したのか眉間にしわを寄せた。


「面倒な事がね……それより、雇い主ってどういう事だい? あんたがそんな依頼を受けるなんて信じられないんだけど、やっぱり、竜の焔亭は潰れそうなのかい?」

「だから、潰れない。いつだって店は満員だ。依頼を受ける事になったのは成り行きだとしか言えないけどな」


 元々、メビウスが誰かから依頼を受けて魔物を狩る事はない。

 そんな彼が依頼を受けたと言う事は今回、ヒュプノパイソンを狩ると躍起になっている冒険者程度では狩る事が出来ない魔物なのだ。

 そう考えると危険度は一気に上がってしまう。女店主はセフィーリアを依頼主からのお目付け役だと考えたようで彼女へと鋭い視線を向けるのだが彼女は未だに落ち込んだままであり、どう考えてもお目付け役には見えない。

 そのせいか、女店主の眉間のしわはさらに深くなってしまうがメビウスは深い意味はないとため息を吐く。


「狙っているのは煉獄鳥だ。そのついでに月光草を採ってきて欲しいと頼まれた」

「……いろいろと言いたい事があるけど月光草がついでと言うところが1番、引っかかるね。危険度で言えば月光草の方が上じゃないの?」


 周辺への危険性を考えればセフィーリアの言う通りにした方が良いと考え直したメビウスは目的の獲物を告げる。

 予想していた魔物より、かなりの大物だった事に女店主はどのような反応をして良いのかわからないようで大きく肩を落とす。

 ただ、メビウス自身には危機感などは何もない。


「おい。いつまでも落ち込んでいるなよ。さっさと飯を食って明日の準備でもしろよ」

「は、はい」


 無駄に落ち込んでいるのは時間の無駄だとため息を吐くメビウスを見て、セフィーリアは慌てて声を上げる。

 食事を始めたセフィーリアを見て、メビウスは食事を再開するが煉獄鳥と月光草と聞いた女店主はこの話をここで止められるわけがない。


「話は終わっちゃいないよ……フィーちゃんの話じゃ、あんたは煉獄鳥がこの辺りに出るって判断しているんだろ? 月光草は魔力が満ちると魔物を引きつけるんだ。煉獄鳥だけでも大変なのに今はヒュプノパイソンまで大量に発生しているんだよ。どうするのさ?」

「ヒュプノパイソンは店に来ていた冒険者が狩るだろ。後、ヒュプノパイソンは煉獄鳥のエサだからな。たくさん、食ってくれるだろ」


 この周辺で起きるであろう大惨事に女店主は眉間に深いしわを寄せて言う。

 メビウスはヒュプノパイソンなど煉獄鳥に食べて貰えば良いと言うのだがその様子はすでに災害としか思えず、想像してしまったのかセフィーリアは顔を真っ青にして食事の手を止めてしまった。


「確かに煉獄鳥はヒュプノパイソンを食べるって聞いた事はあるけど……大丈夫かい? 毒をまき散らされたら大変だよ」

「結局、知識のないヤツが狩っても毒をまき散らすんだ。変わらないだろ。むしろ、被害だけ考えたら、今回、ここにきている冒険者達が殺し損ねた方が毒液をまき散らすぞ。食っているそばから燃やし尽くしてくれれば毒の被害はないだろ」


 女店主は煉獄鳥がヒュプノパイソンを食い散らかした後に起きる。毒の被害を考えたようで何とかしろとメビウスに言う。

 メビウスは大量発生したヒュプノパイソンをすべて狩るよりは煉獄鳥に食べさせた方が被害は少ないと言うのだがセフィーリアと女店主にはそうは思えないようで眉間に深いしわを寄せる。


「……そうは思えないんだけどね」

「で、ですよね。あの、ヒュプノパイソンの毒で汚染された土地って大丈夫なんですか?」


 セフィーリアと女店主の意見は合致しているようだがメビウスは気にする事無く、食事を続ける。


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