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18品目

「煉獄鳥? メビウスはいつまでもこのお姉さんにキレイで居て欲しいのね」

「違う」


 竜の焔亭に戻ったメビウスは開店準備を始める。

 今日は珍しくターニアが朝から起きてきており、メビウスに付いてきたセフィーリアから煉獄鳥の事を聞いて嬉しそうに笑う。

 だが、メビウスは先日、高価な煉獄鳥の肉をただ同然で食い荒らされてしまったためかきっぱりと否定する。


「あ、あの」

「いつまで居るんだよ。さっさと街の見回りに戻れよ。この税金泥棒」

「まあ、良いじゃない。元々、騎士達の見回りなんて格好だけなんだから……あれ?」


 煉獄鳥の事が気になるセフィーリアは詳しい話を聞きたいようでメビウスに声をかけようとする。

 メビウスは煉獄鳥の事をターニアには秘密にしていたかったようでぺらぺらと話をしてしまった彼女を睨み付けた。

 自分を含めた騎士達が彼に迷惑をかけているためか反論が出来ずにいる。

聞き出してしまったためかターニアは彼女を擁護しようとするが元々、騎士達には良い印象がないせいか擁護にはまったくならず、セフィーリアの傷口をえぐるだけである。

 ターニアからの追い打ちにセフィーリアの背後からはどんよりとした重々しい空気が溢れだす。


「メビウス、私、何かおかしな事を言った?」

「いや、おかしな事は言ってない。事実だからな」

「それで何を採ってくる事になったのよ?」


 沈んでしまった彼女の様子にターニアは首を傾げるがメビウスは彼女を擁護するつもりなど毛頭ない。

 これ以上、何かを言ってさらに落ち込ませても困ると判断したターニアはブロムがメビウスに出した条件を聞く。

 メビウスは言う必要などないとは思っているが店を空ける事もあるため、説明だけはしておかないといけないと考えたのかため息を吐いた。


「矢じりか矢羽に炎を和らげる物を探して来いって、2つそろえばなお良しって言っていたな」

「それに心当たりは?」

「……」


 ブロムからの条件を説明するメビウスだがターニアは何か違和感を覚えたようで首を傾げる。

 彼女の疑問にメビウスは視線をそらしてしまい、ターニアは大きく肩を落とした。


「……無いのね。もう少し、食材以外の魔物の使い道を覚えなさい」

「知っているのかよ?」

「知っているわよ。ねえ、メビウス、この間の煉獄鳥の羽根ってもう捨てたの?」

「まだだ。ちゃんと処理しないと火事になるからな……使えるのか?」


 メビウスはカウンター席から身を乗り出して聞く。

 ターニアは先日、調理した煉獄鳥の羽根のありかに付いて質問する。

 メビウスは簡単に捨てられないと答えた後、その意味を理解したようで不思議そうに首を傾げた。


「メビウスは魔物のお肉を食材に使うけど、それ以外にも使い道は多いのよ。冒険者の店やそれこそ、ブロムだって引き取ってくれるわよ」

「……知らなかった」

「これは情報料ね。サメ肌は煉獄鳥の下処理に使うだろうから勘弁してあげる」


 魔物の使い道にメビウスは肩を落としてしまう。

 その様子にターニアはため息を吐くとまだ空いていない酒瓶を手に取り、楽しそうに笑った。

 彼女が手にした酒はかなり高価な物だったようでメビウスの顔は引きつるが何も言う事は出来ない。


「……矢羽に煉獄鳥の羽根が使えるのはわかった。矢じりはどうすれば良い?」

「サラマンダーの牙とか骨とか?」

「……そんな物、見た事もねえよ。むしろ、煉獄鳥よりも狩るのが大変だろ。狩る自信なんてないぞ」

「そうね。兄さんでも苦労するかもね」


 高価な酒を飲むんだから、残りの情報も寄越せと言うメビウスだがターニアは満足げな顔で酒を飲んでおり、返事はおざなりになっている。

 名前の挙がった魔物の名前にメビウスは大きく肩を落とすのだがターニアはメビウスの父親ならできたと言う。

 その言葉にはメビウスも同感のようで小さく頷くがセフィーリアは信じられない言葉だったようで顔を引きつらせている。


「あ、あの。メビウスさんのお父様はサラマンダーを倒す事が出来たんですか?」

「兄さんのサラマンダーのから揚げやサラマンダー肉のマンドレイク焼きは絶品だったわ」

「……マンドレイク焼き? マンドレイクってマンドラゴラとも言われるあれですよね?」

「そう、それよ。引き抜く時やすり下ろすたびに悲鳴を上げるんだけどね。フィーちゃんの言う通り、いろいろと問題のある魔物だからね。下手な人がやると多くの人が死んじゃったり、呪いにかけられたりしちゃうからなかなか食べられなくてね」


 信じられないようでセフィーリアは顔を引きつらせたまま聞く。

 ターニアは以前に食べたメビウスの父親の料理を思い出しながら頷くのだが他にも出てきた食材の名前に顔を真っ青にするのだがメビウスもターニアも気にする事はない。


「確かに美味かったよな。俺もいつか」

「メビウスはまず料理が下手になる呪いを解いてから言いなさい」

「だから、そんなバカみたいな呪いは存在しないって言っているだろ」


 父親の料理の味を思い出しているのか、目標として追いつくと言って拳を握り締めるのだがターニアはそれ以前の問題だとため息を吐いた。

 メビウスは呪いなど信じていないと言うがマンドレイクのような魔物が人々を呪うのは有名な事であり、本当に呪われている可能性もある。

 それに気が付いたセフィーリアは顔を引きつらせるが口に出すとまた怒られそうなため、言葉を飲み込んでしまう。


「まあ、とりあえずは矢じりは無くてもどうにかなりそうだから良いか?」

「そうね。でも、メビウスはどうして煉獄鳥がいるって知ったの? この辺に居ないでしょ」

「この間、ヒュプノパイソンが出ただろ。滅多にこの辺には出ないからな。逃げてきたんじゃないかと思ったんだ。生息地とかあれが逃げてくる相手を考えたら該当がそれだっただけだ。それでこっちに来られても困るから狩って来る」


 メビウスは無理に矢じりを探さなくても良いと考えたようで今度の狩りが上手く行きそうだなと頷いた。

 ターニアは煉獄鳥の生息地は王都より離れたところにあるため、不思議に思ったようで首を捻ると先日のヒュプノパイソンを狩ってきた時に違和感を覚えたと言う。

 煉獄鳥が王都を襲撃するかも知れないと聞き、セフィーリアの顔からは血の気が引くがメビウスが気にする事はない。


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