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30品目

「……なんで、こんな事になったんだ?」

「も、申し訳ありません」


 ラングラドが出て行ったドアを見て、メビウスは大きく肩を落とす。

 セフィーリアは完全に自分の家族の事にメビウスとターニアが巻き込まれた事を謝るのだがその顔はまだ真っ赤なままである。

 彼女の様子にターニアはニヤニヤと笑うと今日はもう診察時間は終わりと決めたようで後片付けを始める。


「良いじゃない。どうせ、煉獄鳥を狩りに行く場所の近くでしょ」

「そうだとしてもな……足手まといだろ」


 納得が出来ていないメビウスにターニアは良く考えていないのか煉獄鳥のついでに採取してきたら良いと言う。

 経費も出るような事を言っていたため、依頼としてはもちろん好条件であり、本来ならば断る理由もない事は確かである。

 ただ、メビウスはラングラドに良い印象を持っていない事やセフィーリアの実力を高く評価していないため、彼女を指差してため息を吐いた。


「大丈夫じゃない。フィーちゃんだって、騎士学校を卒業しているんだから、それなりに剣も魔法も使えるでしょ。だいたい、メビウスと同程度の実力者を探すのは大変でしょうが?」

「いや、費用を出すって言っているんだから、他に付いてきてくれそうな人間を探したって良いだろ。それなのにこいつを指名したんだ。何かを企んでいるとしか思えないな」


 ターニアはもう少しセフィーリアの実力を買ってあげても良いのではないかと言う。

 本当に月光草を手に入れたいのなら、セフィーリアは止めておいた方が良いと考えているメビウスは眉間にしわを寄せる。

 ラングラドに何か他の目的があると疑っているようであり、セフィーリアに知っている事を話せと促す。


「わ、わかりません」

「本当か?」


 本当にラングラドが何を考えているかわからないようでセフィーリアは大きく首を横に振った。

 セフィーリアとラングラドのやり取りを見ていて、彼女が彼の思考を読み切る事が出来そうにない

 メビウスもそれくらいはわかっているのだがそれでも何か見つける事が出来ないかと彼女を見下ろして追及するように聞く。


「あんまり、いじめないの。フィーちゃんはそんな事に気が付くような子じゃないでしょ。それに嘘を吐けるような子でもないでしょ」

「それについては知っている。ただ、それでも何かあるんじゃないのか? 養子になって、すべてを手に入れるためにこいつが邪魔だからこの機に消してしまおうとかな」


 セフィーリアは完全に威圧されており、ターニアは彼女を擁護するためにメビウスに声をかけた。

 彼女の言葉にメビウスは小さくため息を吐いた後、ラングラドの目的がセフィーリアを消してオーミット家のすべてを手にするためではないかと言う疑惑を抱いたようである。

 仮にラングラドがそのような画策をしていれば自分の身にも危険が及ぶため注意は必要と考えているのだ。


「お、お兄様はそのような事はしません!!」

「……俺、さっき、護衛に斬られそうになったんだけど」


 それなのにあまり関係が良くは見えないセフィーリア本人がラングラドにかけられた疑惑を否定するように声をあげた。

 ただ、先ほど護衛に攻撃を仕掛けられたメビウスとしては信じられる言葉ではない。

 ため息を吐いて見せる彼の様子にセフィーリアはそんな事はないと言いたいようではあるが言葉が見つからないのかオロオロとしている。


「で、ですけど、お兄様はそんな事をするような人じゃないんです。本当です。信じてください」

「メビウス、それくらいにしなさい。私もあの子がそこまで悪い事はしないと思うわよ」


 良い言葉が見つからず、頭を下げる彼女の様子にメビウスの視線は鋭くなり、睨まれたセフィーリアは息を飲んでしまう。

 2人の様子にターニアはため息を吐くとセフィーリアの事を助けるようにラングラドを信じてみてはと言う。

 なぜ、ターニアがそのような判断をしたかわからないためか、メビウスは小さく首を傾げるのだが判断材料が少ないためかしぶしぶ頷いた。


「それじゃあ、何を持って行くか決めないとね……ねえ。経費でお酒仕入れられないかしら?」

「付いてくる気か?」


 メビウスが一先ず、納得したためかターニアは明日からの旅に必要な物を考えようとするのだが、なぜか酒を買うと言い始めるのだ。

 ターニアが付いてくる気だと思ったメビウスは眉間にしわを寄せるのだが彼女は何を言っているのと言いたげに首を傾げてしまう。

 彼女の反応にメビウスの眉間のしわはさらに深くなって行くのだが彼女のペースにはまってしまうのは良くないと思ったようでメビウスは大きく首を横に振った。


「何で付いてくると思ったのよ。私はこの診療所があるのよ」

「……ほとんど、働いているところを見た事がないんだけどな」


 呆れ顔でバカな事を言うなとターニアはため息を吐くのだがこれまでの彼女の行いから信じる事は難しい。

 嫌味を言うメビウスにセフィーリアはおおむね賛成なのかこくこくと頷いた。


「兄さん、メビウスが私をいじめるの。兄さんからもメビウスに私に優しくするように言って」

「それはもう良い。おい、行くぞ」


 2人からの反応に都合が悪いターニアは片付けの手を止めると遠くを眺めながら天国の兄に告げ口をする。

 彼女の様子にメビウスは付き合っていられないと肩を落とすとセフィーリアに声をかけるが彼女は不意をつかれたようで彼が何をするつもりか理解できないようできょとんとしている。


「お前の兄貴が出発は明朝と言っていたんだ。準備をしないと間に合わないだろ。結構な長旅になるのに手ぶらで行くつもりか?」

「そ、そうですね。ターニアさん、それでは失礼します」


 メビウスは眉間にしわを寄せると苛立ちを隠す事無く舌を鳴らす。

 その態度からは今回も足手まといを連れて行かなければいけない事への苛立ちが見えている。

 セフィーリアはこれ以上、彼を怒らせてはいけないと慌てて頷くとメビウスは診察室を出て行ってしまう。


「いってらっしゃい」

「い、行ってきます」


 メビウスが1人で行ってしまった事にセフィーリアは戸惑っているとターニアは彼女の背中をそっと押して手を振った。

 セフィーリアは頭を深く下げると急ぎ足で彼の後を追いかけて行く。


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